見出し画像

真夏の無計画 1日目 ~ペーパードライバーin北海道~

まえがきといいわけ

どうも皆さんお久しぶり。旅行記を書きかけで放置し、三日坊主の称号を欲しいままにする男、やまりくです。
なぜいきなり筆を取ったのかというと、夏に新しい旅行に行ったのでまた新しい旅行記を書こうと思ったからである。

行き先は、性懲りもなく北海道

やれやれまたか、とおっしゃる人もいるだろう。しかし、

今回は夏、そしてレンタカー。

前回の鉄分にまみれた冬の大地も良かったが、夏の緑の北海道も格別だった。忘れないうちに何としても文章にして残さねばならない。

いや待て待て、前回の旅行記は三日目で終わってるじゃないか、先に続きを書けよ、と。耳が痛いご意見ですね。三日目坊主を耳無し芳一にする気ですか。一つ言い訳をすると、あの旅行は三日目が一番盛り上がってろくに宿に泊まらなかった疲れで竜頭蛇尾にテンションが下がっていった旅行で、しかも五日目以降は北海道を出てしまったので内容に窮してしまっていたのです。いつか四日目以降をまとめた記事を作ろうと思ってはいる。思ってはいるので許してくれ。

じゃあ夏の旅行なのになんで今頃記事を書いたんだもう冬だぞ、と。単純である、時間が無かった。ZOOM大学の鬼畜教授陣が人を人とも思わぬ量の課題を出してくるので書く暇など当然のように無い生活を送っていた私を責めないでくれ。一度書き上げた記事のデータが全て消えたことでやる気が無くなっていたというのもある。

さて、見苦しい言い訳はこれくらいにして本文を書こう。まあ、本文も見苦しいが。例によって文章量が腐るほど多いのでマッハで読み飛ばしてほしい。もう既に読み飛ばしてる人もいると思うのでここまできっちり読んでくれた殊勝な読者にだけ重要な情報をプレゼントしよう。
この1日目の記事にはほぼ写真がないぞ。がんばれ。それと2日目以降から読んだって特に問題はない。


1日目 関西空港➔千歳空港

その日の早起きははっきり言って意味がなかった。荷物の準備は前日の時点で万端だったし、何より待ち合わせは正午だ。だが、下宿ZOOM大学の課題まみれで憂鬱極まる日々をこの旅行への期待だけで生き抜いていた私には正午の待ち合わせはいささか遅すぎた。荷造りと同時に綺麗に掃除してしまった部屋を再び汚す気にもなれず、意味もなく予定より一時間以上早く出発。大阪に着いたが当然することがないのでヨドバシをうろうろするなどしていた。

ここで、旅行に至るまでのだいたいの経緯を説明しよう。私は前回の旅行で北の大地に深く魅了されてしまったいたので、夏にどこに行くか、と考えた時点ですでに目的地が北海道しか思いつかなかった。さらに、鉄道は乗りつくしてしまったため、行くならレンタカーを使いたい、と考えていた。とりあえず、前回、前々回の北海道旅行を共にしたご存じのT氏とK氏の二人に相談した。だが、集団行動意識が低すぎる我々は、それぞれが列車で、バスで、レンタカーで巡りたいと主張し、議論は平行線をたどった。そうするうちに、航空券が安くなっている8月後半まで一カ月を切るところとなってしまった。議論はほぼ決裂に達していたため(だからと言って交友関係に軋轢が生じるわけではないのがこの三人の不思議なところである)、私は他の友人を誘うところとなった。一人で行くにはレンタカー代の負担が大きすぎる。そもそも陰キャで友人数が少ない私が、出発まで一月を切って何一つ決まっていない、10日間に及ぶ旅行に誰を誘えるというのか。正直厳しいと思っていた私はダメ元で誘いをかけていた。

しかし、ここに稀有な人物がいた。昔からの親友のF氏である。彼は出発約二週間に、私とともに10日間にわたって本州を離脱することを告げられ、それを容認したのである。

私はF氏の信じられない回答を聞いて、即座に二人分の飛行機及びレンタカーを手配した。言い換えれば逃れられなくした。こんな渡りに船があるものか(←最低の人間の言動)。こうして(私にとって)めでたく、私とF氏は北海道へ行くことになった。今回の旅行はこの二人でお送りする。

(なお、かの三人組は結果的に各々独自に一人で夏の北海道を旅行した。T氏が鉄道、K氏はバス、私がレンタカーである。友人とは、必ずしも旅行の同行人ではない。)

大阪駅付近を冬眠明けの熊のように徘徊していた私とは対照的に、F氏は正午かっきりに大阪駅の改札に姿を現した。彼には私に無い、落ち着き、というものがある。大阪駅から地下鉄と南海電車を乗り継いで関空へ向かう。空港急行は大きなバッグを持った人が多い。この空港急行はどれほどの旅人を乗せているのだろう。どうでもいいが空港急行って早口言葉みたいだな。

今回使うのはジェットスターの航空便だ。実は一週間ほど前、本来乗る予定だった朝の便が欠航になるとメールが来たので、急遽半日早い便に変更した。慈悲のない教授陣が際限なく出してくる課題を旅行前に終わらせられるかどうかギリギリの局面だった私は「言うの遅いってェ!!」と徹夜中に来たメールを見て叫んだ。だが、結果的には課題も終わって(妥協の結晶を為す術なく提出したとも言う)、少し旅行期間が伸びることになり嬉しい結果を招いた。一泊目の宿がよかったのだ。

