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<感想>「ただしい人類滅亡計画」を読んで

こんにちは。
たまには漫画以外も読もうということで、品田遊さんの「ただしい人類滅亡計画」の感想を書きます。良かったとこ中心です。

あらすじ
全能の魔王が現れ、10人の人間に「人類を滅ぼすか否か」の議論を強要する。結論が“理”を伴う場合、それが実現されるという。人類存続が前提になると思いきや、1人が「人類は滅亡すべきだ」と主張しはじめ……!?

・中立な立場を絶対に守ろうという強い意志を感じる。。。
 「人類存続の是非を理論的に議論する」というお話ですが、こういう類の本って最終的に作者の考える理念が最強になるようなストーリーになっていることが多い気がするんですよね。そもそも一人の人間が何らかの主張をしたくて本を書いているわけですから作者の本意に沿った流れになるのは当然ですが、理論的を謳いつつも結局作者の理論が有利になるような展開だとどうしても不公平感を感じてしまいます。
 その点本書は公平を守るため10人の人物を登場させます。彼らは【悲観的な人間=ブルー】や【自己本位の人間=イエロー】など性格を割り当てられているため、議論の進行や意見のパワーバランスに作者の意思をあまり感じさせない作りとなっています。最後まで読んでも全員の出した結論はある程度納得でき不公平感は全く感じませんでした。
 結局あとがきでさえ品田遊としての意見は語られませんでした。徹底ぶりすごいな~。個人的には書いてほしかったですが、コンセプトが崩れちゃうから仕方ないですね。。。

・反出生主義(子供産むな理論)がめちゃわかりやすい
 
本書はサブタイトルである「反出生主義」の補助線となっています。人間は生まれてこないほうが良いと主張するこの理論を紐解いていく内容になっていますが、これがめちゃめちゃ分かりやすくてびっくりしました。さすが言葉を操るプロ…笑
 反出生主義って言葉のインパクトが強く、今までの自分たちの価値観を根幹から否定されるような気分になるので詭弁だと一蹴されることが多いんじゃないでしょうか。どうしても感情論的な議論になってしまいがちなテーマだと思います。
 その点本書は、反出生主義のもつロジカルな部分を丁寧に例を挙げて説明することで、かつ様々な個性の人間が反論する形をとることで、反出生主義が持つ理論として成立している部分と危うい部分をかな~り分かりやすく提示されています。まとめるのが大変なので、ネタバレにもなりかねないので是非読んでみてほしいんですが、今後生まれてくる人間に対してどこまで責務を負わなければいけないのかが一つの大きな論点かなと感じました。「親ガチャ」とか「生んでくれって言った覚えはない」とかネットでよく見るやつを、ほんとに突き詰めて考えたら、、、といった内容で非常に興味深かったです。

・「人類を滅ぼすか否か」の個人的スタンス
 
ストーリーとしては魔王が納得した意見に従う流れになっていましたが、
現実だったらどうなんでしょう。この本を読んで私が思った反出生主義論の難しいところは、多数派と少数派のジレンマ?に近いものを感じました。
 人類は存続すべきといった(おそらく)多数派の人間からしてみれば反出生主義なんて敵でしかないので、理詰めの議論をせずに無視するしかないんですよね。理で対抗しようと思っても正直五分五分なので、議論せずに感情論任せに「間違っている」と主張する今の現状が割と正しいやり方な気もします。実際理で正しいからと言って滅亡させられたら多数派の出生主義の人間からしたらたまったもんじゃないですし。だからどんなに紐解いても、理論として成立していても反出生主義は一生理解されないというか黙殺されるんだろうなあ。。
 私は存続派なのでそれでいいかなと思いましたが笑。そうやって思考停止して物事の是非を論じる危うさも再認識できて良かったです。

終わりに
ということで。宿題やレポートで感想文が出ている方々。昨今センシティブなテーマを取り上げており、中立的立場で議論している本書は読書感想文に最適です。最後に「私の意見」を付けるとなお良し!この本を買って優勝しよう!

オモコロファンの人もすらすら読めるのでおすすめです。ではでは。



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