読書日記105「生きるぼくら」-原田マハ

主人公は学生時代のいじめをきっかけに引きこもりになった24歳の男性だった。ある日、母が自分をおいて家を出て行ったことをきっかけに物語が動いていく。

最初に引きこもり生活の描写が続き、ここから主人公が何かに踏み出すのだろうなとは思っていたが、踏み出した先が米づくりだとは思わなかった。主人公が自然豊かな環境で成長していく様子をみて、昔稲刈り体験をしたときに感じた清々しい気分を思い出し、自分も大自然の中で暮らしているような気持ちになれた。

印象的だった人物は、近所で飲食店を営む志乃という人物だ。いつもはフレンドリーに人に接する志乃だが、主人公が助けを求めたとき、落ち込んでいる場合ではないとはっきり告げた上で現実的なアドバイスをする。そのシーンが印象的だった。心の面で寄り添うだけではどうにもならないことがあり、現実的な行動を示された方が救われるときもあるのだと学んだ。

解説で知ったのだが、作者は実際に米作りをしたことがあるらしい。機械を使わずに米づくりをする理由の説明に説得力があるのはこれが理由かと納得した。個人的にはキュレーターの印象が強かったが、この作品を通して作者の幅の広さを感じた。

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