この宿は出発前日に決めていた。支笏湖畔の丸駒温泉旅館。千歳空港の到着が夕方なので、それほど距離がなく、かついい場所の宿はないか、と探した結果、白羽の矢を立てたのが支笏湖だった。ここなら空港から一時間くらいで着ける。

飛行機は緑の萌える日本列島を縦断し、西日のまぶしい北海道の大地に降り立った。タイムズレンタカーの送迎バスを呼んでレンタカー屋へ向かう。やたら広い駐車場で車と対面する。17番の駐車場にちょこんと止まっていたのは綺麗な青い車だった。

画像1

車種はマツダのデミオ。後に、ネーミングセンスのない我々(主に私)は彼を『松田デミ夫』と安直に命名する。これから11日間、2700km、彼にお世話になる。

レンタカー千歳空港店➔丸駒温泉

荷物を積みこんでエンジンをかける。教習所以外でコンパクトカーに乗るのははじめてなのでおっかなびっくりである。さあ、壮大な旅の始まりだ。私は意気揚々とアクセルを踏んだ。

ギギギ、といきなり妙な音がしたので慌ててブレーキを踏んだ。

F氏が不安そうな顔で見てくる。サイドブレーキがかかったままだった。「あ、このタイプのサイドブレーキ引いたらかかるんだったか(当たり前)。よしよし、これでノープロブレム。」などとごにょごにょ言って再発進。F氏がなおさら不安そうな顔で見てくる。

のろのろ動いてやっとレンタカー屋の出口までたどり着き(千歳のレンタカー屋はかつて見たことないくらい駐車場が広い)、左折していよいよ公道という大海原にこぎだした。すぐに現れたのは、記念すべき最初の交差点。いよいよ旅がはじまるなァ、と談笑しながら十字路を直進で通過した後、あることに気づいた。

「...今走ってるこれはバイパスのインターチェンジではないかい?」

F氏がしばらく沈黙した後、地図を見て言う。

「...次のICで、降りて。」

何が起こったかお分かりだろうか。
我々は、運転開始後最初の交差点でものの見事に道を間違え、北海道レンタカー旅行開始1分ですでに目的地と逆方向へ向かっていたのだ。
本当に先行き不安である。

すったもんだやってるうちに日はとっぷり沈んでしまった。支笏湖へ向かう道は真っ暗で街灯がない。後から気づいたことだが、そもそもこのあたりは電気が通ってないらしい。丸駒温泉は全館自家発電であった。

鹿飛び出し注意の看板だらけで戦々恐々としながらちんたら走る。後ろからせまる車をすべて抜かさせつつ、進む。
「俺は、この旅行では道を譲り続ける。」と特にかっこよくもなんともない宣言をF氏に誓う。
ミラーにヘッドライトが映るたびに、
「俺の背後に立つなァ!!」
と叫びながら左指示機を点滅させてデミ夫を路肩に寄せお模範行動を繰り返す。私はこのとき、安全運転の権化であった。

やがて支笏湖畔に出た。空は少しだけ明るく、対して暗い山影に囲まれた湖面は吸い込まれるような漆黒。対岸に小さく点のように光が見える。他に特に光がないのでおそらくあれが目的地の旅館だろうと気付くと同時に、えらいところに来てしまったな、と思った。

暗い道道をえっちらおっちら走って(さっきから副詞が死語)、無事に丸駒温泉旅館に到着した。思ったより大きな旅館で、周りの電灯の無さもあいまって遺跡っぽく見えた。館内は薄暗い。こんな時間に来る客がいないのだろう。チェックインの手続きをして部屋に入る。
まずはコンビニで買っておいた飯を食うが微妙だった。F氏は電子レンジが必要だと知らないまま買ったそば(ジェル状のつゆをそのままかけていたのでジェルそばである)を食べていて可哀想だった。

気分を味わう派の人間なので旅館についたら浴衣を着る。いつも浴衣の襟が右前だったか左前だったか忘れるのだが、知識が偏っているのでアイヌ民族の衣装とあわせが逆向きであることだけはなぜか常に覚えている。ここは北海道なのでどっちに着ても許されるのでは、などと思いながら着たらF氏と一緒なので安心する。

温泉には露天風呂がありさっそく行ってみる。曇りったドアをあけるとそこは雪国だった、というのは嘘だが。だが、寒い、何だこれは。8月の気温じゃない。逃げるように湯船に飛び込むと目の前には美しい支笏湖が....見えない。まったく見えない。予想はしていたが完全に闇である。波の音などもほとんどせずただ暗い。星が見えてもよさそうなもんだが、露天風呂の灯りであまり見えない。いっそ全部消したらいいのに、と思わないでもない。だが、いい湯だ。課題疲れの体(?)に染み渡る。(余談だが、支笏湖周囲の旅館などが協力して、一夜限り全部明かりを消す、というイベントがあるようだ。)

部屋に帰ってきて明日の旅程を考えながら布団に入る。ここにきて衝撃の事実を語ろう。今回の旅は初日の宿と10日後の帰りの飛行機の時刻以外は宿泊地もルートもまったく何も決めていない。完全な自由、もとい恐るべき無計画である。ちなみにF氏はその件には同意している(諦めている)。

やがてルートが大まかに決まったので昂る心を抑えて眠る。明日何が起こるかは神のみぞ知る。とりあえずは、朝の露天風呂が楽しみである。


写真を探して読み飛ばした人、普通に読んだ人、ご苦労様でした!
ごめんな、今日は写真はねえ!ねえと言ったらねえ!
写真は2日目以降は(たぶん)大量にあげていくのでお楽しみに!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?