【短編小説】己が信ずる夜明けに向かって 4話(最終話)
「地区の医者はもう手が塞がっています」
「中級程度の治癒の魔術なら展開できますが……」
職員とノアがほぼ同時に口を開いた。女性職員は「そんな……」と絶望の表情を浮かべて項垂れてしまった。
「中級程度の治癒の魔術じゃダメなのか?」
「応急処置程度にはなるとは思います。ただ、患者さんが魔術嫌いなんです」
ラスターが、ああ……と落胆の声を上げた。地区の住民の大半は生まれつき魔力を持たない「アンヒューム」と呼ばれる人々だ。魔術師から強く迫害されてきた歴史を持つ彼らの中には、徹底的