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【嘘のような、ホントの物語】#6 〜 不思議な力を持つ娘 〜 誕生まで 〜








しばらくの間、無料公開しています☆

前回までのあらすじ
40歳を目の前に、カンボジアで働いていた私。1年ぶりに訪れたタイで、友人との再会。友人から恋人へ関係が進展し、私はタイを後にした。その数週間後に妊娠が発覚。カンボジアでの高齢出産する覚悟を決め、その準備のため、妊娠15週で羊水検査をするために一路バンコクへ。一日がかりで陸路で国境を越え、バンコクで病院へ向かったが、検査が翌週に延期になってしまい、彼の寮や実家でお世話になっていた。そんな矢先、彼な母親の年齢を知り、、、







∞ お母さんは同学年

これは、触れない方が良いのだろうか?

一瞬のうちに、いろんな考えが脳裏を駆け巡っていた。

お母さんは、今日で40歳。

そんなぁ、、、同学年じゃん、、、

私は早生れで、来年の3月に40歳を迎える。

4本のロウソクが、ケーキの上に立っていた。

彼は、ロウソクに火を点け、居間の電気を消した。

ハッピーバースデイの歌を口ずさみながら、彼とお義姉さんがケーキを持って、お母さんのもとへ向かう。

私も、その後ろに続いて進み、驚きを押し殺しながら、誕生日の歌をみんなと一緒に歌った。

お母さんは、この上ない笑顔を見せて、目には嬉し涙がにじんでいた。

今は、お母さんを祝おう、それ以外のことは後で考えよう。

そう自分に言い聞かせて、その日は彼に確かめるのはやめにした。

彼は、一体いくつなんだろう。

それが分かるまでには、あまり時間はかからないかも、しれない。彼がパスポートを作りたいと話していたからだ。

彼は、いったい私をいくつだと思っているんだろう。

その時は、心の中のザワザワが、まだ止まらないでいた。

∞ 今夜は、ロイクラトン

-----翌朝。

1階の居間で、朝ごはんをいただきながら、彼のご両親の話を聞いていた。

パスポートをつくるのに準備が必要なものを、お母さんが知り合いに聞いてくれていた。

バンコクなら、センタンバンナーにパスポートセンターがあるから、ID持っていけば良いって。後は何もいらないらしいよ。

えっ、そんな簡単なのかしら、、一抹の不安を覚えながら、彼に念の為確認した。

写真、準備しなくていいの?するなら今日しかないよ。

彼は、大丈夫、大丈夫。と。

いつものように楽観的でなのである。

タイのことは、私がとやかく言っても仕方がないから、それ以上口を挟むのはやめて、食事を堪能した。

不思議なほど、つわりが全くない。妊娠って辛いもんだと思っていたけれど、少し眠いくらいで、妊娠している感じがしない。

それにしても、お母さんの料理は、美味しい。
私にも食べられるように、辛味を控えてくれていた。

実は、彼がいた島の、ゲストハウスにあるレストランで、お母さんも働いていたのだそうだ。

そして、お母さんも私を覚えていた。

そんな事ってあるんだな、あんなにたくさんの観光客が来る島で、私が滞在したのは僅か数日なのに、、、

そう思うと、何か、縁のようなものを感じずにはいられなかった。

お義父さんは、明朝、島に戻ると言う。島のホテルで、働いているらしい。

今夜ロイクラトンに行くけど、お前たちは行かないのか?

お義父さんが、私達に言った。

ロイクラトン??

私は、彼に尋ねた。

ロイクラトンは、灯籠流し。
バナナの茎を蓮の花のような形の船にして、バナナの葉とか、花を飾って水に流すんだ。

1年の間に溜まった、悪いものを流すんだよ。
年に1度のイベントなんだ。

君は、ラッキーだね。いい時期にここへ来たよ。

そう言われると、行って見たくなった。

灯籠、川に流すの?

