見出し画像

主人公からの贈り物

こんにちは。
株式会社プロタゴワークスあかねです。

ウチの会社は、「主人公を生み出す」という理念を掲げて起業をしました。

それ以来、主に他社の組織開発に関わらせてもらうのがメインの事業として起業当初の理念の実現を目指して先月5期目に入りました。

そんなウチですが、事業としてはメインの組織開発とは全くの別軸のように見えるかもしれない仕事を起業して以来ずっとやらせてもらっています。

それは、群馬県前橋市が手掛けている生活困窮者自立支援制度の中の就労準備支援事業である“チャレンジセンターまえばし”でのセミナー講師です。

この仕事は、起業したばかりでリアルに何の仕事も無い状態で「さて、どうしたもんかな…」というような時に、ちょっとしたご縁で声をかけていただいて、引き受けさせていただくことになりました。

セミナーを受講する人達は、この“チャレンジセンターまえばし”に通う利用者の方々であり、前橋市のHPには施設と利用者の方についての説明に以下のような記載があります。

就労準備支援事業(チャレンジセンターまえばし)
チャレンジセンターまえばしでは、「社会との関わりに不安がある。」、「長期間働いていなかったため、すぐに働くことが難しい。」、「他の人とコミュニケーションがうまくとれない。」など直ちに就労することが困難な方に、一定期間、個別カウンセリングやセミナー、ボランティア活動、企業への就労体験等を通じて、就労に向けた段階的な支援・就労機会の提供を行っています。
(注意)一定の資産、収入等に関する要件を満たしている方が対象となります。

前橋市HP

まさに名称の通りの生活困窮者自立支援制度であり、その制度の中にある就労支援準備事業であり、「チャレンジする場所」としての“チャレンジセンターまえばし”です。

以前に、そこで勤務していたスタッフの方(市の職員ではなく前橋市からの事業を受託している民間組織の方々)からは、「いわゆるセミナー講師を生業としている人達にセミナーを依頼してやってもらったこともあったんですが、センターの利用者にちゃんと内容を受け取ってもらえるようにやってもらうことが難しくて引き受けてもらえない(意訳)」というような話を聞かせてもらったことがありました。

ウチもいわゆる“セミナー講師”のような仕事をやらせてもらうこともあるので、ウチの仕事をあまりよく知らない方からは「セミナー講師やってるんでしょ?」と聞かれることがしょっちゅうありますが、僕たちにとってのセミナーはそれはあくまでも「自分たちの本業」ではなくて「本業である組織開発に付随する仕事の一環として」やらせてもらうことがある程度です。

そんな僕たちの方が“チャレンジセンターまえばし”でのセミナーを長く継続していられることには理由があります。

その理由は、僕も仲間も前職で同様の施設に多少なりとも関わっていたので「就労準備支援事業というモノ」を理解しているし抵抗が無いことです。

前橋市の就労準備支援事業である“チャレンジセンターまえばし”でセミナーをやらせてもらっているということを、今は大々的に公言することはあまりありません。ただ、起業当初はよく話に出していました。

なぜ今はあまり話に出さないようにしているかと言えば、誤解を恐れずに言えば、「ウチが普段関わらせてもらう人達にとっては一切無縁の世界の話だと思われていることがわかったから」です。

ウチの本業でもある「他社の組織開発」で関わらせてもらう方々にとっては「就労すること」というのは、「考えるまでもなく、現在もう既に行っていること」であり、もっと言えば、「企業で働く人」である経営者や社員の方々からすると「就労をしてからがスタートであり、仕事の中にこそ“チャレンジ”がある」という認識の方がほとんどですし、もっと言えば、「就労を支援してもらう人達」に対して「現在、就労している人達」からの風当たりはかなり強いということがハッキリとわかってきたからです。
何しろ、「働くための準備を税金使って支援してもらうなんて俺には意味がわからない(意訳)」というような話を面と向かってされた経験は一度や二度ではありません。

