見出し画像

読書日記『推し、燃ゆ』

宇佐美りんさんの『推し、燃ゆ』を読んだ。

暗い気持ちになった。

読了後に行ったスーパーマーケットで、欲しい商品が見つけられない自分が嫌になった。
明後日は仕事にいかなきゃいけない現実が嫌になった。
何もできていない自分が嫌になった。

誰かに、頑張ってるよって、抱きしめてほしくなった。
でも、頑張っているよ、は社会に認められてない感じがして嫌だ。
じゃあ、どうなれば嫌じゃなくなるんだろう。

著:宇佐美りん 『推し、燃ゆ』
「押しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。

河出書房新社小説紹介ページより

軽くもないし、重すぎることもない。
作中のような瞬間は誰にでもおこりうることだろう。
なのに、なんでこんなにも暗い気持ちにさせられるのか。

noteを書いていて気付いたことだけれど、
主人公の”上手く生きたいのに生きていけない”
寂しさに共鳴したのだと思う。

作中、学校や、バイト先、家族、そして”押し”と”押し社会”から
主人公はどんどん、どんどん、切り離されていく。

そんなこと、主人公は求めていなかった。
上手に社会で生きていけないことで起き、
”押し”に関しては主人公に関係がなく、なくなってしまったからだ。

そんなの、寂しい。

”上手に生きていく”ことはよく分からない。
生きていくことも生きていけないこともよく分からない。
彼女は、彼女なりに生きているのに。

社会の厳しさを感じつつ、それが普通だと思う私もいるのが、
また寂しい。

今は暗い気持ちだけれど、
読んでいる最中は暗い気持ちになんてならなかった。
ただ、主人公が心配でしょうがなかった。
この子、死のうとしないよね…と。
作中、主人公の父に「働かない人は生きていけないんだよ。」と言われ、
「なら、死ぬ」と主人公は言った。はったりでもないような気がした。

私は、主人公に生きてほしかった。

物語の最後まで、主人公は死のうとはしなかった。

「這いつくばりながら、これが生きる姿勢だと思う。」
生に前向きな感じさえして、嬉しかった。




この記事が参加している募集

読書感想文

【読んでよかった!】思って頂けたらサポートよろしくお願いします。