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アカミミガメで唐揚げと楽器を作ってみた

 6月からアカミミガメアメリカザリガニ条件付特定外来生物に指定される。

 侵略的外来種として輸入・販売・放出が禁止捕獲・飼育・譲渡は可能。所有しているorした場合、終生飼育か里親を探すか殺処分である。

 アメリカザリガニは子供の頃は馴染み深い。今は駆除されたのか見かけないが、そこら辺の用水路にいた。クソガキだったので捕まえて爆竹で吹っ飛ばしたり飼い犬と戦わせたり(意外と善戦)した。

 しかし思い返すとアカミミガメ、ミドリガメの方はあまり馴染みがない。自分が子供の時点で飼っても大きくなって飽きられて捨てられる厄介な動物という認識が既にあったからか、縁日とかでカメ掬いも誰かの家で飼育個体も記憶にある限り見たことがない。
 池のある公園や遊水地に行けばいるが、近くで見たことがない。10m以上離れた(しかも迂回して立ち入り禁止の柵を乗り越えないと行けない)対岸でも小島でもこちらに気付くとすぐに飛び込んで水の中に逃げてしまう。

 正直なところ、アナグマの一件があってから動物の標本を手にしたい、作りたいという好奇心が強まっていた。

ハコフグ
シロシュモクザメ
軟骨なので変形、破損しやすい。
ムニエル(微量)、アンモニア臭はするが味は普通。
アカニシ、オウムガイ
ジモティーで買った。ブランド品買取業者の値段が付かない雑貨の在庫処分なのだが10円て。

 捕まえられないか、罠とか用意するのも手間だし市役所とかに言わないとあれだろうし、どうにかできないかと思っていた去年の12月のある日、遊水地のコンクリート舗装された遊歩道に落ちていた。

 甲長約20cm、推定20年以上の黒化したオスである。甲羅の傷に年季が入っている。冬眠しようとして間違って出てきたのか。持ち帰る。

 泥抜きをするので飼育ケースに入れて絶食させる。10日ほどは糞で水を濁らすので交換する。しかし冬の野外作業でツラいのもあったし、カメの方もほぼほぼ冬眠しかかっていたので、暖かくなるまで名実共に寝かして待つ。

 3月になって起こす。そこそこ元気だ。しかし自分の感性としてはカメはかわいい。爬虫類がダメな人はダメだろうが、愛嬌がある。瞼があって瞬きするし、甲羅に引っ込んでこちらを伺ってくるので情緒に訴えてくる。

 一応グロ注意。かの『ザ!鉄腕!DASH!!』ですら過去になんやかんや言われたらしいから、あらかじめ言っておくが私は動物が好きで、自分の食と知的好奇心の為に正当な意義の下、本来駆除されるべき命を頂く。それを非難されるなら、その人とは特にそれ以上議論する気はない。文句言う暇があったら代わりにかわいい犬猫ペットとか動物園の赤ちゃんとかの写真、動画でも何も考えず口開けたまま見ていればいい。『いのちの食べかた』を直視できないのなら。

 しかしそもそも考えてみると、魚以外でここまで大きい動物の命を意図的に奪うのは初めてかもしれない。大学の必修の解剖実験もやり方の説明中に廊下で「ヒヨヒヨ」鳴いていた麻酔で安楽死したてのヒヨコとニワトリの中間のやつをその場で渡されたし。今年も全国の大学で阿鼻叫喚する学生(主に女子)がいるのだろうか。毎年思う。

 ラジオペンチを噛ませて首を出させる。暫く宙吊りにして疲れさせる。二人掛かりなら甲羅を押さえて楽に絞めることができるだろうが。

 マズった。包丁を叩き込めば一発ですんなり落とせるかと思ったが、包丁の研ぎ不足か骨に当たったか仕留め損なった。他にしようがないから「すまぬ… すまぬ…」と思わず口からこぼしながら刃を押し当てて手早く力尽くで首を切り落として血抜きする。

 頭がなくなって血が抜けた後も四肢はそれぞれを切り落とすまで(10~20分くらい)無作為に動き続けていた。

 中身を食材として取り出すのがメインで効率的に処理するなら、甲羅の腹側の横からノコギリで切れ目を入れてノミやマイナスドライバーのテコでこじ開けて解体するのが手っ取り早いが、甲羅の方を残したいのでそのまま中身を取り出す。前は肩甲骨、後ろは骨盤が内臓を保持しているので、それらを外して前後を貫通させる。

