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ヴァレンティノが表現したかったもの&日本文化への冒涜について4月1日“嘘っぽく”語る(#38)

多くの企業や学校が本日から新年度を迎えます。
“エイプリルフール”と呼ばれるまるで嘘みたいな本当の日に生まれた方々は義務教育における学年の大トリとなります。
でもなんで4月1日までなのか、不思議ではありませんか?
その答えをCanCamのWebコラムの中にみつけました。
法律上年齢が成立するのは誕生日の前日だから、だそうです。
なるほど、それで3月31日に年齢が成立する4月1日生まれまでがその学年に含まれるのですね。

CanCamは赤文字系雑誌と言われ、20代前半の女性向けに創刊されたものです。
その原点をしっかりフォローして頂いて有難い限りです。

さて、最近ヴァレンティノの広告が非難されているようです。
Kokiさんをモデルに起用し、日本向けに広告展開したものがその対象です。
動画はすでに削除されましたが、次々に生成され続ける始末です。

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着物の帯のようなものをカーペットないし敷物に見立てた行為が「日本文化への冒涜だ」というものです。
ヴァレンティノ社がそれを否定・謝罪するに至っています。


同社曰く、寺山修司監督『草迷宮』にインスパイアされたということでした。

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「そんな目くじらを立てることなのか?」というのが率直な感想です。
その理由とともに少し考察してみます。

ヴァレンティノ社が表現したかったこと=土台としての文化

着物の帯らしきものが傾斜の上から下へ、流れるように道を作っています。
その頂へを導かれるようにKokiがピンヒールでゆっくり上っていきます。

Kokiさんは日本人です。

同社は広告を通してそんな一人の日本人女性が日本文化の上を堂々と歩んでいく、そんな力強さ姿を同社アイテムとともに描きたかったのではないでしょうか。

翻ってこれが「冒涜」と捉えられたのはなぜでしょうか。

1. "着物の帯”らしき布が着物以外の使われ方をした(敷物に変わった)
2.  価値基準の前提=着物>敷物    
3.「踏む」という行為の悪読み

まず考えられるのは日本文化の象徴として着物が取り扱われていることです。
着物の帯らしき布が敷物に変わり、その上を“人が”歩くというより、布側からの視座で“布が”踏まれるという行為を重要視しています。
布側からすればヒトの思いなどよそに踏まれているという受け身表現が当て嵌まります。
それをピンヒールの女性に行なわれることで、SMの女王様と奴隷の関係にも似たエロティックな主従関係を読み取ったのかもしれません。
これがもしヨーロッパ出身の白人モデルだったら、尚更その色合いは強くなるでしょう。

またヨーロッパブランドが日本人を採用し、日本人によって日本文化を踏み躙らせているという穿った見方も出来なくないですが、その際踏み絵的意味合いが生じます。
ですが、何に対する忠誠で踏み絵に応じさせるのでしょうか。
その理由が全く見つかりません。

そもそも「冒涜」の大半は意図的に悪意が込められています。
悪意なき「冒涜」は無知ともいえますが、共通するのは道具が本来扱われるべき方法で扱われないことにあります。
たとえば“イスラム教の経典「コーラン」を焼く”ことは無条件に冒涜行為です。
なぜなら、「本が焼かれる」というのは本の道具的要素と行為が完全に逸脱しているからです。
また道具的要素から逸脱しなくとも誰かが大事にしているモノを粗末な扱いをされたら、冒涜になり得ます。
「本を焼く」行為はそのどちらにも含まれます。

それゆえ今回「我々の大事にしている着物を粗末に扱われた」と読み取ったのかもしれません。

ですが、殊、着物に関して言えば、どのくらい身近で大切な存在なのでしょうか。
些か疑問を残すところです。

最終的には個人の感性の問題だけれど、“日本文化”って玉石混交じゃないの?

しかし最終的には感性の問題です。
多くの日本人が不快感を覚えたのなら、それは冒涜されたといえるのかもしれません。
ですがSNS上の“ノイジーマイノリティー”である可能性も否定できません。

ところで、どんなに愛用して大事に扱っている手縫いの革靴もその靴底は履く人によって踏まれています。
日本語ではこれが“履く”の中に含まれています。
その靴で誰かの敷いた道や清掃された場所を歩いています。
モノの立場に立つのなら、靴も道もヒトに蹂躙されているのかもしれません。
ですがモノがどこにあるから冒涜されたではなく、どこにあっても「神が宿る」のが日本文化ではないでしょうか。
上も下もなく、玉石混交で、平たく、共存する――だから冒涜等々ガタガタ言わない方がよっぽど日本文化っぽいとさえ言えます。

ヴァレンティノにとって大切なのはブランドイメージであり、見込み客です。
ただそんなヴァレンティノへ失望した人の中でどれだけ見込み客がいたのだろう、そう思う次第であります。

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