見出し画像

占いを科学する(第2話・全3回)文化人類学から見た占い

はじめに

では、前回に引き続き、今度は文化的側面から「占い」とは何かを書いていきましょう。
おさらいですが、前回の「心理学的側面」からのアプローチでは、占い結果を受け止める気持ち次第で、当たったりする可能性について述べました。
あくまで気持ち次第、です。
「占いを科学的側面から分析する」という試みなので、その点ご了承ください。

以下のようなアプローチで、占い文化について述べていきましょう。

  1. 占いの定義と分類

  2. 世界各地の占術と呪術的実践

  3. 占いの社会的役割

  4. 現代社会における占いの位置づけ

  5. まとめ

占いと科学の関係の項目には、昨日述べた心理学的アプローチの内容も一部含みますのでご了承ください。

1. 占いの定義と分類

占いとは、一般的に未来や運勢を予測する行為を指します。人類の歴史とともに古くから存在し、世界各地で様々な形態で実践されてきました。

占いは大きく以下のように分類できます。

a. 霊的な存在との交信:

  • 神託(しんたく):神の意思を伝えること。有名な人物では卑弥呼など。

  • 口寄せ(くちよせ):死者や霊との対話を通じて情報を得ること。イタコなどの存在が挙げられます。

b. 自然現象や偶然の出来事の解釈:

  • 星占い(占星術):星の位置や動きから運勢を読み取ること

  • 卜占(ぼくせん):亀の甲羅や動物の骨を使って吉凶を判断すること

  • 鳥占い:鳥の飛び方や鳴き声から吉凶を判断すること

c. 特定の道具を用いた占い:

  • タロット占い:タロットカードを使って運勢を占うこと

  • 易経(えききょう):六爻(りくか)と呼ばれる記号の組み合わせで吉凶を判断すること

  • ルーン占い:古代ゲルマン民族の文字であるルーンを使った占い

d. 人相や身体的特徴による占い:

  • 手相占い:手のひらの線や形状から運勢を読み取ること

  • 人相占い:顔の特徴から性格や運勢を判断すること

  • 骨相学:頭蓋骨の形状から性格や能力を判断すること

e. その他:

  • 夢占い:夢の内容から吉凶を判断すること

  • 数秘術:名前や生年月日を数字に置き換えて運勢を占うこと

これらは占いの一部であり、他にも多くの種類が存在します。占いの方法は文化や地域によって異なりますが、世界各国で、「不確実な未来」に対し、確実(と思われる)な未来像が求められてきたといえるでしょう。それはまた、現代にも続いています。
夢占いやタロットなどは特になじみ深いものだと思われます。

特に神託、口寄せ、星占い、卜占などは太古から存在する占いです。乱暴なものでは、「盟神探湯(くかたち)」といって、その者の主張が正しかったら、煮えたぎった湯の中に手を入れても火傷しないという占いが存在しましたし、魔女裁判における魔女の印に針を刺し、傷がつけば人間というものも存在しました。
中でも魔女裁判に関しては、使用する針が、時には皮膚に押し当てると針が引っ込む仕掛けになっており、都合のいいように特定の相手を魔女と仕立て上げて処刑するという、真実の占いの結果を求める民衆の心に対し不誠実なものでした。
これは為政者が国民に対し行ってきた、権力的な理不尽な占いといえます。

また呪術的実践ですが、基本的には以下のように呪いを目的としたものです。
自分の力(物理)ではない、何らかの未知の力を用いる点では、占いと共通します。

例えば、ブードゥー教では、人形に釘を打ち付けることで、その人形に見立てた人物に害を与えるという呪術が知られています。
これは人形に釘を打ちつけるという物理的な行為が、未知の力により呪いたい相手に伝わると信じられているものです。

似たものに「藁人形」が日本に存在します。藁で人形を作り、場合によってはまじない札を貼り付け、丑三つ時にその人形に呪文を唱えながら釘を打ち付けることで、人形に見立てた人物に呪いをかけるというものです。これは、ブードゥー教の人形呪術と同様のものといえるでしょう。