お母さんが、みんなにはコーヒー、私にはハーブティーを淹れてくれた。

バンコクは川だけど、パタヤはビーチに流すんだ。
行ってみようよ、夕方、早めに出よう。すごく混み合うから。

そう、言って、彼はコーヒーをゴクリと飲んだ。


∞ 寛容さの縮図

その日のお昼すぎ、メールチェックをするため、近所のインターネットカフェに連れて行ってもらった。

ほとんどの客が若者で、ゲームが目的ななようで、あとの人達は、メッセンジャーで通話していた。

ファランと呼ばれる外国人も、ちらほら見かけた。1時間30バーツ、約100円くらいだったと思う。

帰り際、住宅の一角で、道端にテーブルを出して、灯籠を売っていたので、買うことにした。

手のひらに乗るくらい、直径12cmくらいのバナナの茎の船に、お花や線香、小さなロウソクが付いていた。20バーツ。約70円くらい。それを2つ買った。

バナナの葉っぱを編んで細工したり、お花がたくさん飾られているような、手が込んだものは、もう少し高かった。

テーブルの後ろで、女の人やその子供たちが、楽しそうに灯籠を作っている。


私が、灯籠づくりの様子を見ていると、彼が言った。

僕も作れるよ。でも今からじゃ、間に合わないから。またいつかのロイクラトンがきたら、君も作ってみたらいいよ。

いつかのロイクラトン。
いつか、また、そんな日が来るんだろうか。そんな事を、思っていた。

午後4時になる頃、バイクタクシーを捕まえて、3人乗りでパタヤビーチへ向かった。人が多いから、自前のバイクで行ったら何かと面倒らしい。

夕暮れまでには、まだ時間がある。でも、たくさんの車とバイクで渋滞は始まっていた。

お義父さんとお母さんは?

ふたりは、先に行って知り合いのお店に寄っているから、近くについたら電話する。

混み合っていて、パタヤビーチまでバイクで行けそうにない。だから、少し手前で降りて歩いた。彼は、電話を片手に私の前を歩く。

細い路地のような所を歩くと、たくさんの人とすれ違う。

露天商や、物を売り歩く人たち。

バルーンや、カットフルーツ、ジュースや、アクセサリーに至るまで、色んなものを手売りしていた。

雨期が終わって、朝晩は涼しくなったとはいえ、昼間の屋外は暑くて、汗ばんでくる。オレンジジュースの露天の前には、人が集まっていた。

細い路地を進むと、バルコニーのようなエントランスを構えた小さなバーがたくさん並んでいた。

その中の1つに、入口付近に設置された、ハイテーブルに座っている二人を見つけた。

彼と私は、手を振って二人に合図した。

お義父さんは、電話を切って、大きく手招きして、私達を自分たちの向かいに座るように促した。

彼はビールを、私はオレンジジュースを注文した。

ビーチの方で、何かイベントがあるらしい。たくさんの人と行商が狭い路地を行き交う。

タイの民族衣装を着て、きれいに髪をまとめた、背の高い女性たちが、4〜5人、バーの前で立ち止まった。

ビーチの方に進みたいが、混み合っていて、なかなか前に進めないようだった。

よく見ると、その女性たちは、全員美しいレディボーイ達だった。本当に、美しく輝いていた。

その後ろを、ファランの年配男性とタイ人女性のカップルが続く。

タイは、寛容な国だな、と思う瞬間である。

自分らしく輝いている彼ら、需要と供給をマッチさせている彼ら。

それは、誰からも強制されたわけではない、自分自身で選び取った生き様なのである。そして、周囲も違和感なく、ありのままを受け入れているのだ。

∞ 日本人であることの誇り

少しずつ日が落ちてきて、さらに人が混み合ってきていた。

まだまだ、序の口だよ。暗くなったら、もっと人が集まるよ。

彼がそう言って、お義父さんに灯籠をひとつ渡した。

お父さんの知り合いという、店主らしい人が、私達の飲み物を運んで来たので、挨拶をした。

店主は、私に訪ねた。

日本人か?

