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CM以上の効果あり!制作費負担0円で20億円もの経済効果を生み出す~長崎県島原市役所シティプロモーション課の取り組み~

長崎県島原市役所のシティプロモーション課ロケツーリズム班で働く、佐藤元俊(さとうまさとし)さんにお話を伺いました。

—これまでのご経歴を教えてください。

佐藤:高校卒業後、長崎市内の専門学校を経て、かねてから希望していた地元の島原市役所に入庁しました。4月に勤続24年目に突入しました。

保険健康課での窓口対応、商工観光課での観光担当、政策企画課の情報システム担当・男女共同参画事業担当など、さまざまな部署での勤務を経て、平成30年には商工観光課から名称が変更されたしまばら観光課の所属になりました。そして、令和3年からは新しくできたシティプロモーション課ロケツーリズム班で勤務しています。

—部署名にもなっている「ロケツーリズム」とは何ですか?

佐藤:ロケツーリズムとは、映像作品のロケ地を訪れて地域のファンになってもらうことです。島原市長が飛び込みで参加した観光関係のセミナーでロケツーリズムを知り、その日のうちに島原市でもロケツーリズムをやることになったんですよ。

正直なところ、私は商工観光課でロケ対応業務を経験してきましたから、市長は今更何を言い出すんだと思いましたね(笑)東京の企業でロケツーリズムのノウハウを学ぶことになり、私がインターンとして派遣されたのですが、当時は「なんで俺が行かなくちゃいけないんだ、改めて学ぶ必要はないだろう」なんて思っていましたね。

インターン先では、映像制作会社を訪問したり、他の市町村のロケ対応や情報発信の仕組みを学びました。ロケ対応が何にどのように繋がるのかを知ると、これまでは自分が何もわかっていなかったことや、ロケ実績を観光誘客にまで繋げられていなかったことを思い知りました。

—仕事の内容を教えてください。

佐藤:私はロケツーリズム班で島原市へのロケ誘致やロケ対応を担当し、ロケ地を観光資源として、足を運んでもらうための仕組みを作っています。

まずは、受け身の姿勢をやめてロケ誘致を始めました。ロケ地になりそうな場所を選定し、映像制作者向けに「しまばらロケーションガイド」を制作したんです。観光パンフレットとは違う視点で制作したものなので、観光客にとっては面白くないはずです。でも、街中の風景や湧き水スポットなど、映像制作をする方々には刺さるものを制作しました。

誰に対して何をアピールするかは、インターンで学んだことのひとつです。今でもさまざまな映像制作者の方と意見交換をするために年に5、6回は東京に行き、ご意見をもとに常にバージョンアップをしています。

映像制作者の方を島原市にお呼びして、実際の街並みを見てもらうロケハンツアーも毎年実施しています。島原市民にとってはありふれた何気ない風景でも、東京の方から見ると島原にしかない素晴らしい風景だと思われることもあります。私たちも島原市をPRしながらも、魅力を再発見させてもらっています。

また、ロケを誘致したい市町村長とロケ地を探している映像制作者のマッチング会に、市長に同行して年に2回は参加しています。ここでは映画監督さんやテレビ局プロデューサーなど、いろんな映像制作の決定権を持っている方がいらっしゃるんです。この場で、映画『今はちょっと、ついてないだけ』のロケ地が島原市に決まったんですよ。

このほか、ロケに特化した全国紙『ロケーションジャパン』でも島原市のPRをしています。ポリシーは、作品の大小にはこだわらずにロケ対応させていただくことです。いくら大きな影響力のある作品でも、放送から時が経てば忘れ去られてしまうでしょう?ですから、大きな作品だけではなく、ローカルな旅番組やミュージックビデオ、YouTubeなど、いろんな作品を通して途切れなく情報発信していくことが必要だと思っています。

また、映像制作業界はさほど広くはありません。ですから、業界内でも評判は大切です。島原市としてきめ細やかなサポートをして、島原市のいい口コミが広まり、次の作品につながるといいですよね。

ひとつのロケが次のロケにつながるだけではなく、ふるさと納税にも効果をもたらします。映像作品に取り上げられたものは、必ずと言っていいほどググられます。それが、ふるさと納税返礼品の申込数にも影響するんです。

ですから、番組の企画書を見た時に、こちらから逆提案をさせていただくこともあります。島原市から売り出したいものやふるさと納税の返礼品になっているものなど、アピールしているんです。ロケで島原市が取り上げられて情報が紹介されるだけでなく、放送後に名産を売る仕組みまで考えて働いています。

—仕事のやりがいは何ですか?

佐藤:ロケで島原市がテレビに出れば、経済効果があります。令和2年度から広告換算を出しているのですが、少なくても毎年10億円、多い時では20億円ほどの効果があると分析しています。

全国放送の番組でわずか3分取り上げられるだけでも、相当な発信力です。我々がお金をかけて島原市のCMを制作するよりも、はるかに大きな効果があるのは間違いないでしょう。ロケツーリズムによって、お金をかけずに情報発信ができ経済効果がもたらされているんです。

ロケツーリズム班の働きによって、メディアで取り上げられた物が注目されたり、場所が賑わうのが嬉しいです。島原市民や地元企業がうるおってこそですから。ロケツーリズムの取り組みを広報紙で紹介しているため、市民の方から「最近テレビに島原が出ることが多いよね」と言われることも増えました。我々の取り組みの成果が伝わってきているのが嬉しいですね。

—課内外での協力体制はいかがですか?

佐藤:職員の考えを汲んでくれる上司が多いので、新しい取り組みを提案した時には「よし、やれ!」と言ってくれる体制です。仕事が非常にやりやすいんですよ。

課外の連携も取れていると思います。ロケ先に農家さんや漁協さん、観光地を選定することが多いため、農林水産の担当部署や観光課とは密に調整しながら業務を進めています。シティプロモーション課の仕事は誰かの力を借りなくては進められませんから、1人で仕事が完結することはまずないですね。

そもそもロケツーリズムについての情報を深める必要があると思いまして、庁内で理解を得るためにも我々の仕事をPRしています。まずは身内から味方を増やさなくてはね(笑)今となっては、役所の中でもロケツーリズムが浸透し、あの地域に行けばこんな風景が撮影できるとか、撮影に必要な小道具などの情報をもらえるようになりました。

—島原市のおすすめスポットや魅力を教えてください。

佐藤:島原にはたくさんの「映えるポイント」があります。島原鉄道の大三東駅は今間違いなく一番映えるポイントでしょう。そして、雲仙普賢岳噴火の際にできた平成新山というゴツゴツした山も個人的には一押しです。

そして、魅力と言ったら湧き水です。湧き水といえば山深い秘境にあるものというイメージがあるかもしれませんが、島原市には街中のいたるところに湧き水があります。24時間365日タダで水が汲めるので、島原では水を買う習慣がほとんどありません。島原では当たり前のことなので、市外の人から教えてもらって「島原ってすごいじゃん!」と思ったことのひとつでもありますね。

島原市は島原半島で一番大きな街ですし、九州での生活を楽しむ拠点として何不自由なく暮らせるいいところも魅力の1つです。湧き水があり、それで育ったおいしい野菜もあります。島原市から長崎や福岡だけでなく、フェリーで移動すれば熊本でショッピングも楽しめます。

まずは島原市を知り、訪れてみたいと思っていただけたらうれしいですね。そして実際に街の雰囲気やおもてなしに触れてもらい、島原のファンになっていただきたい。ロケツーリズム班の働きが、移住の入口となる機能を果たせたらと願っています。

この記事は2024年5月7日にパブリックコネクトに掲載された記事です。
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