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勉強会vol.2 『まちづくり幻想』|木下斉著

第二回の課題図書は、前回に引き続きまちづくり研究家、木下斉さん著の『まちづくり幻想』(SB新書、2021年)でした。民間4人、市職員5人の計9人で、本の内容をもとにディスカッションしました。

官民9人でディスカッション 今回から初の女性も参加!

ざっくりと要約

『まちづくり幻想』(木下斉著、SB新書、2021年)

地方創生が本格的に始まった2014年から今年で10年。地方に住む皆さんのまちは「創生」してますでしょうか? ここ館山でも新しい動きは生まれているものの、残念ながらまだまだ黎明期から脱しえません。

この本で木下さんは、行動する前の思考(戦術)が間違っているから成果はでないのだと指摘します。

『まちづくり幻想』P5

タイトルにある通り、多くの人が共通したまちづくりの「幻想」を抱いているため、地域は変わらない、変われない。幻想に惑わされた思考を解放し、その対策をとる上で、役割に応じたアクションプランを提示しています。

『まちづくり幻想』P7


疲弊する地域に立ち向かう人々に対するエールが込められた熱い言葉が散りばめられ、まちづくりのマインドセットを養う名著です。

幻想を振り払うための12アクション(第5章)

今回もプレゼンターは、公民連携のプロフェッショナルスクールも受講経験がある本間さん。自身の響いた言葉や考え方について触れた上で、本書第5章に記された「12のアクション」を一つずつ議題としました。

12のアクション

①外注よりも職員育成
②地域に向けても教育投資が必要
③役所ももらうだけでなく、稼ぐ仕掛けと新たな目的を作る
④役所の外に出て、自分の顔を持とう
⑤役所内の「仕事」に外の力を使おう
⑥既存組織で無理ならば、新たな組織を作るべし
⑦地域企業のトップが逃げずに地域の未来を作ろう
⑧バイローカルとインベストローカルを徹底しよう
⑨一住民が主体的にアクションを起こすと地域は変わる
⑩リスクを共有し、地元ではないからこそのポジションを持つ
⑪場所を問わない手に職をつけよう
⑫先駆者のいる地域にまずは関わろう

ディスカッションテーマ

この時点でかなり脱線してしまいましたが、今回議論に挙げたテーマは以下。

・館山における官民においてはびこるまちづくり幻想は何か?
・組織学習の必要性について
我が地域の官民組織の意思決定者は学んでいるか?
外注ではなく、内製化に向けた動きはできるか?できない要因は何か?
・公務員戦国時代、館山として取り組むべき環境作りと採用戦略は?


実際には話題は市の「総合計画」に転じ、どうしたら総合的な計画になるのかとか、市の計画はできる限り内製化すべきだとか、さまざまな議論がありました。また、地域の教育レベルを上げるにはどうしたらよいかというテーマでも時間をとりました。

印象的な言葉や寄せられた感想

●P110 成功者を収奪者だと思い込む人
●P97 地域のトップに必要なのは夢
●P202 先を行く地域は過去の幻想ではなく未来の夢を見ている
●P203 現実と向き合い未来に向けたアクションをしていく地域にヒト、モノ、カネが集まる

●普段、業務をしている中で、思い当たる幻想や問題が数多くありました。
●願望や希望的観測、他人任せにせず、しっかりと現実と向き合い、学び(直し)や気付きを大切にしながら、できることから行動に移していくことが大切だと感じました。
●言い訳や、できない・やらない理由を考えるのではなく、変わろうとする気持ち、一歩踏み出す覚悟を持っていきたいと思いました。
今回の本でもたくさん良い言葉がありました。
(P97)ネガティブなプレゼンテーションは・・・プラスになることはありません
(P169)鯖江に行ったときに感じたのは、地元の方々の自信と魅力。地元の人たちが自然体でプライドを持っていることが重要
(P170)関係人口は追いかけるものではなく、引き寄せるもの
(P178)まずはわからないなりにでも地元の行政、民間だけで、今からでも取り組めることをやればいい。・・・自分たちで考えて失敗した反省は、次の事業に繋がる
(P200)「幻想」の多くは「過去の古い常識」であったり、「そもそも間違った噂」であったり、「そうあってほしいという願望」。・・・「幻想」と「現実」を取り違えないこと。これが地域プロジェクトにおける極めて重要なこと
(P203)幻想をさっさと捨てて、現実と向き合い、未来に向けたアクションをしていく地域にヒト・モノ・カネが集まっていく
(P235)あらゆる取組は、誰かしら覚悟を決めて「やる」と決断して、従来からの幻想を振り払い、一歩踏み出したからこそ成果に繋がっている 

全体通した感想としては、常に考え続けること、試行錯誤することは重要だなと思いました。昔の成功体験とかに引きづられて、それに囚われてしまうことがないように客観的に見たり、外の意見をある程度は聞く柔軟性を持ち続けたいと思いました。

まずは、夢を描く事が大切なのだと思いました。頭の中に留めず、言葉や形にして表現していくことが分かりやすくなる様に感じました。本日のお題にある、公務員戦国時代については、採用時期の見直しと給与、業務内容が重要なのではと思います。

レポーターの気づき

少し前に公民連携関係の講演を動画で見た時、とある自治体の担当者が、「行政はやるべきことをやる、民間はやりたいことをやる」と話していたのが印象的でしたが、木下さんの2冊を読んで、この意味が徐々に理解できているという実感があります。

行政はまちの再生のために十分な人と時間を費やして、まちづくりを設計する役割があります。その上で民間は自由な発想でやりたいことを実現するよう努力する。

とにかく場当たり的な発想で、補助金がとれたらから「あれをやろう、これをやろう」とけしかけている限りでは決してうまくはいきません。金の切れ目が縁の切れ目となります。

まちの資源を深く掘り下げて見つめ直して、行政はまちづくりの夢を掲げる。その夢に賛同した民間が投資してこそ、本格的なまちづくりが始まる。そんなイメージがもてました。

来月は、とある行政学の専門家をお招きして、ガチンコで地域コミュニティーについて議論する予定です。よろしくお願いします。

レポーター:ひがし

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