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黒い口のアメリカは“明暗”を分けるか?(#20)

前回の記事に引き続き、カマラ・ハリス上院議員の衣装に注目しました。
彼女はバイデン候補の勝利宣言の会場に仕立のいいアメリカブランドの白のパンツ・スーツ姿で登場しました。
アメリカ議会において女性議員が着るスーツの“白”には特別な意味があるようです。

アメリカと色の関係

壇上に近づき、徐にマスクを外し、演説を開始します。
バイデン陣営は選挙活動を通じてずっと“黒”のマスクを使っていました。
当然、ハリス上院議員も同じ黒いマスクを使用していました。

黒色のマスクのルーツは韓国にあるとも日本にあるともいわれていますが、10年ほどの歴史があります。
予防用というわけでなく、ファッションアイテムとして主に若者に使われていました。
ただマスク自体が現在ほど使われていなかったため、やや悪目立ちしていた印象があります。
※下記写真 BTS(防弾少年団)メンバー

布で顔を覆うという点では黒いニカーブのムスリマ(女性のイスラム教徒)が以前から認知されています。

おそらく白いスーツに狙いがあったように黒いマスクにも狙いがあるはずです。
ちなみに白は無垢潔白正義といった言葉が連想される色です。

実際バイデン陣営が“多様性”という点を強調しているので、人種・宗教等々様々な意味が込められているのかもしれません。
ただ今回はマスクの色よりも使用そのものに関心が注がれているような気がします。


明:喪黒福造の歯

ところで喪黒福造という人物を御存じでしょうか?
藤子不二雄Ⓐのブラックユーモア漫画『笑ゥせぇるすまん』の主人公です。
※ 以下写真 「たのもしい顔」より

“老若男女、この世は心の寂しい人ばかり。そんな心の隙間を埋め、あらゆる細やかな願いごとをボランティアでかなえるセールスマンがいた。その名は喪黒福造。黒ずくめで常に笑みを浮かべる不気味な雰囲気を醸し出し、「お客様」に該当する人物を見つけると、その「ココロのスキマ」を埋めるためのサービスを提供し、それに伴う「約束事」を厳守するように促す。提供されたサービスを実行し、その「ココロのスキマ」が埋まると、「お客様の満足」となって喪黒の報酬となるのであった。しかし、約束を破ったり、欲張って更なるサービスを要求してきた、などの「お客様」に対しては「契約違反」とみなし、ペナルティとして人差し指で「お客様」に向かって指を差し、「ドーン!!!!」と叫び、破滅に追いやるのであった。”
ー 引用 Wikipedia “笑ゥせぇるすまん”より

彼の顔は大変不気味ですが、その不気味さを強調しているのは彼の“白く綺麗な歯”です。
またセールスマンという点で“笑み(愛想よさ)”と“口(喋り)”を強調的に描いているため口が大きく、また歯が隠れることはありません

だから、顔のサイズと較べてやや大きい白いマスクをしている人をみたとき
“喪黒福造”のように感じる瞬間があります。

ふと喪黒福造をお歯黒にしたらどうなるだろう、そんな考えが頭を過りました。
黒いマスクをしたように映るのでしょうか?

・・・ドーン!!!

暗:お歯黒

お歯黒とは文字通り、歯を黒く染めることです。
由来は多説ありますが、8世紀に朝鮮半島から伝来したといわれており、元々は貴族の嗜みの一つでした。
成人になった際の通過儀礼として性別を問わず行われていき、時代の変遷とともに低年齢化していきました。
江戸時代中期になってはじめて上流社会の生活様式が庶民にも浸透し始めました。
いわゆる元禄文化です。
その頃には男性のお歯黒は姿を消し、女性だけのものとなりました。
このお歯黒にすることはどうやら相当骨の折れる仕事だったようです。
ですので女性が人生の転換期として婚約・結婚を迎えてはじめて染められるような、お歯黒=既婚の象徴となりました。
また黒は何色にも染まりません
それゆえ“貞操”を示唆して既婚女性の誇りにもなったようです。
実用的な意味では虫歯予防に効果がありました。これは意外ですね。

そんなお歯黒姿で芸者は白粉で肌を真っ白に塗っていました。
しかし実はこの白粉、ファンデーションに変わるまで日本のみならず世界のベースメイクの主流でした。
(※変更を余儀なくさせたのは健康面の理由、洋の東西を問わず、肌をより白くするため使用されていた“鉛”の毒性を避けるため)
尚、化粧の文化はギリシャ文化の時代まで遡り、同じように時間の変遷とともに貴族から庶民へと広がっていくのでした。
つまり、美意識としての“白”が誕生した瞬間ともいえます。

白も黒も明暗を分けない

数年前の大晦日にダウンタウンの浜田雅功さんがエディ・マフィを模して顔を黒塗りした「アメリカンポリス」について思い出しました。
   当時BBCやCNNなどが取り上げ差別的だと非難し、後日、日本テレビが謝罪する運びとなりました。
これは19世紀以降、アメリカで人気を博していた「ミンストレル・ショー」に起因するものです。
顔を黒く塗った白人が、黒人役を演じていました。
公民権運動などを経て、これが「人種差別的だ」とされ、廃れ、今では黒塗り=「差別的行為」という評価が定着していったようです。

ですが、アメリカにおける黒マスクはムスリマのニカーブ、ミンストレル・ショー、“悪目立ちするファッションアイテム”とも一線を画しています。
それどころか、一気に飛び級した印象すらあります。
ただマスクにせよ、スーツにせよ、それぞれが純粋に綺麗な色として評価され使われたら、もっといいのかもしれません。
“彼は誰時(=夜明け)”と“誰そ彼(=黄昏)時”の自然で、儚く、不確かな彩のように。

“男性”の喪黒福造がお歯黒したっていいのかもしれませんね、オーホッホ、、、。

頂いたものは知識として還元したいので、アマゾンで書籍購入に費やすつもりです。😄