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【星野源】"地獄でなぜ悪い"という哲学

私は星野源の哲学が好きだ。

もちろん彼の音楽も大好きなのだが、
歌詞やエッセイ本のメッセージからにじみ出る、彼の人生観・死生観がとても好き。

特に、「地獄でなぜ悪い」という歌の歌詞が、私の考える世の中の摂理を言語化してくれたように感じた。

無駄だ ここは元から楽しい地獄だ
生まれ落ちた時から 出口はないんだ

いつも窓の外の 憧れを眺めて
希望に似た花が 女のように笑うさまに
手を伸ばした

嘘で何が悪いか 目の前を染めて広がる
ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ

星野源「地獄でなぜ悪い」

この世は最初から楽しいものなんかじゃなく地獄だと言っている。
生まれてから死ぬまで、その地獄から出る術はない。

悲しくてへこたれそうなことがあっても、その気持ちから逃げる方法なんかない。地獄をとにかく進んで這いつくばる者だけが、その記憶を克服できる。

「嘘で何が悪いか」の嘘というのは、そんな地獄の中で見る虚構の世界。頭の中で思い描く妄想の世界。
これは確かに実体のない嘘なのだが、あまりにもしんどい地獄を進んでいくにはこの嘘は必要なことだと彼は言っている。見えるものだけが救ってくれるわけではないと。


私はこの歌詞を聞いて、
何があっても死ぬまでは生き続けなければいけないこと、生き続けることでしか癒されない傷があることへのふんわりした絶望感を、
はっきりと言語化して現実のこととして教えてもらったように感じた。

「ただ地獄を進む」なんてものすごい絶望感を感じる言葉なのだが、
それ以外は方法はない。楽な道はない。悲しい傷を放り出すなんてできないぞ。と言ってもらった方が、素直に腹をくくれたし安心できた。

それに、最初からこの世は地獄だと思っていた方が合点が行くことが多い。
正直者が馬鹿を見て、性格の悪い奴がなぜか出世して、優しい人から順番につぶされていくこんな世界、地獄以外の何物でもないだろう。

願えば報われるとか、平等とかなんとか甘い言葉で励まされるより、腑に落ちて納得できたのだ。

そして、虚構や妄想などの見えない世界に救われてもいいというメッセージでも安心できた。

ゲームや小説、映画や頭の中のとんでもparadiseな妄想、なんの生産性もない時間が私を救ってくれている。外の世界が地獄なら、頭の中の世界にいったん隠れてもいいんだと言ってもらっているように感じた。
まさに、「嘘で何が悪いか!!!!」だ。

彼自身、くも膜下出血で生死を彷徨ったことを筆頭に、とんでもない地獄を進んできたのだと思う。(エッセイ本や歌の歌詞、出演番組の発言などでそう感じた)

乗り越えて乗り越えて、今も乗り越えている人から、
「とにかく地獄を進め、それ以外道はない」
という綺麗ごとではない実感が乗った言葉をもらって、私も本物の言葉を紡げる大人になろうと思わせてもらった。

そのためには、
過去の傷も背負いながら、いま目の前の山を越え、ただただ歩き続けていくしかない。いつか歩いている途中で、ぽろぽろっと荷物が落ちていくのだろう。

ただ地獄を進む者が悲しい記憶に勝てる。
そう信じて。

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