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四月を滑る*短歌八首
春がきてさみどりいろのけやきの葉ねむの葉のように風にそよいだ
ひこうき雲消えゆくときも真っすぐに君の中に見た春のはじまり
この春のいちばん大きな満月に向かってフリースローの真似を
新しいメモリスティック挿しこんで今日までのこと上書きしていく
自販機の新商品の涼し気なパインソーダをいつも見ている
花に名があってよかったきみに歌があってよかったもう少し歩ける
十月の辻を今年また歩くだろうよ
わかれのうた*短歌六首
なつかしいわかれのうたを閉じていく風に揺れてるブルーデイジー
ともだちは遠くなってもここにいる言葉もなくてもう会えずとも
目の前の壁こえるため走りいる跳び上がれ高くどこまでも青く
美しい歌人の歌にうなずいた一つ放すと十あたらしく
電車から明るく光る観覧車ながめ体を時が流れた
さようならふんわりとした印象が霧散していく僕を残して
短歌八首*モンスター
缶けりのルール分からぬ味噌っかす自分の影を見つめつづけた
終わってるコンテンツだね君と僕けやきが枝を空へ広げる
あのときの答えをSiriに訊ねてるとんちんかんなわたしの問いの
伝えたいきょう今ここであなたへと急げ老いぼれてしまわぬうちに
モンスターぬるいまま飲む地下ライブ君とノイズの音と立ってた
くらやみにささやきなんかきこえない犬も小石もナイフも春も
自販機の新商品は涼しげなパインソ