012 | パリ-フォンダシオン ルイ・ヴィトンを見に行った


根がインドア派の私は、部屋でダラダラ過ごすのが大好きだ。無目的にお洒落タウンを彷徨ったりしたら、たぶん耳から煙が出る。が、見たい展示があれば、それはもう出掛けないと絶対に見れないから、やむを得ずどこへでも出掛ける。が、更に、休日まで公共の交通機関をチマチマ乗り換えて移動するのは面倒で、精力的に出歩かない、たぶん集中力がもたないのだ。でもって趣味の自転車も、用も無いのにわざわざトリッキーな市街地を走らない。

見たい展示と、好きな自転車が、組み合わさる事で休日のポタリングは成立する事が多い。バっと走ってから一旦心を落ち着けて展示を見、またバっと走る事でその展示の記憶を圧縮する、その連続が心地いい。




てな訳で少し前、今もう公開期間終わっちゃった企画展だけど、表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京に、フランク・ゲーリーさんの建築展「パリ-フォンダシオン ルイ・ヴィトン」を見に行った。パリで2014年に竣工したルイ・ヴィトンの複合ミュージアムのインスタレーションだ。早い話が手前味噌な展示だけど面白かった。





コンセプトのテーマごとにスケッチや建築模型を展示、フォンダシオンを重層的に時間的に見せている。勿論これらの建築模型は、竣工記念にどこかに飾られるようなものではなく、コンセプトや意匠を組み上げる過程で数限りなく作られた、3次元のエスキースだ。

フォンダシオンの意匠は、図面やCADの直線や数値から抜き落とされたのではなく、彫刻的な柔らかさを無数に修練する事で探り当てられた(とは言えフランク・ゲーリーさんはコンピューター技術を建築に取り入れた先駆的な建築家との事だし、今日の構造設計でデジタル技術が欠かせないのは言うまでもないとは思う)。




完成に至った実際のフォンダシオンを、写真なり映像なりで最後にドドーンと紹介しないのが逆に気が利いている。同建築が完成・固定されたモニュメントではなくて、時間と共に変化・深化してゆく ”不定の時空” である事を感じさせる。このインスタレーションは「落成記念」ではない。

それでいて同建築内で催された小澤征爾指揮による演奏会とか、ソフト面=各種活動や取り組みは映像でバッチリ紹介する辺りは手堅い。

外観写真はエレベーター降りたエントランスにこれがあっただけな気がする。




インスタレーション冒頭は、パリの歴史的な街並みやモニュメント的な建造物を、コンセプトに織り込んだプロジェクトである事が示されている。ポンピドゥー・センターは竣工当時醜悪であると非難されたけどもはやパリの顔の1つだし、エッフェル塔でさえ、建った当時は不評だったのだ。そんな風に時間のベクトルにも作用する何かを目指しているのかも知れない。




あえて3次元的に湾曲させるのが難しい紙素材で外殻の意匠を探っている。


建築と言うより、トランスフォームする機械仕掛けのヤドカリのよう。


最終形態にかなり近い。有機的な外殻の内部にマス状構造という流れは健在だ。




フランク・ゲーリーさんや、フォンダシオン館長のベルナール・アルノーさん的には、またこのインスタレーション自体から、フォンダシオンそのものが時間のプロジェクトだという心意気を感じる。コンセプト・パネルの言葉を借りると同フォンダシオンは「パリのための壮大な船」なのだそうだ。

このスペースに来るといつも思うけど、ビルの最上階のそこは天井高くてガラス張りの太陽光燦々で、元々の空間自体が気持ち良いから、気になる企画展があるとつい来たくなる(いつも撮影可なのも太っ腹)。で、そこに向かうエレベーター乗るのに1階の売場を抜けるのだけど、そこのおねーさん達は、およそ買物しなさそうな冷やかし(私)にも、非常な丁寧さと思慮で接するのは流石だ。ヴィトンやりおる。

http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/