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あれはあれの中にある

十代の頃は母親が「あれ取って、あれ」などと言うたびに少しイライラしながら「あれって何よ!?」と吠えたものだが、30代も後半になった今、私にも「あれ」の兆候が見えつつある。
先日、同年代の友人夫婦が家に遊びにきた時のこと。

友人夫「前に乗ってたバイクって何乗ってたの?」
私「えーと、あれ、あの、ナントカのあれ」
友人夫「なんにも答えてない」

という会話を皮切りに、妙齢になると訪れる「あれ」について語りあった。

友人夫いわく、妻にもその症状は顕著とのこと。

友人夫「俺も思い出せないことはあるけど、表現力があるから、テーブルの上にあるあれ、とか、説明してるのよ」

ふむふむ。なるほど。

友人夫「でもU(妻)の言い方がひどくて」

私「なんて言うんですか?」

友人夫「あれはあれの中にある」

私「全然わからん!!(笑)」

わからな過ぎて、もはや哲学的な格言にも見えてくる。

その後もひとしきり加齢による「あれ」について盛り上がった後、何か全然別の話をしていた時のこと。
突然、私の脳裏に記憶の神が降り立った。

私「さっきのあれ、思い出した。ヤマハのビラーゴ!」

時間が経って何の脈絡もない時に急に思い出すのも、「あれ」の症状の特徴である。

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