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スキャナー・ダークリー(2006)

麻薬が生み出す妄想世界の恐怖を描く
キアヌ・リーブス主演のフルCG長編アニメ

CGアニメ技術が急速に発達した2000年代、世界中のアニメスタジオが“世界初”をめざし、斬新さを追求したCGアニメ映画を続々と作り出しました。

本作はフルCG長編アニメーションですが、キアヌ・リーブスを主演に迎え、ほかにもロバート・ダウニー・Jr.やウィノナ・ライダーが出演しています。

本物の俳優が演じた実写映像をコンピュータで着色していく「ロトスコープ」という手法を用いて、本物そっくりのCGアニメ俳優が生み出されました。

奇抜なポップアート風の映像と、人生について語る哲学的なストーリーで話題を呼んだ『ウェイキング・ライフ』(’01年)のほか、『ビフォア・サンセット 恋人たちのディスタンス』(‘95年)、『6才のボクが、大人になるまで』(’14年)など、実験的な作品ながら高い評価を受けるクリエーター、リチャード・リンクレイター監督がユニークな映画を作り上げました。

フィリップ・K・ディックの人気小説『暗闇のスキャナー』をアニメ化しようという斬新な試みでもありました。これだけの俳優が揃うならば、本物の演技が見たいところですが、麻薬が生み出す妄想世界の恐ろしさをリアルに実感させるために、俳優の幻が演じているような感覚を与える映像は悪くありません。

【ストーリー】
近未来、カリフォルニア郊外の一軒家で3人の麻薬常用者が共同生活を送っています。家主のフレッドは、実はボブ・アークター(キアヌ・リーブス)という名の覆面麻薬捜査官であり、居候のジム(ロバート・ダウニー・Jr.)とチャールズ(ロリー・コクレーン)の行動を監視し、アメリカに蔓延している強力なドラッグ物質Dの出所ルートを調べる潜入捜査を行なっていました。
みずからもDを服用したフレッドが脳に異変を感じはじめたころ、上司のハンクから「ボブ・アークターを監視しろ」という不可解な命令を受けます。
しかし、捜査オフィスの監視カメラで自分も含めた3人の生活を監視すると意外な事実が浮かび上がります。

麻薬で命を縮めたディックの原作は、麻薬中毒患者の不毛な日々と悲劇的な末路を描くことが目的で、近未来SFは単なる体裁に過ぎない節があります。

原作に忠実な映画版でも、麻薬中毒者たちの与太話を淡々と描き出します。麻薬の一番の犠牲者ボブを演じたキアヌ・リーブスは相変わらず悩める男がよくはまります。お調子者でありながら抜け目のないジム役のロバート・ダウニー・Jr.はうさんくさい雰囲気を漂わせるのが本当にうまい! 実際の俳優の巧妙な演技を完璧に表現したCG映像に驚かされます。

麻薬に飲み込まれて行く人間の愚かさを滑稽に描きながら、最後に麻薬根絶の必要性を高らかに訴えます。

体に虫が湧く幻覚に悩まされる中毒患者や、ボブが捜査オフィスで着用する変幻自在のスクランブルスーツなど、強烈な映像はいくらCG技術が発達したとはいえ、実写映画では土台無理なものです。

奇をてらうだけでなく、意味のあるアニメ化といえるでしょう。

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【キアヌ・リーブスが伝説の殺し屋を演じる人気シリーズの最新作が2023年9月22日より公開】

ドロドロの裏社会で繰り広げられる強烈なアクションシーンに要注意

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