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看书:『トイレは世界を救う〜ミスター・トイレが語る 貧困と世界ウンコ情勢〜』(#3)

富士山にゴミ問題があるように、エベレストにも同様の問題があるようだ。登山家の野口健氏の活動で有名だが、実はエベレストにはトイレがないらしい。それは物理的な理由かもしれないが、多くが先進国から凍った”糞尿”を置き土産にされているようだ。
エベレストにおいて第一は生命の維持だ。衛生面はずっと優先順位が低い。
しかし雪山と同じく衛生面の優先順位の低い状態が世界に”へばりついている”。それは文化なのか宗教なのか原因は様々だが、やがてタブーとなり、なかなか取り除けないものになっている。

タブーとは、歴史でもある。中世欧州の城を囲うお堀は下水で、その臭い消しとして香水が出来上がった。中国では(主に男性トイレ)、トイレでタバコを吸い、臭いを消し、蝿を追い払うなど、類似の悪習などもある。トイレが肥料と通じていたのは、中国も日本も同じなど。
トイレが家にあること、それすらタブーな場所が世界には多数存在する。タブーや習慣は様々、だから、設置すればいいでは終わらない。実際広い土地があるのになぜ家にトイレが必要なのだ、と訝る資産家もいるようだ。
また、業界におけるトイレの偏りがあるという。例えばアメリカの陸運業。女性トラック運転手が使う女性向けトイレの絶対数が少ないらしい。
つまり設定はもとより、衛生等の“教育”が鍵となる。当然、ただ“ダメですよ”で聞くはずがない。大事なのは伝え方で、その土地に根付く潜在的価値観をユーモアなどを駆使し繰り広げていき、ムーブメントを興すことこそが進化を呼ぶのだという。実際、イスラム教は清潔さを重視しているため、イスラム教国のバングラディシュでは15年で屋外排泄する人口が34%から3%まで減少したそうだ。
それを実現させるために、大事なのは“人を巻き込む(=共感を呼び込む)ことで、それゆえ“自分の功績、ビジネス、仕事、究極的には自分のものではない”という。でも実際は多くの“エゴ”や“偽善”が蔓延り、政治利用されるとも。
それら経験の中で著者がどういった信条で判断していくべきか、衛生問題に関する書籍という面だけでなく、経営面からも示唆に富んだ一冊である。

今回の書籍

関心の深掘
・中国トイレ革命
・イスラム教 “Hadith”

気になるトピック・作品
『パッド・マン』(movie)
『ピリオド〜羽ばたく女性たち〜』(movie)
『Toilet: A Love Story』(movie)

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