 黄色い粒は脂肪。絶食して冬眠明けでも割と残っている。ちゃんと処理すれば胆嚢と膀胱以外は食べることができるそうだが、面倒なので埋めて廃棄。メスで卵を孕んでいたら食べたかった。
 甲羅と癒着した皮膚や内側の膜のコラーゲンがそのままじゃまともに切れないし剥げない。甲羅全部が漬かるほどのデカい鍋がないので表裏引っ繰り返しながら煮る。


 熱でゼラチン質が硬化して素手で容易に剥き取ることができるようになる。ピンセットやブラシで粗方取り除いたら入れ歯洗浄剤(タフデント)の酵素に漬ける。

 とりあえず数日放置。

 肉の方を調理する。唐揚げにする。

前肢
後肢

 爪をペンチで抜いて、皮膚はカッターで切れ目を入れて剥く。

 市販の粉をまぶして転がしながらよく揚げる。とにかく熱を通させる。

アカミミガメの唐揚げ
露悪

 殆ど鶏肉だ。普通に美味い。ちゃんと泥抜きが済んでいるし臭みはない。しかし可食部が見た目よりも少ない。泳ぐ為の水かきが発達しているせいか掌が妙に美味い気がするが、小骨が多い。ミンチにできればいい感じに調理できるだろうか。
 皮も食べることができるが、グニグニして噛み切りにくい。堅めのジャーキーだと思えば酒の肴になるか。
 頭は顎の筋肉(と目と脳)が食べられるが、他は骨に密着した角質なので殆ど食えない。

 ぶっちゃけ単純なコスパだけならファミチキ買って食った方がいい。しかし直接命を頂くことはそれ以上に意義がある。可能な限り平らげる。米を炊けばよかった。

 食べ終わった唐揚げの残骸の骨を煮て出汁を取って飲む。

亀ガラスープ

 なんとなく旨味は感じるが淡麗過ぎてよくわからない。ちゃんと味付けすればよかった。

 頭蓋骨は甲羅と同じく除肉して入れ歯洗浄剤に漬ける。

 タフデントって溶かすと青いんだなあ。一晩経つと透明になる。洗浄して取り出す。

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のデグロックみたいだ。歯はなく、代わりにある上下の嘴の角質は他の部位と分離していてマウスピースみたいにスッポリ外すことができるが、誤って破損させたので廃棄。

 甲羅を残したのは標本兼楽器、アヨートルを作るためだ。

 浜松市楽器博物館にカメの甲羅を使ったグアテマラのプリミティブなパーカッション楽器として展示されているのだが、そのせいなのかは知らないが、「アヨートル」で検索すると名古屋大学の学生、音楽系サークルや浜松の生き物系の団体が作っていて東海圏に偏っている。(自分含め)

 甲羅はほぼほぼ除肉できた。サイズ感もいい。無理な追い抜きして前に出てきた車にぶつけてスピンさせるのにちょうどいい。(お縄)
 しかし脊椎管に髄が残っているのか腐臭がする。腹を上にしてパイプ洗浄液を原液で脊椎管に流し込んで水で希釈して3時間ほど漬ける。既に背骨の一部が外れてしまっていたので、これ以上ダメージになることをすると角質も剥がれて自壊してしまいそうだ。
 カメの甲羅は角質甲板骨甲板からなる。角質と骨で甲羅のつなぎ目が一致していないので二重構造で強固だが、逆に言うと角質が剥がれてしまうと骨の方もバラバラに外れやすくなるし、そうなると修復が困難になる。
 パイプ洗浄液に漬けた結果、匂いは完全に除去できないが、なんか使い古した畳みたいな匂いになったので許容範囲で良しとする。瞬間接着剤で外れた細かな背骨をくっつける。ニスを塗ってもいいがとりあえずそのまま。

 竹箸にスーパーボールを刺して簡易マレットにして叩く。

 前後で2音出せる。マレットの素材や置き場所を工夫すればもっといい音が出るかもしれない。

 頭蓋骨と一緒に部屋に飾る。そんな世界カメの日

おまけ: グアテマラのチンチン(マラカス)


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