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本当の親とは 核家族に見る現代の理想の親像

2021年、ライ・ルッソ=ヤングが監督・制作した「ニュークリア・ファミリー(核家族)」が公開された。このドキュメンタリーは監督自身のルーツを探る3話構成ミニシリーズで、リリースから大きな反響を呼んだ話題作だ。なぜこんなにも彼女の作品が注目されたかというと彼女の家族構成の複雑さ故だろう。(この記事は作品のネタバレを含みます。実際に見たい方はご注意ください)

(予告を見たい方は下から)


予告映像を見た方にお分かりいただける通り、彼女は同性カップルの元生まれた。またその当時米国において同性カップルにおける子どもをもつ権利が認められておらず彼女の両親は友人を介してある男性に精子の提供を呼びかけ、この男性との間に子どもを授かる。これこそ監督のライ自身だ。しかし彼女とその家族の人生は父親が本来持っていなかった親権を争うことから起こした訴訟によって変わってしまう。最終的に1994年、マンハッタンの州最高裁判所上訴部は、トムに当時13歳のライの父親としての法的地位を認めた。ただし、面会権については判決が下されず、結局トムは訴訟を取り下げることとなった。トムはこの後長きにわたる闘病生活から亡くなってしまう。

このドキュメンタリーは大岡越前の話にある「子争い」を彷彿させる。ある二人の母親が自分こそが本当の母親だと主張し、親権を争った際、江戸時代の名奉行が「子どもの腕を双方引っ張って本当の母親を決めなさい」と提案したところ、偽の母親は子どもの腕をひっぱり続けたのに対し本当の母親は痛がる子どもの腕を話したという話しだ。

本来であれば大岡越前の話のように子どもが不幸になるのであれば争いをやめようとするのが親のするべきことだろう。ただ実際の世界はもっと複雑だ。親権だけに限らず子どもの幸せを願って親が過干渉するが故に子どもの幸せや、自由や尊厳を奪ってしまうケースはいくつもある。

精子ドナーによって多様化する家族像

多様化する家族像は米国だけに限った話ではない。現在日本における病院で行われる精子提供は婚姻関係のある夫婦だけに限られており、しかも男性側の無精子症が証明されている場合のみだ。しかしそれでも同性カップル間の精子バンクの需要は高い。また近年では精子バンクはLGBTQプラス層だけに限らず、選択的シングルマザー層にもニーズが高まってきている。こういった流れを受けても今後家族像は多様化することが目に見える。

子どもを産むこと、子どもを守るや子どもの知る権利

同性カップルが子どもを持つことをエゴだという人がいる。しかし同性、異性に限らず子どもに生を授ける、という行為自体こそ親のエゴであるとともに権利でもある。子どもを守りたい、他社の監修なくして子どもとの卓越した関係を持ちたいと思うのも権利である一方、子どもが自身のアイデンティティーを確立させるうえで自分の過去や起源をしることもまた権利だ。

科学が進歩し多くの人の人権や自由が認められるようになったからこそこのドキュメンタリーに見られるような抗争は今後どんどん増えてくるとも考えられる。自分の子どもだけに対してだけでなく、人として正しいことをするのは容易ではない。しかし争いの果てにあるものがすべて納得できる未来ではないからこそ大岡越前の話に出てくるような真の親の優しさが問われているのかもしれない。

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