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【落語短歌】vol.2 粗忽長屋


吾の亡骸を抱く我のあの泣き顔は粗忽にあらず狡猾か



あのなきがらをだく われのあのなきがおは そこつにあらずこうかつか





Vol.2の落語短歌は、〝ジャパニーズ・サイエンス・フィクション〟の先駆け【粗忽長屋】です。

J S F!・・・まるで、銀行名かテーマパーク系にありそうな響き。



みなさん、〝S F〟は好きですか?


ジョージ・ルーカス?
スティーブン・スピルバーグ?
星新一?
21エモン(!)の、藤子不二雄A?


〝S F〟の定義がわたし自身の中でおぼろげですが、『科学の力を用いた近未来的な不思議ごと(の話)』と認識しています。合っていますかね?


そして、〝S F〟の着地点は〝哲学チックな道徳の啓蒙〟なんだろうな、とこれまた勝手に思っているのですが、有識者の方、教えていただけたらこれ幸い。



さて、新作落語を含めたら『SF落語』なんてのはたくさん存在する。


たとえば笑福亭羽光ペラペラ王国【俳優】は、非常に秀逸なメタ構造で、SFの香り漂わせつつ、彼がただのエロい人(←言い方)で無いということを証明している新作落語演目。


しかし、古典落語に限定して“SF落語”を探してみると、パッと思いつくのは【粗忽長屋】と【あたま山】


どちらかというとSFというよりは、哲学よりな印象なので倫理や道徳の授業等で扱って欲しい題材。【粗忽長屋】を用いて授業してる若い高校教師(真田広之似)とかいたら、胸アツだな。←






【粗忽長屋】あらすじ
八五郎は浅草寺の雷門の前で人だかりを見つける。聞けば、昨夜〝行き倒れ〟があり、身元がわからないという。八五郎が覗いてみると、そこには近所に住む幼馴染の熊五郎が。「アイツ・・・死んだのにも気づかず帰ってきちゃったんだなぁ」と悲しむ八五郎。そう、今朝ボーーっとした顔で家にいた熊五郎を見かけているのだ。慌てて、熊五郎の家に向かう八五郎。「浅草寺の前で亡くなっていたこと」を熊五郎に伝えて、一緒に浅草寺の〝行き倒れ〟を確かめに行くのだが−-



以降ネタバレご注意ください⭐︎




《短歌解説》


吾の亡骸を抱く我のあの泣き顔は粗忽にあらず狡猾か
あのなきがおをだくわれの あのなきがおは そこつにあらずこうかつか


吾の亡骸を抱く我のあの泣き顔

今回も単純に掛けたよね。うん。言葉を掛けただけだよね。ことば遊びだよね。韻踏みたい欲が抑えきれないお年頃。

あのなきがら
あのなきがお

うん。並べたくなる、そんな季節。



粗忽にあらず狡猾か

もしここで、亡骸を抱きながらクマが泣いていたとしたら、ホントに泣き顔だったとしたら、クマは狡猾なヤツかもしれないなと思う。図って泣いているのかもしれない。与太郎の雰囲気を纏いながらの策士だ。

もはや“粗忽”なんかではなく、したたかで“狡猾”な輩である。

そして、そんな自分の“狡猾さに恍惚としている”かもね。←もちろん、言ってみたかったダケDA・YO!




さて、もう一首、詠んでみましたよ。



露骨な粗忽の狡猾さ 恍惚の泣き顔 亡骸を抱く我
ろこつなそこつのこうかつさ こうこつのなきがお なきがらをだくわれ


やっぱり〝掛けたい病〟

〝掛詞病〟〝永遠に中二病を拗らせていた病〟・・・よって中二病ではナイって、エラいお医者さんが言ってた。←

与太郎と見せかけての、サイコパスなクマ。さきほどの歌より、猟奇的な印象を醸し出してます。ヤベーヤツです。自作自演に悦なクマ。粗忽者ぶってる狡猾者な自分に酔ってるという。


露骨な粗忽の狡猾さ

露骨、粗忽、狡猾、恍惚・・・を31音ないし、都々逸の26音に入れ込もうとするとどうしてもリズムが悪くなるんですよね。

「恍惚」を外しておいて、「露骨な粗忽の狡猾さ」だと1音足りないけど、歌丸師匠の「一度でいいから見てみたい」と同じ音数になってワリと収まりが良い。



恍惚の泣き顔

泣きながら既に悦ってるんです。危ない感じです。泣きながら影で「べーっ」って舌出してるヤツより、もう一段階ヤバいです。しかし、良い描写と思います。恍惚の“陽”、泣き顔の“陰”を併せ持っているので破壊力のあるパワーワード。



亡骸を抱く我

前の〝なきがお”にやっぱり掛けたい“なきがら”。

“恍惚の泣き顔で自分の亡骸を抱いている男”

尋常ぢゃないですよね。いい感じに決まってマス。



ちなみに都々逸にすると、こう⭐︎


我の亡骸抱きしめる我 露骨な粗忽の狡猾さ
われのなきがらだきしめるわれ ろこつなそこつのこうかつさ


“恍惚”を入れたいんだけど、入んないよーーっ。


粗忽長屋】の良さは、投げかけた疑問符を回収しきれてないところ、個々人に想像の余地を残しているところにあると思うし、短歌とか俳句もね、その奥の向こう側にある見えない情景や感情を詠んだり、読ませたりするところが醍醐味なのに、こうやって作者自身が解説しちゃってるあたりがね、うん、他者の脳内にエリアの線引きをして視野を狭めているというという懸念がありますが、その分〝深堀り〟を助長してると思って♪〝広く浅く〟ではなく〝狭く深く〟ね☆ ← 否めない御都合主義感。









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