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いとしのソル・ギョング

「好きな俳優は、ソル・ギョングです。」

そう言うと、大抵の韓国の友達は「ほー…」とか「へー」とか「お、おぉ‥」と少し面を食らったような声も漏らす。

韓国では言わずと知れた実力派俳優だが、日本人である私が「好き」と持ち出すのに少し距離感を感じるのだと思う。

でも、大学生のときに惚れて以来、好きな韓国俳優はソル・ギョングなのです。

なんで急にこんなこと言い出すのかいうと、Amazon Primeで『殺人者の記憶法』を発見し、久々に彼の主演を観てしまったから。

冒頭のシーン。線路に佇む、ソルギョング。

佇むだけでただならぬ気配。さすが。

ん?でも、なんだこの既視感。

ソルギョング×線路って… = パッカサタン(ハッカ飴)じゃん!

そうだった。彼を好きになったきっかけである映画『ペパーミントキャンディ』の象徴的なシーンでも、彼は線路に立っていた。

『ペパーミントキャンディ』を観たのは、大学でソウルに留学していたとき(たしか2003年)。しかも、留学期間も終わりかけというとき。友人が「映画好きならこういうのどう?」と見せてくれた。

で、ビビった。

お恥ずかしながら、韓国映画についてはラブコメ『猟奇的な彼女』くらいしか観てなかったので、衝撃的だった。こんな韓国映画があるの?と。この俳優は誰なの?と。
字幕なしだったので、理解できない部分も多かったけれど、すごいものを観てしまった、と。


で、「これが好きなら・・・」とイ・チャンドン監督作品をいくつか教えてもらって、『オアシス』にたどり着いた。
これは未だに私にとって大切な映画。重度の脳性麻痺の女性を演じたムンソリ氏もすごいんだけど、やっぱりソル・ギョングの演技に惹かれた。

そんなこんなで、さらに「こういうのはどう?」とポン・ジュノ監督の『フランダースの犬』や、その他、ホン・サンス監督、パク・チャヌク監督の存在も教えてもらいながら韓国映画に魅了されつつ、帰国したのであった。

当時そんな私を待っていたのは、日本でのヨン様旋風だったw
いやいやいや、ヨン様じゃなくてさ、ソル・ギョングだよっ!」、と。

その後、日本では数少なかったファンの方たちに少し仲間にいれてもらったりして、『力道山』で来日した彼の舞台挨拶に行って生ギョング様を拝めたときは本当に嬉しかった。

なので、『殺人者の記憶法』の冒頭の線路のシーンと定番脇役のオ・ダルスが出てきたところで、あの貪るように韓国映画を観ていた時期にフラッシュバックしてしまった。
(新宿にパク・チャヌク3部作オールナイトとか濃ゆいの観に行ったなぁ…)

ソル・ギョングはカメレオン俳優と呼ばれ、体重管理を含め見た目の役作りに注目されがちだけど(実際今回も見事に痩せ老けていたけど)、私には役によって重力めいたものまで変化させているように感じる。

ちなみに補足すると、私はなぜか人を見るとき、重力という項目をもっていて、「あの人は重力があまりかかっていないひとだな」「このひとはちょっと内側に重めの重力を感じる」とか勝手に思っているw。

天職に就いて輝いている人を観て、その運命に鳥肌がたってしまうという感覚を久々に彼の姿を見て、味わった。(ビヨンセが大勢の前で歌っているときにも、これを感じる)

彼のすごさを表すには、私の表現力は足りなすぎるので、ここら辺にしておこう。

作品自体も、元殺人鬼でアルツハイマーというチャレンジングな設定や、サスペンスと笑いの同居とか韓国映画らしくて楽しめた。が、見終わってから、ラストが別バージョンの作品があると知り…、そちらは全く同じシーンでも、違う表情に見えるという…なんと『コクソン』のように「見方が変わると、全部違って見える」の体験映画だったとは…。

さてさて、ポン・ジュノの『パラサイト』も、すごい楽しみだなぁ。

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