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ポップアップにブランドコラボ「好きになってもらう機会最大化」で成長し続けるCLOUDY

見るだけでハッピーな気持ちになれるアフリカンファブリックを核としたアイテムを展開。年間10回以上のポップアップストアとSNS発信でファンを拡大し続けるCLOUDY(クラウディ)。「好き」と「楽しみ」を大切にするCLOUDYらしいブランドの理念、ファンの拡げ方、ものづくりの信念についてCLOUDYを展開する株式会社DOYA CCO の金そよんさんにその狙いやプロセスなどを聞きました。

金そよん/株式会社DOYA CCO
韓国・ソウル生まれ。ソウル、大阪、東京育ち。東京大学大学院人文社会科学研究科日本語日本文学専門分野修士課程修了。2006年株式会社博報堂入社、コピーライターとして16年勤務後、2022年より株式 会社DOYA CCOに就任。 


アフリカらしさは一切出さない。ソーシャルグッドを押し付けず「好き」や「楽しみ」を最優先

- まずはCLOUDY(クラウディ)について教えてください。

アフリカンファブリックを使ったアパレルブランドをやっていて、現地の柄が見えてくるような商品を、現地のワーカーさんたちに縫ってもらっています。「クリエイティブとビジネスを循環させることで、アフリカの自走を後押しする」というミッションを掲げ、NPO法人CLOUDYも自分たちで運営し、売り上げの10%をアフリカのガーナの学校運営や雇用などのアクションに使っています。

店頭では「支援感」はほとんど出していません。物を好きになってもらって、ファッションを楽しんでもらうことで、その先の誰かを幸せにできるといいよね、というのが大前提になっています。誰かを救うために、何かを我慢しようみたいなことではなく、ファッションを楽しんだ先に、社会が豊かになるという信念があります。

- 課題解決でなく好きを作ることから始める、すごい素敵ですね。売れ筋商品ってどのあたりですか。

アルファバッグがずっと愛されていますね。アルファバッグは現地のワーカーさんたちが、自分たちでアイデアを出した最初のアイテムです。「最初=α」という意味を込めて名付けています。あと、このバッグは普通のエコバッグみたいな形に見えますが、上部のリボンを絞るとA(α)みたいな形にも見えるので、アルファバッグとして親しまれています。 


売上ではなく、「好きになってもらう」がすべての活動の目的。好きが繋がり、広がっていくファンビジネス。

- お客さんには、どんな方が多いんですか。

メインは30、40代女性で、友人や家族のギフトとして購入してくれることも多いです。 そのギフトをもらった方々が、また他の方々にギフトとして購入してくれて…という感じでお客さんが増えています。 あと私たちは広告を打ってないので、社長や私含めスタッフのインスタなどを見てくれてお客さんが広がっています。

- CLOUDYはコラボレーションも多いイメージがあります。どういう意図や目的でやってるんですか。

これまでクラウディのファンではなかった、新しいお客さんに届けるという意味が1番大きいと思います。まだまだ小さいブランドなので、自分たちの力だけだと広げていくのに限界を感じるなっていうのがあり。コラボ先のブランドさんも、クラウディの思想に共感してくださる方たちが多いので、ファン増加に繋がっています。 

- ポップアップ、SNS、ブランドコラボなど、すべてが繋がりいい循環になっていると思うのですが、何を大事にしてマーケティング活動を組み立てているんですか。

「クラウディってものを好きになってもらう活動」かなと思ってます。 お客さんにとってのクラウディの入り口はたくさんあった方がいいと、私は思っていて、 それが商品でもいいし、人でもいいし、SNSの投稿とかでもいいかもしれない。

一方で「私向けじゃないわ」となったら心が離れていってしまうと思うので、 尖りすぎてもダメだし、ベタすぎてもダメだし・・・心を捉えられる商品をどう作るかは常に意識しています。手が届く憧れを作ることを大切にしていて、商品の価格にもその考えが表れています。例えば1個10万円のバッグを作った方が、数千円のバッグを20個、30個売るよりも簡単かもしれない。でもそれはしない。 

- 個人的にはすごい腑に落ちました。好きになってもらう機会を最大化するってこと。

そう。そして、好きになってもらってからは、例えば、服を好きになってもらった次は、カバンを好きになってもらう。カバンの次は食器を手にとってもらい、その食器に描かれているテキスタイルパターン(柄)を描いたのデザイナーさんを好きになってもらう、というのが理想です。

好きになってもらうと、誰かに必ず言いたくなるっていうのがついてくるから、そのインフルエンサーになってもらえるようなコアファンを増やしていく。だから好きになってもらうためにポップアップストアを年に10回以上開いて日本全国の方に会いに行く。会いに行くっていうのは、まだまだ小さいブランドだから、やっぱ大事にしたいことです。

