麻生バッシングとジェンダーギャップの大きさの関係

「少子化の原因は晩婚化」の麻生発言を批判する人と日本のジェンダーギャップ(世界経済フォーラム)の大きさを批判する人はかなり重なっていると思われるが、この👇ような現実逃避・責任転嫁する声が大きいことがジェンダーギャップが大きい原因である。

IT企業サイボウズの青野慶久社長も、同日、自身のTwitterにこう書きこんだ。
《少子化は、晩婚化だけでなく子育ての経済的負担やジェンダーギャップ、社会の風土など様々な要素が絡む複雑な問題です。「最大の原因は」と軽く口にする辺りが、この問題をいまだに理解できていない証拠です》
ほかにも、以下のようなものがあった。
《完全に自民党の責任でしょう。何言ってんの?》
《少子化の要因は庶民、なかでも若者の貧困政策を進めた自民党政治にある》
《少子化の最大の理由は低賃金。労働者派遣法で非正規を認めてしまったことだ。昔の様に全員正社員にすれば解決する》
《いつまでも現実に向き合わず責任転嫁する政治家が、一番の少子化の原因だと思う》

晩婚化・非婚化が少子化(出生率低下)の主因であり、それが結婚・出産に関する意識や社会規範の変化によるものであることは専門的常識である。これ👇は出生率低下についてのアメリカ政府機関(CDC)の解説だが、やはり社会的・文化的規範の変化と高学歴化を要因として挙げている。

Changing patterns in social and cultural norms, as well as increases in educational attainment and contraceptive use, have contributed to the decrease in birth rates among women under age 35, who account for most births in the United States, and the increase in birth rates among older women.

CDC "Health, United States, 2020–2021"

この本👇は2010年の出版だが、日本の晩婚化・非婚化の主因も伝統的社会規範・社会からのプレッシャーの弱まり(解放)である。この変化は経済発展した国々のほぼすべてに見られるもので、日本政府・自由民主党が責任を問われる日本特有の現象ではないことも明らかである。

メアリー 日本にある伝統的コンストレイントの一つに、結婚適齢期がありますよね?20年か30年前、例えば1980年代の日本女性の結婚適齢期は24~25歳で、28歳ぐらいまでの間に八割の女性が結婚していました。それは、社会からのプレッシャーがあったから。自分の価値観ももちろんあって、ある程度自分で決めてはいましたが、「〇〇歳だから、結婚しなくてはならない」という社会規範がものすごく強かったですよね。
だけど、最近はいわゆる結婚適齢期を無視する人の数がすごく多くなったように見えます。さらに、もしかしたら結婚しない、という選択をする人も増えましたよね。これはものすごく大きな変化だと思うんですが、違いますか?

山岸 そういえば、結婚適齢期という言葉もあまり耳にしなくなったし、クリスマスケーキの例えもほとんど聞かなくなった。25日(歳)を過ぎて売れ残ると、安く買いたたかれるという。[後略]

p.77-78
総務省統計局「国勢調査」

日本と西洋諸国の相違点は、日本では「女に責任はない/責任は政府・自民党にある」だが、西洋諸国では女に結果責任(あるいは原因)があることをこの👇ように堂々と認めて(開き直って)いることである。《いつまでも現実に向き合わず責任転嫁》しているのは日本の政治家ではなく政治家を批判したりブーイングする人々である。

出生率の低下は、精子の数とも、生殖能力について議論する際に頭に浮かぶありきたりな事とも、何ら関係ない。
そうではなく、教育を受け仕事をする女性が増え、避妊がもっと簡単になったことで、女性がより少ない子ども数を選択するようになったのだ。
いろんな意味で、出生率の低下は成功談(サクセス・ストーリー)なのだ。

日本の女には「責任」から逃げたがる/負いたがらない著しい傾向があるわけだが、それなら「結果責任を負う」ことが求められるリーダーやマネージャーに女が少なくなるのは必然と言える。

世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数(Global Gender Gap Index)のランキングが低いのも政治・経済分野のヒエラルヒーの上層に女が少ないことが主因だが、その原因を自分たちの消極性ではなく「男による差別」だと他責することそのものがジェンダーギャップを大きくしている。日本の男が女の他責・甘えに迎合していることも、ジェンダーギャップが縮まらない理由である。

「国のために産むのではない/産む・産まないは女が決める」と言われれば、政府や政治家は口出し・手出しせずに「期待」するしかないのだが、そうなったらなったで反発して喚き散らすという支離滅裂さ。

参考

日本よりも経済パフォーマンスが良い国・地域でも晩婚化・非婚化は進んでいる。

厚生労働省,大韓民国統計庁,中華民國内政部,香港特別行政区政府統計處
中華民國内政部,Singapore Department of Statistics

日本はこれらの国々よりも「女が輝いていない(←責任を負いたがらない)」ために、出生率が高くなっているとも言える。

厚生労働省,大韓民国統計庁,中華民國内政部,香港特別行政区政府統計處,Singapore Department of Statistics

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