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「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき

子どもが「幼稚園に行きたくない」という時期があった。毎日続いた。

理由を尋ねてもはっきりしない。うまく言葉にもできないのだろう。なんとか幼稚園まで行くと、先生や友だちと楽しく過ごしている様子だった。

そのとき、仕事には遅刻し、職場に迷惑をかけてしまうというイライラを、自分の思い通りにならない苛立ちを、子どもへの叱責で解消しようする自分がいた。

ひと月くらい経つと、子どもは「幼稚園に行きたくない」とは言わなくなった。

あれは何だったのだろう?また同じことが起きたら、どうすればいい?

この疑問と問題意識が頭に引っかかっていたときに、石井志昴の『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』という本に出合った。

石井志昴は、自身が中学2年生から不登校となり、フリースクールに通った経験を持つ。現在は日本で唯一の不登校の専門誌『不登校新聞』の編集長・代表理事として、400人以上の不登校の子どもや若者に取材を行なっている。

以下、石井の本で学んだことや考えたことを、備忘録として記録しておく。

子どもに見られる代表的なSOS

子どもが不登校になる前には、5つの代表的なSOSが発信されている。

  1. 体調不良

  2. 食欲不振

  3. 情緒不安定

  4. 宿題が手に付かない

  5. 不眠

我が子が「幼稚園に行きたくない」となったときは、トイレの不安を訴え、情緒不安定になっていた。

NGワード

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときに、控えた方がいいNGワードがある。

なんで学校に行けないの?

「学校で何があったの?」と聞いても、子どもが何も答えないときは、説明がしづらかったり、周りの人に受容してもらえない不安から言葉に詰まることがある。

にもかかわらず、そこを詰められると、子どもは追い詰められてしまう。子どもが言いづらそうにしているときには、無理に聞かないのがいい。

「もう少しがんばってみよう」、「もう少し様子を見てみよう」

石井は言う。

「もう少しがんばってみよう」と言われると、子どもはすごく苦しくなります。まわりの人が励ますつもりで言った言葉も、子どもを追い詰めてしまうのです。
石井志昴『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』ポプラ新書、2021年

子どもが「学校を休みたい」と言ってきたときは、休ませてみるのがいい。というのは、こまめに休んでいれば、長く引きこもることが回避できるのだ。逆につらいまま学校に通い続ける方が、子どもが受ける傷は圧倒的に深くなる。

判断が難しいときもありますが、親としての直感を信じてみてください。休んだほうがいいのか、休まないほうがいいのかで悩んだら、休ませてみるのがいいと思います。
前掲書

学校に行きたくない理由

「学校に行きたくない」という理由を子どもに強く聞けないとしても、親としては、やはり子どもが「学校に行きたくない」のはなぜなのか気になるところだ。

文部科学省「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」によると、子ども(小学生)が学校に行きたくない理由は以下の通りである。

第1位 友人との関係(46.9%)
第2位 先生との関係(29.7%)
第3位 身体の不調(26.5%)
第4位 生活リズムの乱れ(25.7%)
第5位 きっかけが何か自分でもよくわからない(25.5%)
第6位 勉強がわからない(22.0%)

実際には一つの理由で学校に行きたくなるわけではなく、いくつかの理由が複合的に重なり合っている。

友人との関係では「いじめ」問題がクローズアップされることも多い。いじめのピークは、10年前は中学1年生であったが、現在のピークは小学2年生であるというから驚きだ。

親にできること

子どもの気持ちにつきあう

子どもが学校に行かなくなると、親としてはあれこれと先回りして、言葉をかけたり、行動したくなったりするものだ。

だが、親にできることは少ない。厳しい現実だ。

親にできることは、苦しんでいる子どもの気持ちにつきあうこと。子どもに向き合うこと。これはとてもつらい時間です。
前掲書

子どもは、親の思い通りにコントロール(統制)されることではなく、親が自分の気持ちに寄り添ってくれることを望んでいる。

親としては、自分の理解の範疇に子どもの言動を押しはめるのではなく、自分の理解の範疇にないかもしれないことを受け止める必要があるのだ。

子どもとの雑談を楽しむ

石井によれば、18歳までの子どものための電話の相談機関「チャイルドライン」に寄せられる相談内容のトップ3にランクインしてくるのが、「雑談をしたい」であるという。そして、この傾向は10年ほど変わらないともいう。

  • 注意から会話を始めない

  • 相手が好きなことを聞く

出合いをつくる

教育学者の汐見稔行は、石井との対談で次のように述べている。

子どもたちをいろいろなところへ連れて行く。子どもがおもしろいと思うことに出合わせてやる。そういったことが親の仕事だと思っています。
前掲書

人生は、他人によってレールを敷かれて出来上がるものではない。遠回りや回り道をしたり、迷子になったりしながら、一人ひとりが素敵だと思える景色や好きな道を見つけていこうとするものだ。

もう一度、汐見の言葉に耳を傾けよう。

…(前略)…子どもがこんなにおもしろいことがある、こんなことが好きなんだというものを見つけて行くということを応援する。それが親の大事な務めかなと思っています。
前掲書

宮崎駿は、2013年の引退会見で「すべての作品を通して伝えようと意識してきたメッセージは?」と聞かれて、次のように答えた。

僕は児童文学の多くの作品に影響を受けてこの世界に入ったので、基本的に子供たちに「この世は生きるに値するんだ」ということを伝えるのが自分たちの仕事の根幹になければいけないと思ってきた。それはいまも変わらない。
宮崎駿引退会見(2013年)

「この世は生きるに値する」

子どもがそう思ってくれたら、それ以上は何もいらない。

ほんとにそうだ。答えはいつだってシンプルだ。

けれども、いつだってぼくらは複雑に考えを巡らせて、悩んでしまう。

その悩みだって、子どもとの出合いがなければ、生まれていないものだ。

我が子との出合いの瞬間、ぼくは感動していた。

迷ったら、感動する方を選べばいい。そうすれば、きっとうまくいく。

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