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脂肪豊尻は死ぬ?〜脂肪豊尻する前に読むページ〜

小尻から大尻への嗜好変化?

Googleで「小尻」と検索してみてください。
お尻を小さくする対策やグッズで溢れています。
日本人女性は小尻を好む傾向がありました。

しかし生活の欧米化に伴い、ここ数年、
小尻嗜好の流れがほんの少しだけ変わったように思います。
外国人のような大きなお尻を好む人が増えてきたのです。

日本では、以前から大きな胸を得たい女性の数が一定数居たので、体の脂肪をお胸に注入する脂肪注入豊胸は、以前から人気の手術でした。
そのため現在、脂肪豊胸技術を応用して脂肪注入を始めるクリニックが増えてきています。

しかし「脂肪豊胸と同じ」という考え方には、
大きな大きな「落とし穴」があるのです。


1.脂肪豊尻は最も危険な手術

英国美容整形外科協会(BAAPS)は脂肪注入による豊尻術を「最も危険な整形手術」だとしています。
参考 BBCニュースジャパン https://www.bbc.com/japanese/45743674.amp

海外では3000人に1人が亡くなっており、死亡率の高い手術とされています。
飛行機で死ぬ可能性は20万5552人に1人(米国国家安全保障会議による)らしいので、かなり怖い確率ではないでしょうか??

2.脂肪注入豊尻はなぜ危険なのか

簡単に言うと、お尻の中を走っている大きな血管に
脂肪が詰まりやすいのです。

それを理解してもらうためには
①お尻の解剖、②脂肪豊胸の方法、
③脂肪豊胸の方法でそのままお尻に脂肪注入すると?
の3つに分けて説明したいと思います。

❶お尻の解剖

まずは軽く、お尻の解剖のお話をします。お尻には大きな血管が筋肉内を走行しています。「上殿動静脈」と「下殿動静脈」です。

上殿動静脈と下殿動静脈
グレイ解剖学アトラス原著第一版(エルザビア・ジャパン)から引用

この血管はとっても深く、静脈は4mm程度の直径があるとされています。↓

M. Mark Mofid et al: Report on Mortallty from Gluteal Fat Grafting: Recommendations from the ASERF Task Force , Aesthetic Surgery Journal 2017,vol 38(7) 796-806

この太い殿部な動静脈の血流は絶大で、この血管が栄養している大きな組織を切って持ち上げて、キズの上に移動して塞ぐという手術を、形成外科の領域では行われています。太い血管の血流は豊富なので、周りを切り離してもくっついてくれるのです。

閲覧注意: 手術動画です。大臀筋皮弁(7:51〜)

❷脂肪豊胸の方法は?

脂肪豊胸は multiple injection が推奨されています。乳腺内以外の全ての層に細かく入れていく注入方法です。一つの領域にぎゅうぎゅう詰めに押し込むより、いろんな部屋に少しずつ入れたほうが環境がいいですよね?

この注入の時、大胸筋等の筋肉の中にも脂肪を注入していきます。

筋肉は赤々としているイメージがあるかと思いますが、大きな筋肉を動かすためには大量の血液が必要ですので、脂肪の生着にとても良い場所になります。

脂肪豊胸は有名なColeman先生は、直径2mm以下の粒で細かく入れていくという方法を推奨しています。大きな塊で入れると、しこりのリスクが上がるためです。そのため、直径2mmのカニューレ(注入管)を使用することが多いです。


▶︎参照
PEPARS no.176 美容外科の修正手術 全日本病院出版会
Sydney R. Coleman et al :Fat injection :from filling to regeneration

❸脂肪豊胸を応用できない危険な理由

しかし、その方法をそのままお胸の注入に応用すると大変危険です。

血管が4mm > 2mmのカニューレ(注入管)
殿部の静脈よりカニューレが細いので、そのままお尻に使用して注入すると、静脈を突き破って血管内に脂肪を注入してしまうリスクがあります。

形成外科時代に、交通事故で骨盤付近から大出血をして命に関わる患者に対して、上殿下殿動脈を放射線科に頼み、血管からのカテーテルを使って殿部の動脈を薬で詰めて(塞栓術)止血してもらったことがあります。

その後、患者は救命できましたが、お尻は広範な組織の壊死(腐ってしまうこと)をきたし、その後何度かお尻の再建の手術を必要としました。

お尻の血管が詰まると、かなり重篤な結果に至ることがあり、海外では死亡例が度々報道されています。
リスクを避けるために「おしりにはおしりの脂肪注入の方法」があるのです。


3.安全な脂肪注入豊尻を受けるためには

M. Mark Mofid et al: Report on Mortallty from Gluteal Fat Grafting: Recommendations from the ASERF Task Force , Aesthetic Surgery Journal 2017,vol 38(7) 796-806

お尻の注入方法として大事なことは数々の論文にまとめられていますが
概ね以下が注意点となります。

①太いカニューレ(注入管)を用いる
  大きな粒で入れるとしこりのリスクは増えますが、安全性重視です。
②筋肉内には注入しない。皮下のみに注入する。
 お胸みたいに、定着のためにいろんなお部屋に入れることは難しいです。 
 どこに脂肪を入れますか?とカウンセリングで聞いてみてください。
③一回の施術で量を欲張らない
 多ければ多いほど詰まるリスクが増えます。
 海外の大柄な方々でも平均200cc-400cc程度です。
 参考:
  Beatriz N et al :Autologous Gluteal Lipograft, Aesth Plapt surg(2011)35:216-224
解剖をよく知るドクターに施術してもらう
 →ここが一番難しい…。

2023年の時点でも、「お胸と同じように注入する」と学会発表をしている脂肪吸引専門クリニックのドクターがおりました。とても危険な状態で手術を行なっているドクターがまだいるようです。

僕は形成外科医時代、日本で一番お尻の褥瘡の治療をしている病院で勤務していました。お尻の再建に解剖は必須知識であったので、現在でも常に解剖は意識しながら治療しています。

リスクを避けて安全に施術を受けていただくためには、患者さん自体が危険性を十分認識して、自分がこれからお任せしたいドクターがしっかりとした知識を持っているかどうか、カウンセリングをじっくり受けて判断していただくのが一番安全な方法です。


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