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【現地リポート】日本史講師が”歴史フェス”に潜入!!

皆さん、こんにちは。
日本史講師のSatoです。
今回、私は2024年3月17日に名古屋大学東山キャンパスで開催された”歴史フェス”に潜入してきました。
その模様をお届けしたいと思います。


”歴史フェス”とは・・・

歴史フェスは、歴史に関心のある人が一つの場に集まって、ともに歴史を楽しむお祭りです。
(歴史フェス公式HPより)

歴史研究者や社会科(日本史・世界史)教員のみならず、歴史を楽しみたいすべての人が一緒に歴史(学)について考えたり、情報共有したりするという新しい場を切り開いたイベントといえると思います。
そんな、”歴史フェス”のプログラムを紹介したいと思います。

プログラム

☆全体シンポジウム
 「歴史フェス、はじめました。これからどう
  する?」

☆第一部
 ◎セッション(同時開催)
  ・「歴史創作の現場に聞く!佐藤二葉
   『アンナ・コムネナ』と歴史考証」
  ・「地震資料の利活用を考える in 東海 ー
    みんなで翻刻と減災古文書研究会の
    取り組みー」
  ・「デジタルアーカイブを使いこなそう!
    -アジア歴史資料センターの魅力と
    活用法-」
  ・「未来は明るい!?〜歴史学系学生の
    キャリア形成をめぐって〜」

☆第二部
 ◎セッション(同時開催)
  ・「歴史研究者の若手支援現場に聞く!
    歴史家ワークショップの活動紹介」
  ・「いま、考古学3Dが熱いーその概要と
    実践」
  ・「歴史教育と研究で生成AIをどのように
    使うか?」
  ・「真夜中の補講・特別編 ネガティブな
    歴史を、地域の力に変える?!」
(歴史フェス公式HPより)

シンポジウム・セッションに潜入!!

今回、私は全体シンポジウム「歴史フェス、はじめました。これからどうする?」とセッション「未来は明るい!?〜歴史学系学生のキャリア形成をめぐって〜」・「歴史教育と研究で生成AIをどのように使うか?」に潜入してきました。

☆全体シンポジウム「歴史フェス、はじめ
 ました。これからどうする?」
ここでは、今回初めての開催となった歴史フェスを今後どうしていくかについて、フランスの歴史集会の事例をもとに参加者全員で考えました。
歴史研究者・社会科(日本史・世界史)教員・歴史を愛する市民というそれぞれの視点から多様な意見が述べられ、とても有意義な時間になったのではないかと思います。

☆セッション「未来は明るい!?〜歴史学系
 学生のキャリア形成をめぐって〜」
世間では「大学で歴史を学んでも食べていけない」とよく言われます。
これは、歴史関係の仕事は多くないようにも思えることからきているのでしょう。
また、歴史関係の代表的な仕事として挙げられる研究者・学芸員・自治体の文化財担当職員・教員はそれぞれ独自の問題を抱えていることも一因かもしれません。
まず、研究者や学芸員は狭き門。
仮に実力が十分にあったとしても、ポストが空かなければ募集されませんから、それらの職に就くことはできません。
次に自治体の文化財担当職員ですが、研究者や学芸員よりはマシかもしれませんが、こちらも募集人数が多いとはお世辞にも言えません。
最後に、教員は皆さんご存知の通り、長時間労働問題などを抱えています。
こうなってくると、「歴史関係の仕事は私には無理かも」と思う人が出てくるのも当然のことといえるでしょう。
しかし、諦めるのはまだ早い。
このセッションで示されたことの一つに、資料の保存・継承・活用を業務とする民間企業の存在がありました。
私はこれを知ったときに、「こんな企業があるのか」と驚きました。
それと同時にこのような企業の存在感がもっと増せば、「大学で歴史を学んでも食べていけない」という世の風潮を打ち破れるのではないかと思いました。
新たな可能性を感じたセッションでした。

☆セッション「歴史教育と研究で生成AIをどの
 ように使うか?」
今や当たり前のように認知されているAI。
われわれの生活にもどんどん影響を及ぼしてきています。
教育の現場や研究の最前線もその例外ではありません。
このセッションでは、歴史教育と歴史研究における生成AIの活用方法について報告者とフロアの皆さんで検討しました。
歴史教育のパートでは、生成AIを活用した授業実践の事例として、中学校の探究の授業と高校の古典探究の授業が報告されました。
いっぽう歴史研究のパートでは、歴史研究における生成AIの活用実践についての報告が行われました。
このセッションによって、生成AIの明確な長所・短所が参加者全員に共有され、こちらも有意義なセッションになったと感じました。

まとめ

今回の”歴史フェス”という新たな試みですが、とても良いなと思いました。
純粋に楽しかったということもあるわけですが、やはり特筆すべきなのはそのカジュアルさです。
私もしばしば歴史学の研究会などにお邪魔させていただいておりますが、こんなにカジュアルなイベントは初めての体験でした。
研究者や大学生でない人が学会や研究会に行くのはなかなか心理的ハードルが高いでしょうし、ましてや懇親会はもっとそうでしょう。
(私は研究会には参加することもありますが、懇親会は恐くて出たことがありません。)
それに対して、この”歴史フェス”にはそのような心理的ハードルはありませんでした。
そんなカジュアルさをもった”歴史フェス”の第2回が開催されることを祈って、この記事を締めくくりたいと思います。
実行委員の皆さん、ありがとうございました。

【ついでに】間口を広げることの重要性

ここからは延長戦です。
この”歴史フェス”の画期的な点は、歴史(学)の間口を恐れずに広げたことにあると私は考えています。
間口の拡大はリスクをはらむ一方で、とても重要なことだと思っています。
それは、学問はそれに携わる人が少なくなってしまうと、規模が縮小してしまうからです。
ましてや、日本は人口減少社会です。
何もしなければ、歴史学の規模もどんどん縮小してしまうでしょう。
歴史学を守り、存続させていくには歴史に関心をもつ人を増やしていかなければならないのです。
その点、この”歴史フェス”はその大きな一歩だったのではないかと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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