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初めて上下関係を意識した話

小学生の頃、上級生への言葉遣いはタメ口だった。それがいつからか、自然に「上下関係」を学んでいく。誰から教えられるわけでもなく、自然と上下関係を読んでいくのだろう。

中学生になったら「先輩」には敬語

小学6年生になると、来年から中学生になることを意識するようになる。私が通う中学校は、入学予定の小学生を対象とした学校見学会があり、授業と部活を見学する日が設けられていた。私も同じ中学に進学する友人と共に、進学する中学校を見に行ったものだ。

後日制服の採寸があったり、通信講座から「中学校にある部活特集」なんて冊子が配布されたりと、中学生になる準備をしている頃、同時に意識させられるのが「先輩との上下関係」だった。

私は小学生の頃、よく上級生とドッジボールをしていた。その頃は上級生に対して敬語を使う文化はなく、全員とタメ語で会話を交わしていた。

しかし中学に入ったらそれは違うようだ。先輩後輩の上下関係が明確にあり、先輩にタメ口は使ってはいけないようだ。あと「運動部は特に上下関係が厳しい」とも聞いた。私は当初テニス部に入ろうとしていたが、上下関係が怖くて辞めた。

うっかり先輩に手を振ってしまった

月日は経ち中学に入学をすると、私は演劇部に入部した。きっかけは、先に挙げた学校見学会での部活見学だった。テニス部を除けば吹奏楽部にも興味があった私であったが、たまたま見学に行った演劇部に興味を持ったのだ。

小学生の頃からテレビドラマに興味を持ち、いつかは自分もドラマや舞台に立ってみたいと思うようになっていた。今思うと浅はかではあるけれど。

演劇部は、他の部活に比べると上下関係が緩めだった。入部をすると、先輩が後輩にあだ名をつける慣習があるなど思い描いていた部活とはかなり違った気がする。それの良し悪しは別として、「中学は上下関係が厳しいと聞いてたけどなんだこんなもんか」と当時の私はすっかり緩んでしまったのだ。

ある帰り道、私は運動部に所属した同級生と一緒に帰宅していた際、演劇部の先輩と出会した。私は「さようなら」と先輩に向かって挨拶をしたところ、先輩が私に向かって「バイバイ」と手を振ってきたのだ。

私は「先輩に手を振っても良いだろうか…」と少しは思いながらも、遠慮がちに先輩に向かって手を振ってしまった。先輩とは何事もなくその場を離れたが、それを見ていた運動部の同級生にかなり苦笑いされながら言われた一言が忘れられない。

「先輩に手を振るの?」

彼女が言ったことは的を得ていたと思う。先輩に手を振ったことは失礼なことだった。その先輩は手を振られたことを咎めることはしなかったが、私は失礼なことをしてしまったと恥ずかしく思った。

運動部ではなく厳しい部活ではなかったが、その後はより一層マナーに気をつけて先輩と接することを誓った中学1年生の苦い思い出である。

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