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傾聴する看護

近年AYA世代が増加傾向にあることが問題視されている。厚生労働省の癌に伴う悩みでは「今後の自分の将来のこと」や「仕事のこと」が大部分を占めていた。この世代は、就労期や育児期間が重なるため精神的負担が大きい。また、AYA世代の特徴として診療数が少なく、支援に関する経験や知識を蓄積しにくい。加えて、癌の腫瘍が形成される部位や悪性良性によって看護の方法が変化する。そこで、どんな状況でも活用出来る「傾聴する看護」が大切であり、患者にとって最善の医療を提供することが必要だと考える。ここでの傾聴とは、患者の生活背景や言動を患者の立場になって考えることである。
最初に、AYA世代の本人への看護である。癌の治療と妊娠や就労などのライフイベントを両立する自立したばかりの時期では、家族以外にも支援が必要な状況である。松本氏らは、「 AYA世代は、アイデンティティの形成を行いながら自己存在の意味についても模索していく時期である。 そのため、死への不安は将来への希望や自己存在の意義が揺らぎ、 生きることへの意味を見失う出来事に繋がると考える。」とある。今まで健康だった若者が、理解が追いつかないままの状態や理解しても受け入れない状態になるのは真っ当なことである。そこで、私たち看護師が寄り添い合い「傾聴」する姿勢が大切である。傾聴には、患者のほか
家族に対する看護も含まれる必要がある。
そして、AYA世代の自己存在の意義が、癌に脅かされた時最も重要なことは身近な看護師や家族が相談相手になることだ。その理由の裏付けとして、松下氏らの研究結果で、[がん罹患以降,日常的に「心の支えになってくれる人」が必要だったという者は 61.6%を占め,いつでも気楽にアクセスできて、相談したり話を聴いてもらえる人を必要とするがん患者は少なくないことが把握された。]と記述されている。これは聴くことに意味があるということだ。そして傾聴を取り入れることによって、今患者が必要としていることを考え選択肢を広げてあげることが大切である。看護師が傾聴していると同時に、家族も心的ダメージを負っている可能性が高いことを忘れてはならない。家族が患者の不安な気持ちを聴いているのと同時に、相乗効果により家族まで不安になる。その時に、傾聴した話や情景から安心できる情報を伝えることが大切である。例えば、良性で転移の少ない癌であれば情報を伝え安心させることも出来る。また、複数の治療方法があれば分かりやすくフローチャートを以て伝える方法がある。
最後に、傾聴する姿勢では患者の生活背景を考慮しその患者にあった支援の方法を模索する必要がある。だが、診療件数が少ないことが問題である。それ故に、その時患者がしたいことを会話の中から汲み取り、傾聴した情報と照らし合わせることによって傾聴という視点から援助する必要があると考える。

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