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北朝鮮と8月15日をめぐる葛藤

 コロナの陰にすっかり隠れているが、今年日本は戦後75年を迎える。広島に秋に行く予定があったのだが、昨今の事情からあきらめざるを得なかった。

 放心とまではいかないまでも、ぼんやりと机上のパソコンのモニタ越しに見えたのは、北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国の高麗航空のカレンダーで、8月15日が赤く祝日になっていた。

 韓国も同様である。

 韓国では光復節。北朝鮮では祖国解放記念日という。名前こそ違えども、いずれも日本からの独立を記念する祝日である。

 在日コリアンの友人と話していて、7月27日の次の祝日の話になった。7月27日は北朝鮮にとって戦勝記念日。朝鮮戦争に勝った日である。「いやあれは休戦…」とは言い難い。あくまで北側としては「勝った」。アメリカが白い旗を掲げて降参しに来た日としている。

 その次の祝日は9月9日、建国記念日(かつ我が家の結婚記念日でもある)という話をしたら、イヤイヤ違う。祖国解放記念日だというのだ。

 虚を突かれたというのはまさにこのことで、3秒ほどたって、ああそういうことかと得心した。

 日本側から見れば終戦なのだが、彼らからして見れば解放。文字にして見るとごくごく当たり前のことなのだが、同じ日本に住みながら物事の捉え方はここまで違うというわけだ。

 ここでぼくが沈黙を決め込んだため、若干友人との間には冷たい空気が流れたのだが、いつも通りのくだらない話に会話の流れは戻り少しほっとした。

 戦勝記念日も解放記念日も、ぼくたちの知っている、いわゆる日本の歴史観からすると、特に前者には?がつく。勝ちなのか。少なくとも膠着ではないのかという想いが去来するが、それを実際に口にするというなら、破たんを覚悟せねばならぬ。

 かくして沈黙なりスルーなり、しぶしぶ首肯するなり、それは相手の温度によって態度は異なるが、いずれにせよ煮え切らない態度をぼくは決め込むことになる。

 現地ならなおさらそうだろう。8月15日は外出の際に、少し緊張しなければならない。ソウルでも、平壌でも。

 戦勝記念日というところに「それは休戦」と言わず、解放記念日ということばに違和感を覚えつつもやり過ごし、歴史というのは立つ位置によってここまで違って見えて来るのかという当たり前のことを再認識し、けれど蝉の声は東京でも平壌でも変わらずうるさいということも再確認し、75回目の8月15日をぼくは迎える。

■ 北のHow to その70 
 終戦記念日なのか解放記念日なのか。引くところか、押すところか。迷うところです。日本人自ら解放記念日おめでとうというのも何だか違う気がするのですが、彼らにとっては記念すべき祝日。その日を現地で迎えたらどうするか。外出の際は少し言動にも気をつけないといけません。
 ぼくだったらスルーするか。ただ「おめでとうございます」というか。そのどちらかだと思います。

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