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旧市街のウラのウラまで楽しめる、ハノイのカフェめぐり。

2019年1月、2日間ハノイに滞在した。目的は「36通り」と呼ばれる旧市街を探訪することだ。ハノイの旧市街には、かつて36の「フォン(=Phuong、坊=ベトナムの行政単位)」があり、それぞれの名がその生業を示していたとのこと。現在も仏具店が連続する通りとか、靴屋さんばかりが並ぶとか、通りの名前と必ずしも一致はしないけど、道の両脇に特定の業種のお店が集中する、近代化以前のギルドを残す興味深い風景が連なっている。

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Hàng Quạt通り。Quạt=扇子の意。でも仏具屋さんが集まっている。

その通り沿いの建物も、とても興味深い。それぞれの敷地の間口は狭いけれど奥行きが長い。京町家も同様で、うなぎの寝床と呼ばれているけれど、ハノイのそれは、アナコンダとかそういう生き物の寝床に匹敵するレベルで長い感じがする。

そして、そこに建っている建物が、ものすごくややこしい。度重なる増改築で中庭、階段、屋上、屋上の上にさらに部屋、と三次元的にこねくりまわされているように見える。

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しかしそれらのほとんどは、1階の手前はお店でも奥はプライベートゾーンである。私のような観光客は、それらを外から指を加えて見るしかない。うう、みたい。あの建物がどうなっているのか、みたい。

安藤忠雄設計の商業施設のような立体迷路! カフェ・フォーコー

どうすれば、中に入れるのか。人間力に自信があれば、そのへんの人に声をかけ、友達になって家の中に入れてもらうところだが、そういった徳の高さは自分にはないので、無理せずに"検索"という方法に頼る。

「ハノイ 旧市街」「ハノイ 路地」「ハノイ 路地裏」「ハノイ 住宅」「ハノイ 町家」「ハノイ カフェ」……

単語を入れ替え検索を繰り返し、「ハノイ 隠れ家」で出てきたのが、「カフェ・フォーコー」である。紹介記事をみると、一見入り口がわからない"隠れ家"で、別の店を通り抜け、さらに階段をいくつも登ると、屋上の絶景にたどり着く……とのこと。これは完全に求めていたやつだ! さっそく行ってみることにする。

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この洋服屋さんの奥にある。気づかず何度も素通りする。

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同じくお店を探していたっぽい韓国人カップルについて、ずんずん奥へ。

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中国風の中庭があらわれる。ハノイの前に滞在していた、ホイアンの町家の中庭に似ている。

そこで店員さんにメニューを渡され、注文するように言われる。あわててバナナケーキとバナナのスムージーをお願いする。

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階段を登っていくと、この立体構造。階段とブリッジでつながる構成、まるで安藤忠雄さんが80年代に大阪の都心に設計したビルみたいだ……。

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どんどん高いところへ。

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ホアンキエム湖をのぞむ絶景があらわれる。

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横を向いてもこの風景。ひょー。

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バナナケーキとバナナスムージーで、バナナがダブってしまったなあ。(©孤独のグルメ) しかしそのバナナケーキが実に美味! あわせて95,000ドン(約475円)。ハノイにしてはお高めなのだが、建築、風景に加えて美味しいケーキで十分おつりが来る! ちなみにハノイ在住の方によると、エッグコーヒーがおすすめとのこと。


素敵スペースのブリコラージュ。 カフェ・ノラ

味をしめた私は、さらなる検索を行い、つづいてカフェ・ノラという店に狙いを定めた。

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ここも路地奥にある。

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細い路地を、奥へ奥へと進むと中庭がある。

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中庭を囲んで、いかにも心地よさげなスペースが次々とあらわれる。

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絵になる。

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ネコまで絵になる。

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屋上のテラス席。傘をつかったシェードがおしゃれ。眺めもすばらしい!

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ハノイ名物のブンチャー。カフェにしては、ご飯ものが充実。コーヒーとあわせて125,000ドン(約625円)。これまたハノイにしてはお高めなのだが、居心地が最高で、食事もおいしく、(珍しく)電源も使えるしWi-Fiもビュンビュンなので十分おつりが来る!


老舗カフェでエッグコーヒー! カフェ・ディン

隠れ家カフェ巡りに取り憑かれたわたしは、ハノイ旧市街を離れるタイムリミットまでもう一軒行ける! と、貪欲にはしごをつづけることにした。

おしゃれで落ち着いたところがつづいたし、散々ゆっくりしたので、次は少しディープめなところに挑戦してみよう。検索をつづけると、デイリーポータルZのとある記事が目に入った。

まさかハノイのカフェを紹介する記事まであるとは、デイリーポータルZの守備範囲の広さにおののく。老舗で、隠れ家的で、エッグコーヒーが名物で、めちゃくちゃ混んでいるらしい。

場所はさっきまでいたカフェ・フォーコーのすぐそば。戻ることになるけれど、旧市街は狭いので、ちょっと歩けば着く。とはいえ信号がろくになく、バイクが容赦なく通り過ぎていく道を歩くのはなかなか骨が折れるのだけど。

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事前情報のとおり、かばん屋の奥にある。窓やベランダのアイアンの金物がかわいい。奥に進み、そそと階段を登ろうとすると、店員さんと思われる人にどこからきたの? と声をかけられた。日本だと答えると、どうぞ先へと促される。老舗カフェ、意外にオープンマインドなようでホッとする。

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あれ。その人も席に座る。店員さんじゃなかったのか……。でもお店の人とワイワイしてる。常連さんなのかな? 老舗カフェ、ゆるい。そして店内は、そこまで混んでない。適当な席につき、エッグコーヒーをお願いする。席はハノイの路上でたくさん見かける低いイス。うれしい。

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そして出てきた、エッグコーヒー。

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エッグコーヒー20,000ドン(約100円)。コーヒーにメレンゲ入りのカスタードクリームをかけたかんじ。隣の英語で盛り上がってるグループは、全員分のカップをまとめて映える感じの写真を撮影したり、ゆるっとミーハーに楽しんでいる。確かにお店までの階段の裏動線ぶりなどはディープなのだけど、普通に観光客が安心して来られるお店だった。


ハノイ旧市街の隠れ家カフェめぐり、ものすごく楽しかった。イギリスのロンドンでは毎年、建築の内部を一般公開する「オープン・ハウス・ロンドン」というイベントが開かれ、それを目当てに世界中から人がやってくるというけれど、これらのお店はいわば日常的に「オープン・ハウス・ハノイ」状態で開いてくれている。通りからでは計り知れない、奥行きある風景にアクセスできるので、かなりおすすめだ。

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