私が、そうだと答えると、

日本人なら、安心だ。日本人は、いい!小堀という日本人を知っているだろう?本当に素晴らしい人だから。

ごぼり、、?だれのことだろう。私は、彼に聞いてみた。そうすると、皆、驚いた様子で私を見た。

そして、店主が私に言った。

小堀を知らないのか?タイでいちばん有名な日本人じゃないかな。日本人が知らないとは、驚きだ。

私は、何だか恥ずかしくなった。カンボジアでも、カンボジア人に愛された日本人がいたけど、私は現地に行くまで知らないでいた。

小堀という人を、後で、調べてみたら、タイの国民的ドラマの『クーカム』の登場人物の名前だった。


実話をもとに作られたそのドラマは、何度もリメイクされている、タイの大人気ドラマらしい。

そのストーリーは、太平洋戦争中の日本の軍人と、タイ人女性を描いた恋愛ドラマで、軍人小堀の誠実さが、とても良く描かれているのだそうだ。

しかし、小堀というのは劇中の役名で、実在した人の名前では無かったのだが、タイ人の中には、小堀は実在したと勘違いしている人が多くいるともされていた。

タイには、親日家がたくさんいて、それは、私達に先人が残してくれた信用なのである。

タイだけではない。アジアのたくさんの国に、先人の徳が積まれている。

私は、行く先々で、その恩恵を受けている。本当に有り難く、日本人としての誇りを感じ、心が熱くなるのだ。

∞ 日が暮れて

ひとときのおしゃべりが終わり、日も落ちかけて来たので、ビーチに下りる事にした。

ビーチの手前のアスファルトの道路は、ガタガタで、躓かないように気をつけて歩く。

路肩には、たくさんの灯籠が売られていた。やはり、その横では、デモンストレーションのように、灯籠を作っていた。素晴らしいデザイン、バナナの葉がこんなに美しい細工になるのか、とため息が出る。

そして、それは水に流すために作られている。

タンブンと同じで、自分ができる範囲のものを買う。もちろん、自分で作ることもできる。

豪華さが違っていようが、使う目的は同じで、けがれや災いを流す為、なのである。

夕日が綺麗で、海がキラキラしていた。少し離れた場所から、ロケット花火のような音が鳴りだした。

イベントや、露天商、集まりだした沢山の人々の作り出す喧騒を横目に、私達は砂浜の脇の岩場に座った。

そこで、夕日が落ちるのを眺めながら、暗くなるのを待つ。たくさんの家族やカップルが同じように夕日を眺めていた。

夕日が落ちると、若いタイ人の男性が服のまま、海の中に入っていった。水が腰のあたりまで浸かる場所まで歩いて、また戻ってくる。

なんだろう?と、不思議に思っていると、彼らは灯籠のロウソクの火が消えないように、灯籠を波から守りながら沖へ流していた。

沢山の人が、彼らにお願いしてチップを渡し、自分たちの灯籠の火をみつめ、流れていく様子を見守っていた。

彼は、潮風を避けるように、ロウソクに手をかざして火を付けた。そして、その火でお線香にも火をつけ、祈りを唱えてから、灯籠に差し込んだ。

私も同じように、ここまで連れてきてもらった不思議な力に感謝して、祈りを捧げ、線香を灯籠に立てた。

彼は、ズボンの裾を太ももまでまくりあげて、海の中に入っていく。濡れないように、ギリギリのところまで進んで灯籠から手を離した。

私達の灯籠は、少しずつ沖へ出た。
ろうそくの光がゆらゆらと揺れながら、遠くへ流れていく。

私達は、黙っていた。

ただ、その光が見えなくなるまで、海の彼方を見つめていた。

いつかまた、ロイクラトンに来てみたい。お腹の子供と一緒に。

心からそう思った。

もう、明日の朝にはバンコクへ向かう。

赤ちゃんがくれた二人の時間も、もうすぐ、終わろうとしていた。








【嘘のような、ホントの物語】#7〜不思議な力を持つ娘の誕生まで〜 に続く








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∞ まえがきより

この物語は、ある家族に実際に起きた、  
嘘のようなホントの物語。

『自閉症の娘』や
『ADHD疑惑のタイ人旦那』と、
『カサンドラになりかけた日本人妻』の 
エピソードを描いた、
私小説的エッセイです。 

他のエッセイに比べて、
かなりプライベートな内容が
含まれているため、

書く決心がつくのまでに
時間を要しましたが、 

海外、国内問わず、
育児に苦労している方や、 

大人のADHDの方の対応に
悩んでいる方の ヒントになれば…
と思い、 執筆することにしました。

この物語は、決して暗く悲しいものでは ありません。
 
困難に打ちひしがれる日もあれば、
文化の違いから、お互いを理解し合えず 
涙する日があったり、

バカバカしい事で、 
お腹がちぎれそうになるくらい笑ったり。

人生という旅路を、
何故か一緒に歩くことになった、

マイペースでトンチンカンな旦那さんと、 
不思議な力を持つ娘を中心に、
日本人妻が翻弄されながらも、
強く生きる物語なのです。

この物語のシリーズは、
今後、有料記事にする予定です。

不特定多数の方へ、無料で届ける内容ではなく、 
本当に必要とされる方に、
読んで頂きたい、と考えているため、
そうすることにしました。

ご理解頂だけると、幸いです。

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