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6000年の間に煮詰まった愛に心打たれる…『グッド・オーメンズ』で描かれた天使と悪魔が理想的すぎた

皆さん、スパダリはお好きですか。
正式名称はスーパーダーリン。

大事な人がピンチとあらば、即座に駆けつける。
困った時はいつも側にいて、なんだかんだ言いながら絶対に助けてくれる。
言葉で伝えきれない部分は、ちゃんと行動で示してくれる。
まさに、包容力と愛のかたまり

そんなスパダリによる愛の矢印にキュンと来る!という方は、ぜひとも『グッド・オーメンズ』を観るべきです。


左が天使、右が悪魔


『グッド・オーメンズ』は、あの『シャーロック』シリーズで一世を風靡した、イギリスBBCが贈るAmazonプライム限定配信ドラマ

このドラマに出てくる主人公の一人が、超スタイリッシュな、スパダリ+イケオジ悪魔である「クロウリー」です。
もう一度言いますが、彼は悪魔です。
いつもサングラスをかけていますが、外してみるとその瞳は黄金の飴玉のよう。
エデンの園でアダムとイヴを誘惑した蛇も、彼が変身した姿(という設定)です。

『原罪と楽園追放』ミケランジェロ

悪魔なので、基本的には悪事をそそのかすのが彼の仕事。
ただし、相手が大切な人の場合は話が別です
その人に電話で呼ばれたらご自慢のベントレーをかっ飛ばして会いに行くし、少々無茶な要求でも何とか叶えてあげようとします。

そんなスパダリクロウリーからの愛を一身に受けるのが、もう一人の主人公である天使のアジラフェル
クロウリーとは、天地創造から現在に至るまで、なんと6000年間の付き合い!!

アジラフェルは、天使九階級における七番目の階級の「権天使」ですが、エラそうな雰囲気は一切なく、見た目に違わずほんわかとした優しい性格です。
天上界と人間界と行き来する内に、人間界にすっかり馴染んでしまい、現在はロンドンで書店を営んでいます。


キリスト教における天使の階級
『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』より


彼は天使なので、基本的には善行を広げるのが仕事です。でもたまに誘惑に負けてしまったり、後先を考えずに行動したりしてトラブルが起こることもしばしば。

そんな時にいつも助けに来てくれるのが、親友である悪魔のクロウリーなわけです。


そこで今回は、クロウリーによるアジラフェル救出劇をいくつかまとめて紹介します。
本編のネタバレが含まれますので、気になる方は回れ右をお願いいたします。
ドラマを視聴された方は、ぜひ思い出しながらご覧ください!



●1793年/パリ

『民衆を導く女神』ドラクロワ


当時のパリは絶賛革命中で、ギロチンが落ちる音に民衆が歓声を上げていました。
貧しい民衆による、貴族への不満が爆発した時代です。

そんな血なまぐさい時代に、アジラフェルはなんとバスティーユ牢獄に投獄されてしまいます

その理由は、「小腹が空いたからクレープを食べるために貴族に扮してパリにやってきたところを捕まってしまった」…。
なんというドジっ子。

あやうくギロチン台に連れていかれる直前、背後からスッと現れたクロウリーに助けられます。

危機意識の低いアジラフェルに、クロウリーはイライラして「なぜ奇跡を使わないんだ!」と詰め寄ります。(※二人共奇跡を起こせる)

「奇跡を起こしすぎるなと、上司から通達を受けてるから…」とアジラフェル。
感謝を伝えようとすると、
「やめろ、天使を助けたと仲間に知れたら困る。俺の場合バレたら通達どころじゃ済まない!」とクロウリー。

最終的には、アジラフェルが「お礼にランチを奢るよ。クレープはどうかな?」と誘って、一件落着しました。


●1941年/ロンドン

時代は変わって、第二次世界大戦中のロンドン。
当時のロンドンは、ナチス・ドイツから激しい爆撃を受けていました。「ロンドン大空襲(ザ・ブリッツ)」の名で知られています。

そんな時代に、アジラフェルはとある薄暗い教会で、預言書をナチスに渡していました
これはナチスを捕えるための作戦で、アジラフェルはイギリス軍諜報部に協力していたのです。

ところが、信用していたイギリス軍諜報部の人が、実はナチスのダブルスパイだったため、思いがけず拳銃を向けられ絶体絶命に

そんな時に、突然クロウリーが教会に入ってきました。
教会は神聖な場所なので、悪魔のクロウリーにとっては「砂浜を裸足で歩く」ようなものだそう。
「なんで君がここに」とアジラフェルが聞くと、「お前を助け出すためだよ!」と一言。 