「そういう意識の人達が多いんだなぁ」ということが分かってからは、“チャレンジセンターまえばし”の仕事をウチが引き受けているということを自分たちからわざわざ話をするのは、その相手の人が「社会的弱者のポジションにいる人に対して理解があるかどうか」がある程度見えている人に向けてだけするようになりました。
でも、起業等当初の僕たちは、「自分たちの現在の仕事で関わる人達」の多くが「(上記のように)そう考えている」ということを知りませんでしたので「こういう仕事もやっているんです」ということを自己紹介のたびに言っていたような記憶があります。

そんな僕たちは、「就労には準備が必要である」ということを明確に思っています。
ただし、その“準備”を己一人で、独力で行える人は「とても強い人」だし「恵まれた人」なんだろうと思っています。

それは、長年、「就労支援の仕事」に携わってきてようやくわかったことでもあるので、僕たちのような経験が無い人にとっては「いや、そんな支援なんて必要ないだろ?甘えてんじゃねーよ」と考える人がいるというのも仕方のないことだと思っていますので特に論争するつもりはありません。

と言うか、僕自身も元々は「自分がする仕事を見つけるのに誰かの手を借りるなんて恥ずかしいこと」みたいな意識があったような記憶がありました。

でも、実際に「就労支援の現場」に身を置いて仕事をしたことでハッキリわかりましたし、その後こうやって「組織開発の現場」に身を置いて確信したことがあります。

「自己理解も職業理解もできている人はほとんどいない」ということです。

“就活している人”に向けて言っていた「自己理解が大事。職業理解が大事」とう話をそれこそ念仏の如く唱えていた立場の人間でしたが―これは自戒も込めての話ですが―自己理解も職業理解も本当の意味でちゃんとできている人なんて「この社会の中には本当にごくごく一握りの人しかいないんじゃないだろうか?」ということを考えざるを得ません。

これは、実際に「自己理解ができているか?職業理解ができているか?」という“問い”を自分に向けている人であれば、まず間違いなく共感してもらえるんじゃないかなと思っています(そもそも、その“問い”を己に向けていない時点で「できていない」と確定してしまうことになるわけですが…恐ろしい)。

そんなウチが手掛ける“チャレンジセンターまえばし”でのセミナーは、(当然ながら)ウチの仲間がずっとやってくれています。

仲間が実施するセミナーなどを受講したことがある人がいれば確実に同意してもらえるとは思いますが、とにかく評判が良いんです。

その評判というのは、「この仕事をウチに依頼してくれる施設のスタッフの方々から」なのはもちろんそうなんですがポイントはそこではありません。一番は、ここを利用しているこの施設の利用者の方々からです。

先日はこんなことがありました。

“チャレンジセンターまえばし”に朝からセミナーに行っていて、午後になって会社に帰ってきた仲間がなんだかとても嬉しそうに上機嫌で帰ってきたんです。

「何かあったんですか?」と聞くと、「これ、もらっちゃいました!」と嬉しそうに何かをカバンから取り出して机に置くんです。

置かれたのは、いわゆるスーパーやコンビニで売っているごく普通のチョコチップクッキー。

僕は真意を測りかねて「どうしたんですかこれ?」と質問しました。

すると、普段から落ち着いている仲間が、この時は満面の笑顔でテンション高くそう話してくれました。

「元利用者の方が、自分が働いて稼いだ初めてのお給料で買ってきてくれたんですよ!」

この施設では、利用者の方々はセンターの準備したプログラムに則って一定の周期での就労を目指して通っていて、目標は「就労すること」なわけですから「就職先が決まって仕事をする」という状態になれば通所が終了するわけです(僕の理解が正しければ、こんな感じの流れになっていたような気がします)。

そんな風にして就職した人が、先日、センターに遊びにきてくれていたそうです。ちょうど仲間がセミナーをやりに行った日のことでした。

そこで、その“元利用者”の方が「みなさんにお世話になったので自分で働いてもらった初任給でお菓子を買ってきました。みなさんには本当に感謝しています。今は仕事に行くのが毎日楽しいです」と言って自分で稼いだお金で自分で購入したクッキーを配ってくれました。

