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キャリアコンサルタントの今後と生き残り方

この数年は、キャリアコンサルタント(キャリコン)以外に、精神保健福祉士、社会福祉士、臨床心理士(≠公認心理師)と言った資格者の方とお話しすることが多いのですが…

キャリコン、精神保健福祉士、社会福祉士(福祉)と臨床心理士(心理)の援助に対する考え方の違いは大きいなぁと毎度感じます。

例えば、精神保健福祉士や社会福祉士の方とお話しする場合、「具体的な援助」のシーンにおいて「○○という理論家が好き」、「××という理論家の理論を念頭に援助をしている」という話にはまずなりません。(バイスティックの7原則はベースとなる「理念」「規範」であって、個別具体援助の理論ではないため除外します)

これが臨床心理士の方だと、大抵「○○という理論家(臨床家)が面白くて、××先生(研究者)の考え方が好き」みたいな話になります。

(私が「エリクソンという臨床家が面白くて、森俊夫先生の考え方が好き」と、ことあるごとに笑 お伝えしているのをイメージして頂けると良いかと思います)

これも多分、「制度」としてレディメイドな援助をする「福祉」と、「個別対応」としてオーダーメイドな援助をする「心理」の違いなのかなと考えています。(そのあたりは下記エントリーでもどうぞ)

キャリコンの場合はどうでしょう。

「キャリコンは『福祉』より『心理』だ」と考えているキャリコンの方が殆どだと思います。しかし、制度的にはキャリコンは「福祉」です。

傾聴という「支援スタイル」は一見オーダーメイドなのですが、その実キャリコン(制度)は「(公共)職業能力訓練」というレディメイドサービス(を担うよう)に収斂していく『制度設計』になっているからです。

その根拠というほどでもありませんが、先ほどの研究者の例を使うと、キャリコンの方で、学科をきちんと勉強して(過去問だけ勉強して終わり、みたいな勉強ではなくという意味で)合格されている方であっても、だいたい通じる研究者と言えば

・渡辺三枝子先生
・宮城まり子先生

このお二人くらいなんですよ。(岡田昌毅先生は「だいたい通じる」にはちょっと厳しい…2級技能士レベル(つまり1割)ですね)

そして、このお二人も理論家・臨床家を「広く浅く紹介」していることが多く(「新版キャリアの心理学」はその典型ですね)、実際に特定の理論家の手法を研究し、臨床の場で活用した知見について、専門的な見解を講評しているかと言えば、そうではありません(実際はそうであったとしてもキャリコン業界での扱われ方はそうではありません)。

キャリコン業界で特定の理論家(臨床家)を研究されている研究者の例を挙げると、「シャイン」であれば「金井壽宏」先生が第一人者です。

が、シャインの理論が好きで良く使っている、というキャリコンの方であっても、金井先生のお名前をご存じの方は少ないのではないでしょうか。(蛇足ですが、キャリコン協議会のワークシートで、「キャリア・アンカーを2つ以上選ばせる」という、とんでもないワークシートを提供していたりするほど、何も理解していませんでした)

また、キャリコンの学習がきっかけでシャインを知り、そこから「シャインが好きで、金井先生の元で学んだ」という方は、いたとしても極めて少数でしょう。

ロジャーズが好き、というキャリコンの方でも、ジェンドリン(フォーカシング)までやる人は0.3%もいないし、ロジャーズが辿り着いた「プレゼンス」もご存じない方が99%…少ない?もっといる?いや、キャリコン6万人として、600人もいるとは到底思えません(1級技能検定の学科試験のレベルを考えると…)。

これは、勉強不足とかそういう話ではありません。誤解しないで頂きたいので二度お伝えしておきますが、これは、勉強不足とかそういう話ではありません。

プレゼンスを相談援助で実践するのであれば、それは確かに「オーダーメイド」なのですが、キャリコンは制度上「レディメイド」で設計(そして学習指導)されており、そこまで深くロジャーズを学び実践することを求められないからです。

そしてそれが、業界全体としてロジャリアンなのにロジャーズ理解が比較的浅い理由でもあります(ロジャーズ嫌いの私の方が、「知れば知るほど嫌いになるロジャーズ」を実践していますよね笑)。

あなたが相談援助を「福祉」ではなく、ロジャーズ派の「心理カウンセラー・セラピスト」として実践しているならば、勉強してもしてもし足りない、どうすれば『あの』(←オーダーメイドゆえに特定されます)クライエントは変容するのか、どんな「セラピー」を提供すれば『あの』クライエントは変容しうるのか…

臨床家として常にクライエントの顔を思い浮かべ、頭を悩ませているでしょうし、そのヒントがあると思えばどこにでも顔を出す、なんにでも手を出すはずです。

これはオーダーメイド性に基づいているがゆえに、ロジャーズをやるならジェンドリンやプレゼンスにまで手を出す・出さざるを得ないわけですね。

↓これが臨床好きのイメージ。
「臨床家なんてものは、どうしようもなく人が好きで、常に頭の中ではまだ見ぬクライエントと、まだ知らぬ困難な症例に立ち向かっているものだろうが!」

出典:蒼天航路

翻って個々のキャリコンの方のクライエント援助(とその考え方)を見れば、それが一見オーダーメイドであったとしても、キャリコン制度自体が最終的にレディメイドな援助に収斂する制度設計になっている以上、そこまでの探求心を持つ必要性が低く、求められてもいません(キャリコンの職場的にも「短時間」&「短期間」なかかわりが多いはず)。

結果、今のキャリコン養成講習の学習内容であれば、いずれは全てAIで代替できるようになると私は思っています。

おそらく(今の養成講習の内容のままならば)、これから「キャリアコンサルタント」が担えるのは

1.ハロワ職員
2.人材ビジネス(法律上キャリアコンサルティングの義務アリ)
3.学生向けキャリア相談

この3つの領域(1.2.は既得権益、3.は後述※)だけです。

レディメイドな支援は、AIが担うからです。

オーダーメイド足りえない、制度的援助に関する知識は、もはや全てネットに上がっています。なので確実にAIがクロール(するのかどうかは知りませんが笑)して学習していきます。

逆にオーダーメイドでしかできない、それこそ「プレゼンス」のような、援助の深奥的手法は、専門書などにしか書いていないし、書かれていることを学んだ上で実践しなければ身につかず意味がありません。

そういったオーダーメイドな援助については、AIは今のところ手を出していませんし、出したところでまだまだ「やれる」とはならないでしょう。

これがキャリアコンサルタントであっても、制度的枠組みから離れて「カウンセリングからセラピーへ」移行せざるを得ない理由です。

ちなみに、「職業能力開発促進法が目指す『理想のキャリアコンサルタント』」による社内キャリア相談は、早晩AIが担うようになるでしょう。

それは5年、10年と、社内にその個人の情報が蓄積されればされるほど、AIの方が最適な情報を提供できるからです(※逆に言えば、これが3.で述べた「学生キャリア相談がAIに不向きな理由」です。つまり学生は発達的にも未成熟であり、加えてデータの蓄積期間が短いからです)。

この記事をアップした後、岸田内閣によるリスキリング支援政策に「キャリアコンサルタントによる支援」が組み込まれました。

この結果、キャリアコンサルタントの「スキル相談(資格取得支援)」の担い手としての立ち位置が明確になり、レディメイドサービス、つまり「福祉的色合い(公的支援提供職)」が一層濃くなったことがご理解頂けるかと思います。

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