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ドローインとブレーシング結局どっちがいいの?

ドローインとブレーシングどちらが効果的問題。
ドローインとブレーシングについては様々な議論がなされています。

腹横筋の選択的収縮にはドローインが効果的だ、という意見や
ドローインなんてやったら腹腔の体積が減少するじゃないか、ブレーシング一択だ、というものや他にもたくさん意見があると思います。

個人的な意見としては、

対象者によって使い分ける

というものです。

なんかどっちつかずの意見になってしまいましたが個人的にはこのように感じています。

今回は、

・そもそもなぜドローインやブレーシングをする必要があるの?
・ドローインって?
・ブレーシングって?
・実際どっちがいいの?

この辺りについてご紹介していきたいと思います。


そもそもなぜドローインやブレーシングをする必要があるのか?

これの答えは「腰部の安定性を作り出すため」です。

腰部は胸郭と違い肋骨など骨の支持組織がありません。不安定な構造ですが屈曲、伸展、側屈、回旋を行い、joint by joint theoryの考え方だとスタビリティ関節に分類されます。

つまり、構造自体は不安定ですが安定性と適度な可動性が求められる関節です。

stability関節とmobility関節についてはこちらをご覧ください↓↓腰椎分離症のリハビリに書いてあります。

その為、腰部が不安定な状態だとメカニカルストレスが加わるので体幹を安定させて腰部に対するストレスを減少させるためにドローインやブレーシングが行われています。


ドローインとは?

ドローインとはお腹をへこませておへそを床に近づける運動です。ドローインを行うことで腹横筋を選択的に収縮させることができます。

そもそもなぜ腹横筋が重要視されているかというと1996年にHodgesらが行った研究で健常者では上肢の挙上に先立ち腹横筋の筋活動が開始していたと報告した。

しかし、慢性腰痛患者では腹横筋の活動のタイミングが健常者と比較して遅延していたことが分かった。このように主動作筋よりも早く活動することをフィードフォワード作用と言います。

その為、腹横筋を選択的に収縮し神経筋反応時間を改善させ、フィードフォワード作用の構築をするためにドローインが行われていると考えられています。

つまり、ドローインとは「体幹を安定させる」というよりも腹横筋の収縮が得られない場合に用いられるエクササイズだと考えています。

実際にドローインとブレーシングではどれだけ腹腔内圧(intra-abdominal pressure:IAP)に差があるのかを比較した研究があります。

ちなみに、腹腔内圧(以下IAP)とは簡単に言えば、お腹の圧を高めることを言います。IAPを高めることは腰部の剛性を高めてメカニカルストレスを減少させる効果があります。

左がブレーシング 右がドローイン

メディアや一般の方には、腰痛=ドローイン、として広まっていることが多いと思いますが上記の表からもドローインではIAPを高めることができず体幹の剛性は高まらないものだと考えています。(ブレーシングと比較して)


ブレーシングとは?

ブレーシングは吸気時に腹部に力を入れて腹部前・後面すべての筋肉を収縮させて腹腔内圧を高めることです。動員される筋肉は腹横筋や横隔膜、腹斜筋や胸腰筋膜などです。腹部全体ということですね。

お腹をパンチされそうになった時「グッ」と力を入れるようなイメージだと分かりやすいかと思います。

先ほどの表からも分かるようにドローインと比べるとブレーシングの方がIAPが高くなります。さらに、ドローインよりもブレーシングの方が脊柱の安定性は高まりやすいという報告もあります。

実際の競技を考えてみると分かりやすいと思います。

ラグビーでタックルされるときドローインしている時とブレーシングしている時ではどちらが安定しやすいでしょうか?

おそらく多くの方がブレーシングしているときと考えると思います。

日常生活でも例えば洗濯物が入ったカゴを持ち上げる時お腹をへこませて持ち上げる方はそんなに多くないと思います。へこませるよりもお腹に力を入れるはずです。

こんな感じで体幹を安定させる、剛性を高める観点で言えばブレーシングが有効だと考えられます。


実際のところどっちがいいの?

ここまで読んでいただくと最初に書いた「対象者により使い分ける」ということが分かって頂けると思います。

個人的にはリハビリ段階であれば腹横筋を選択的に収縮させるドローインが有効ではないかと考えています。

特に慢性腰痛患者は腹横筋の遅延が問題となるので収縮する感覚を覚えさせるというのも有りかと思います。

ブレーシングは主に競技パフォーマンスを向上させる場面や痛みはないけどアライメントを改善したい、と考えている方には有効だと思います。

腹部の剛性を高めることはコンタクトスポーツはもちろん、ゴルフやテニスなど回旋を多用するスポーツにも効果的です。

どっちが良くて、どっちがダメという問題ではなく両方とも用途によって使い分けることが大事かなと個人的には思います。

体幹機能を向上させるための各筋の役割はこちら↓↓


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