その後クロウリーの奇跡によって教会の真上で爆撃が起き、ナチスたちは教会もろとも吹き飛ばされました。
しかも、アジラフェルを助けただけでなく、アジラフェルが大切にしている予言書までも、クロウリーは爆撃から守ってくれていました。(イケメンすぎ)

助かったアジラフェルが「優しいんだな、君は…」と言うと、「うるさいッ」と冷たく一蹴されます。

クロウリーは、アジラフェルに「優しい」と言われる度に、強い口調で否定するんですよね。
もちろん照れもあるのでしょうが、実際彼が優しいのはアジラフェルに対してだけなので、「優しいから自分を助けてくれるんだな」と思われるのは不本意なのかもしれません。

皆を平等に愛そうとするアジラフェルと、大切なのはアジラフェルだけで、それ以外のことは究極どうでもいいと思っているクロウリー。
この二人の違いが味わい深いところです…。

アジラフェルに予言書を手渡しながら、
「…悪魔の小さな奇跡だ。乗ってくか?」
と言って愛車のベントレーに向かうクロウリーのカッコ良さたるや。
これにはアジラフェルも、「ふわぁ…」と見惚れています。(※私の目にはそう見えた)

いや〜これはずるいですよね。
自分の大切なものを大切にしてくれる人って、それだけで好感度爆上がりします。

この1941年が、アジラフェルがクロウリーに明確に好意を抱いた瞬間だと私は勝手に思っています。


●現在/アジラフェルの書店が火事に

シーズン1のエピソード5にて、アジラフェルの経営する書店が火事になります。
もちろんクロウリーはベントレーに乗って爆速で駆けつけます。

書店に着いた時には既に火が回り、本の山が焼け崩れていました。
アジラフェルの所在が分からないクロウリーは躊躇なく中に入り、アジラフェルの名前を呼びます。

「アジラフェルっ!!!アジラフェル、どこにいるんだバカヤロー!!アジラフェル…!あぁ神、サタン、あぁぁぁ誰でもいいから奴を助けろォ!!」

いつもクールでスタイリッシュなクロウリーが取り乱して、ごうごうと燃える書物に囲まれながらそう叫ぶのを見ていると、彼の必死さが伝わってきて胸がギュンとなります。

バックで流れてる、QUEENの「Somebody to love」もいい…。

アジラフェルを失った(実際は無事だったけど)と思い込んだクロウリーが店から出てきて、割れたサングラスを片手に、
「道路に捨てちゃダメかなぁ?いや捨てるべきか、悪魔なんだし。」
と投げやりに捨てるシーンがすごく格好良くて好きです。


●現在/悪魔の王サタンと対峙して

ダンテ『神曲』地獄篇の挿絵。
ギュスターヴ・ドレ作

シーズン1のクライマックスで、二人の前に地獄の王サタンが現れます。

黒々とした大きな体に、大きな翼。そして恐ろしい顔。
これまでは、「ピンチに陥ったアジラフェルをクロウリーが助けに来る」というシチュエーションが圧倒的に多かったですが、ここに来て二人同時に絶体絶命に追い込まれます。

サタンの恐ろしさを知っているため、流石のクロウリーも弱気になり、「俺達はもう終わりだ、会えてよかった」と言って最期を覚悟します。

そんなクロウリーに対して、アジラフェルはどうしたか。

「何か考えないとっ、もう君と話さないぞ!!」
と脅したのです。

…こいつ、自分がめちゃくちゃ好かれてることを自覚している…!
アジラフェルの目論見(?)通り、クロウリーは一瞬逡巡した後、全力パワーで悪魔の力を開放します

「もう君と話さない」と言われて頑張っちゃうクロウリーもクロウリーですが、自分への好意を分かった上で、全力でそれに甘えようとするアジラフェルの強かさが大好きです。

シーズン2では、アジラフェルが、
「彼(クロウリー)は、私を助けたいんだ♪」
と堂々と言い放つシーンがあり、私は崩れ落ちました。
これはむしろ、アジラフェルの方が子悪魔なんじゃないか…?