- 大きな会社だと「好きになってもらう機会をたくさん作る」って逆に難しいですよね。それに対し、色んな接点でお客さんが自分ごと化しやすい文脈でちゃんと会話する。それを真ん中にするというのはCLOUDYならではだと思います。

面白い現象があって。クラウディを持ってる人は、クラウディを持っている人を見かけたら、必ず声をかけちゃうということがあります。同じブランドや商品を持っている人を見かけて、声をかけた経験ってあります?(笑)私の大阪の友人が、たまたま御堂筋線で隣に乗った人がクラウディーのバッグを持っていて、そこから会話が始まったと言ってました。もはや推し文化・推し活に近い感じがしています

私がクラウディに入ったのも、クラウディってものに惚れてるところがあるからで、その魅力というのは、あのバッグ1つだけの魅力では絶対にない。それを作ってる人たちが楽しみながら発信してるとか、やっぱり人の魅力があった。そんな魅力で周りの人を口説いていく感じっていうのはクラウディーにしかできない、ある種のビジネスモデルのようなものになっているのかもしれません。


プロダクト自体の魅力を引き出すことと、社会的責任の中でこだわりぬいたパッケージ

- 最後にパッケージのこだわりについて教えてください。

現地のワーカーさんたちがアフリカンファブリックで商品を作ってくれています。なので、紙のパッケージを作るときも、彼らが作っているモノの魅力をどう出すか、モノ自体をどう素敵に見せられるか、ということを大事にしました。なので単なる入れ物としてのパッケージではなく、中身を見せながらのパッケージというものを作り出すのに、かなり時間を使いました。

クリエイティビティーで社会課題を解決するということを大事にしているので、パッケージ1つだったり、ポーチの紐1つとっても、それが素敵であるっていうのをすごく意識してます。 自分たちのこだわりが詰まった商品を、こだわりが詰まったパッケージで世の中に出したいっていうのがあるので、まだ世の中にないような形のパッケージを作るっていうことはすごく意識していました。 

- デザインについて、どういう議論がされたのですか。

うちの社長からデザイナーさんへのオーダーとしては「ハッピーな気持ちになれるものを」でした。 箱を手にとった人が明るい気持ちになる、もらった人がハッピーな気持ちになるということです。 なので中を見せる穴もただ開けるのでなく、意味があってほしいということを1つオーダーさせていただきました。 あとは、私たちが活動していく中で、なかなか伝わりきらないと感じている自分たちの想いをパッケージに文章で初めて入れてみました。

- 他にパッケージ周りで意識していることはありますか。

今のアフリカって古着(寄付と称して回収された衣類や廃棄された衣類も含む)が流れつく場所で、世界のしわ寄せが全てアフリカに行ってしまっている。アパレル産業が生み出している問題を知りながらも、自分たちは新たな洋服を作ってるっていうジレンマを抱えています。できることから、やる。そう決めて、洋服の素材は環境へ配慮したものを採用しており、パッケージの素材も見直し、紙製のパッケージを作ったのが2023年の6月のタイミングでした。

そしてこれもまたジレンマですが、紙でパッケージを作ったことで、以前のOPP袋と比べて運用コストが上がってしまい(破れないようにケアして扱ったり、破れた時の廃棄など)サステナブルなビジネスのために本当に紙がいいのか。みたいなのは改めて考えています。かといって今までのOPPに戻すのかというとそうではなく、どちらが善でと割り切れない中で、考え続けるってことが社会的責任でもあるのかなと思い今向き合っています。走りながら考える。思いついたら、すぐ試してみる。 それができるのがこの規模の会社の良さでもあると思います。
※OPP=オリエンテッドポリプロピレン:よくある透明なビニール袋に使われる素材


編集後記

CLOUDYの全てのお客さん接点には、「人」がいるというのが気づきでした。 地方のポップアップも社員みんなで参戦し、社員自らお客さんに生きた言葉で話しかける(社長もいます。大企業でこんなことはできません)、だからこそファンになってもらえる。 物やブランドの先にいる人をリアルに感じてもらい共感し好きになってもらう。 アーティストのようなブランド活動がCLOUDYの凄さだと思います。 


[CLOUDY]
“曇りの日をきちんと楽しんで生きる”。世の中に溢れる問題をリデザインして、お客様とともに新しい ファッションの可能性をつくり出す。CLOUDYは雇用創出を目的とした自社工場をアフリカ・ガーナで運営し、これまで630名の雇用を創出。アパレルブランドCLOUDYの売上の10%を、自身で運営するNPO CLOUDYを通じてガーナの「雇用」「教育」「健康」を向上させるためのアクションに充てている。現在7つの学校(幼稚園、小学校、中学校、職業訓練校)を運営し、これまで約3,800人の生徒に教育の機会を提供してきた。
https://cloudy-tokyo.com/  



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