センターのスタッフの方々の分、今現在通所している方々の分、そしてセミナーを担当しているウチの仲間の分も。

それだけ嬉しそうにしてひとしきり喜んでいた仲間がボソッとこんなことを言うのを聞き逃しませんでした。

「でも、どの時期のいつの回の利用者さんだったか私は思い出せないんですよね」と。

「いいんですよ、講師側が顔を覚えていなくても。だけど、いつか実施したセミナーがこうして実際に就職して働いていて“セミナーが役にたった”て思ってくれているんですから。役に立つことをしてるんです」

「そうなんですかね?」

「今、そうやって就職できたことや仕事をしていることをセンターの人達に感謝できるってことは、その人の人生は今まさに充実しているってことだと思いますよ。自分の人生が充実していると感じられなかったら“他者に感謝する”なんてできるわけありませんから。僕が顕著な例ですし」

「あ~、確かに」

「(確かに?)その人にとっての“初任給”の意味を考えるとすごく貴重な物ですよね」

「ホントに嬉しいです」

「その人みたいに、“他者のことを考えられる”ということを本当の意味でできるのは、その人が“自分の人生の主人公として生きる”ってことが今できているからなんじゃないかなと思いますよ」

「まさに、プロタゴワークスですな」

「そうですな」

その人が、今は“自分の人生の主人公として歩んで行っている”ということがわかっただけでも十分なのに、ものすごく貴重な初任給から“お礼”を買ってきてくれたなんて、本当に有難いことだと思っています。

どこにでも売っているチョコチップクッキーだけど、どこを探したって絶対に手に入らない「この世で唯一のチョコチップクッキー」をもらえるような仕事をしているウチの仲間は、誇張抜きに「本当に凄い人だ」と僕が心の底から感服し畏怖の念を抱いている人物です(こんな凄いことは僕には起きたためしがありませんし、今後もきっと起きないでしょう)。

そんなことがあって、とても嬉しいし誇らしい気持ちにはなりましたが、同時に、「こういうことも、どんどん過去にしていきましょう」とも思っています。

その人の人生がどんどん充実していって、いつの日か過去のことよりもその時の現在と未来に向けてリソースを活用するようになって、あの頃のセミナーのことを忘れてくれていいし、できれば早くそういう日が来たらいいんじゃないかと思っています。

僕たちは「主役から主人公へをサポートする」のが仕事です。

だから、僕たちは“その人”からしたら脇役です。単なるモブキャラです。と言うか、むしろ、作品中に登場しない“行間の存在”です。思い出してもらわなくてもいいんです。誰の記憶に残らなくてもいいんです。

もちろん、僕たちもすぐに忘れていきます。

だって、お互いに“今”が一番大事ですから。
そして、“未来”に向けて進んで行っている最中ですから。

彼は彼が主人公の、僕たちは僕たちが主人公の、人生の物語を進める。

もう二度とお互いの物語が交わることは無いかもしれません。「出会いと別れ」とか「一期一会」とか色んな言い方があるんでしょうが、お互いがお互いに「自分の人生の物語の主人公」として生きていきましょう。

そんな「主人公としての時間」を過ごしていたら、またいつかどこかで、お互いの物語が交錯する時が来るかもしれません。

その時は、「やあ久しぶり」なんて声を交わしつつ、お互いに「えーと、誰だったっけなあ?どこかで会ったことがあったような気が…」なんて気まずい空気を味わったりしてみましょう。

え?

普通はそうはならないだろって?

ああ、そういう空気になるのは僕たちだけかもしれませんね。

その時は、「ああ、主人公として生きていたんだなぁ」なんて思ってもらえたら助かります。だから先に謝っておきますね。ごめんなさい。



あかね

株式会社プロタゴワークス

https://www.protagoworks.com/

#ビジネス #仕事 #群馬 #高崎 #対話 #組織開発 #人材開発 #外部メンター #主役から主人公へ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?