もちろん、ネガティブなものだけではありません。
たとえば日本には「お百度参り」というものがあります。女性によって行われることがほとんどです。深夜、だれにも見つからないように神社に繰り返し参拝するというもので、参拝した回数がわかりやすいように、由緒ある神社には「お百度石」というものも存在します。これは願いをかなえること、主に家族の病気平癒や戦争からの生還といったポジティブな意味でもちいられることがほとんどの呪術です。

また、ドリームキャッチャーというお守りが日本でも割と知られています。お守り目的というより、一種のエキゾチックな飾り物として飾られることもありますが、これはネイティブアメリカンたちが考え出した一種の呪術で、よい夢は通過させるが悪い夢は捕らえてしまい、持ち主が悪い夢に取りつかれないよう、つまり夢占いで不利な夢を見ないように作られたお守りです。
こちらは夢占いと直結するお守りなので、わかりやすいかもしれません。

2.占いの社会的役割

a: 意思決定の補助

たとえば日本では、風水を用いて新築する家の間取りを決めることがあります。風水占いを用いて「幸せになれそうな自宅」を願う心の表れであり、また家を新築するという行為が自分たちによってとても良いものであるという意思決定の補助をしているいい例です。

実は風水には意外なものも関わっています。有名な話ですが、平安京です。
桓武天皇の時代に作られたと言われる平安京ですが、風水の四神と呼ばれる神が、バランスよく配置された地であったからという説があります。
具体的に言うと、北に「山」、南に「湖や海」、東に「河川」、西に「大道」で囲まれた地ということです。これらに当てはまる地が平安京だったのです。

b: 文化的アイデンティティの維持

平安京の例を出すまでもなく、風水は我々日本人の文化に根差しています。元々は中国からもたらされたものですが、それがいつか日本人のアイデンティティを形成するほどになっています。風水を生活に自然に取り入れることは、古来からの日本文化を継承することといえます。

4.現代社会における占いの位置づけ

テレビ、雑誌など各種メディアで占いが紹介されていますが、それらで誰でも気軽に自分の占い結果を知ることができます。
ユニークなものでは、かつて流行した動物占いやしいたけ占いなどもありますが、そういった占いの結果を共有することで、話題ができ、占いを通して親しくなれる人もできるかもしれません。

コミュニケーションというと、占い師に悩み事を打ち明けて共有してもらう、といったこともあります。悩み事を受け取った占い師は、占いやすくするために問題を掘り下げます。占われる人は、掘り下げていく段階で自分の問題点を知ることができる場合があります。このようなコミュニケーションを通した利点もあるのです。

また、初詣にはほとんどの神社仏閣でおみくじを引くことができますが、その結果の画像をSNSに上げて、フォロワーと共有して楽しむことがあります。たとえ結果が大吉でも大凶でもいいのです。共有することで対話が生まれ、盛り上がることができます。いわば百円から数百円で手軽に手に入る、コミュニケーションのためのエンターテインメントといえます。

5.まとめ

人類と占いは密接に関わってきました。
特に意思決定の部分は大きく、これはもはやひとつの文化といえるでしょう。たとえば新築の家を建てる時の棟上げ式は、今も多く行われています。神職を呼び、笹を立ててお祓いをしてもらうもので、たまたま見かけた方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、良い家を事故なく建てることができるようにという願いをこめたものではありますが、古式豊かな衣装をまとった神職が厳かに儀式を行う風景は、日本の一つの重要な文化であると言えます。

占いは呪術とも密接なかかわりがあることは先述した通りですが、それを含めて、結論として「占いは文化」そう言ってもいいのではないでしょうか。

それでは次回は核心に迫ります。
ここまでは、占いが人間の心理に与える影響を心理学的立場から述べ、社会学的に占いが社会にどこまで根付いているかを取り上げてきました。
次回は最終話「占いと科学」です。楽しみにしていただけると幸いです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?