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【短編小説】私とゼンマイ時計(4)

第1話はこちら。

1つ前のお話はこちら。

カウンターでカレーを食べていた。
実はあまり辛いものが得意ではないのに、
何故だろう、時々食べたくなるのは。

でも想像以上の辛さに、お水を入れたガラスのコップに何度も手が伸びる。
カレーの量も相まってお腹はたぷんたぷんだ。
でも大きなお皿にまだ半分も残るカレー。
辛さの中和を期待して、追加で自家製マンゴーラッシーまで頼んでしまった。

残す、という選択肢は私の中に存在しない。
時間はたっぷりある。

先に座っていた左側の女性は、ゆっくり食後のマンゴーラッシーを楽しんでいる。
後から来た右側の男性は、常連なのかあっと言う間に平らげて去っていってしまった。

それでも私は動じない。
今、目の前にあるカレーを全て美味しく頂くことに集中しよう。
いや、正確には集中しないと入らない気がする…

ちょっと弱気になりながら、また一口とカレーを口へ運んだ。
粗いスパイスが口の中で不思議な食感を生み出す。
こんなカレーを今まで食べたことがない。


もうこれ以上何も入らない、という限界まで食べ、最後の一口までしっかり噛みしめた。
備え付けの紙ナプキンで口を拭いて、四つ折りにするとお皿の下へ挟み込んだ。
そして、お腹がいっぱいなのに、最後に残しておいた水を口に含んだ。
氷はすっかりとけて、グラスから水滴がぽたぽたと落ちた。
どうも食後は水を飲んで終わりにしたくなる。

お会計を済ませ一歩外に出ると、忘れかけていた夏の日射しに照り付けられる。
まだ14時までは時間がある。
この暑さだから、何処か涼しいところにでも入って一休みするのが良さそうだが、もうお腹の容量は限界である。
これは歩き回って少しでも隙間を空ける方がよいのではないだろうか?と、ゆっくりと歩き始めた。


~つづく~


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