読書日記76「下町ロケット ガウディ計画」-池井戸潤

ロケット部品の次に医療機器部品。あまりにも畑違いの開発だと感じたが、しっかりとつながりがある物語だ。登場人物が多いとその関係性がだんだん分からなくなってしまいがちだが、それがないのが池井戸作品の素晴らしいところの1つだと改めて感じた。

自分はこの本を通して、「デバイスラグ」という言葉を知った。日本で医療機器の薬事承認が欧米よりも遅れることを指し、背景には審査制度が不十分であることなどがあるらしい。この言葉に聞いたことあるような気がするが、意味は分かっていなかった。
人の命に関わる重要な問題が制度に振り回されてしまう。他にも自分が知らない重大な問題があるのだと思う。

自分は仕事で役所に行くことが多いのだが、そこでも制度に縛られた国であることを感じる。制度通りに運用することは目的のためであるはずなのに、制度を守ること自体が目的になっている、いわゆる手段の目的化が起こっていると感じる。

実際に経験したことないことについて経験した状態に少し近づけるのが本の良いところの1つと聞いたことがあるが、まさにそれを感じる本だった。

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