見出し画像

掌編小説「カレーを作ろう」(200字)

女のカバンから出てきたのは、廃棄寸前の見切り品ばかりだった。

古くなった人参、色の悪くなった豚肉、腐りかけの林檎。なにもわざわざ、こんなモノばかり盗らなくとも。

謝罪を繰り返す女を見ていると、胸が苦しくなった。

先日、俺も妻に見捨てられたばかりだ。

そう、今この部屋は、ゴミ箱のよう。

俺は女をそこから追い出すように帰し、盗品は自腹でレジを通して持ち帰ることにした。

人生、初挑戦、今日はカレーを作ろう。

俺はまだ、腐ってない。






サポート頂けるととても嬉しいです