●現在/謝罪ダンス

シーズン2では、記憶喪失になった天使、ガブリエルが突然ロンドンにやってきます。
ガブリエルは元々アジラフェルの鬼上司で、あろうことかアジラフェルを始末しようとしたこともありました。

決して仲良しとは言えない間柄ですが、アジラフェルは彼を見捨てようとしません。
書店で匿ってあげようと、クロウリーに相談します。

これにはもちろんクロウリーは大激怒
アジラフェルとの平和な生活を邪魔された上に、その邪魔者の面倒を一緒に見ようなんて言われたら、確かに堪忍袋の緒が切れますよね。

「俺に必要なのは、奴が近くにいないことだ!そしてここで築き上げた、平和で壊れやすい生活を守ることだ…!」
と正直に本心を伝えます。

これに対してアジラフェルは、
「そうか。私を助けたくないと言うんなら、もう帰ってくれていいよ」
とへそを曲げます。

こ、このわがまま天使め…!!

クロウリーは怒って出ていきますが、ガブリエルをうまく匿わないとアジラフェルが危険な立場に置かれることを知り、やはり手を貸したい気持ちを抑えきれずに戻ってきます。

アジラフェルはツンとした態度で、「ちゃんとした謝罪をしてほしい、ダンスしながら。前に私も踊ったよね」と要求(?)

仕方なく、
「お前が正しいお前が正しい俺が間違いお前が正しい〜♪」
という謎の謝罪ダンスを真顔で踊り、無事に許してもらいました。

その後二人で協力して何とか事態を収拾しようと奔走するのですが、やはり冒頭のこのシーンが、プライドをかなぐり捨ててもアジラフェルを助けようとするクロウリーの熱意を感じて、私はぶっ倒れてしまいます。


プライドの高そうな悪魔が完全に天使の尻に敷かれながら、全身全霊をかけて守ろうとする…
どの世界でも、「惚れたが負け」ということなんでしょうか。


今回紹介した箇所以外にも、スパダリ悪魔と甘え上手な天使の尊いシーンはたくさんあります。

おねだりに負けて大切なベントレーを貸してあげたり、パブで他の男に声をかけられたアジラフェルにスマートに助け舟を出したり、服についたペンキを奇跡で消してやったり…。

この時、嬉しそうにウインクしたり、ほっとした表情を見せたり、はにかみながら「ありがと」と言ってクロウリーを見上げたりするアジラフェルが、あまりにもあざとい。

特に「ありがと」の破壊力はすさまじく、しばらくボーッと上の空になってしまうクロウリーの気持ちも分かります


いつ何時でもアジラフェル救出に忙しいクロウリー。
本作は恐らくがっつりBL(ボーイズ・ラブ)作品、という建付けではないですが、6000年もの時を経た二人の関係には、ゆっくりと煮詰まった深い愛情があります。


●おまけ/天地創造

最後におまけで、私のイチオシシーンを少し紹介します。

それは、他でもない二人の出会いのシーン。
かつて天使だったクロウリーは、宇宙空間で星雲を作っていました。

そこをたまたま通りかかったアジラフェルは、美しい星雲が出来ていく様子を一緒に眺めることに。

クロウリーは星雲を見て、
「すごいぞ…お前は綺麗だ」
と呟きます。
アジラフェルはその呟きを聞いて、嬉しそうにふわっと羽を広げます。
ところがクロウリーが自分ではなく星雲の方を見ていると気づくと、気まずそうにシュンと羽が下がるんです。

後にスパダリになるクロウリーですが、この時はまだアジラフェルへの態度はドライで、どちらかと言うとアジラフェルの方が相手に好印象を抱いている感じです。

後々の二人の関係を知っている身からすると、「こんな時期もあったのか…」と感動すら覚えますよね。


余談ですが、『グッド・オーメンズ』にハマったことをきっかけに、天使悪魔グッズを集め始めました。

ポストカードは、kei saitoさんという方のデザインです

元々、正反対の白黒バディは大好きでした。
『NANA』の大崎ナナと小松奈々、『ウェンズデー』のウェンズデーとイーニッドのような。

でも、天使と悪魔というモチーフの魅力を知ったのは『グッド・オーメンズ』がきっかけです。
歴史的、文化的にかなり深みのあるモチーフだと思うので、本を読みつつぼちぼち勉強していきたいと思います。

好きなコンテンツから趣味が広がっていくのって、あらゆる界隈のオタクによく見られる傾向ですよね…。


今回は、ドラマ『グッド・オーメンズ』について語ってみました。
もう一回見直したい!見てなかったけど見てみたい!と少しでも思っていただけたらめちゃくちゃ嬉しいです。

読んでくださりありがとうございました。
ではまた次回〜。

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