Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/06/04 第399号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

本号は399号です。ということは、来週は400号ですね。キリ番です。あと、当メルマガは2010年の10月からスタートしているので、数ヶ月もすれば8周年を迎えることになります。

せっかくの節目ですので、何かしらイベントをやりたい気持ちもありながら、でもあまりそういう活動はこのメルマガらしくないかな、という気持ちも両方あります。

もし、当面の原稿が無事脱稿し、出版までスムーズに流れるならば、どこかのタイミングで出版記念イベント(というかなんというか)をやるかもしれません。もちろん、そういうのは「取らぬ狸」のなんとやらですので、まずは当面の原稿を書き上げるところからですが。

来週はもしかしたら、特別号になるかもしれません。お楽しみに。

〜〜〜シン・切り口〜〜〜

当面の原稿は、終わりに向かって近づいていますが、現実が止まることはありません。新しい情報が、新しい考えが、新しい体験が生まれ続けています。

そうなると、原稿に関して新しく書くことを思いつくことも当然あります。実際ありました。

その思いついたことをテーマに放り込んでみると、まったく新しい構成の立て方ができそうな予感があります。言い換えれば、新しい企画書を書けそうです。本の書き方というのは、実に面白いものです。アイデアひとつでがらりと変わってしまいます。

ただし、今回そのアイデアは見送りました。

第一に、すでに現状の原稿はしっかり固まりつつあるのに対して、新しい構成案がうまく固まるかどうかはまったく未知であり、ここでの変更は博打すぎること。第二に、新しいコンセプトは、既存のコンセプトからかなりズレることになるので、求められている本とは違ってしまうこと。この二つが理由です。

以前、執筆の途中で構成案をまるっと変えた話をしましたが、あのときは既存のコンセプトの変化はなく、変えたのは見せ方だけでした。コンビニで言えば、棚の配置を変えたらお客さんが買い物しやすくなりますよね、という程度のことで、変更の度合いで言えば大したものではありません(作業はたいしたものですが)。

しかし、今回の変更は、「コンビニをやめてドラッグストアにしましょうか」くらいの話なので、さすがにそれは無謀すぎます。

ただ、面白そうな切り口であることは間違いないので、手持ちの他の関連するアイデアと組み合わせて、うまく使えないだろうかな、ということは考えています。こうやって、書けば書くほど、書きたいことが増えていくわけです。

〜〜〜『インボックス・ゼロ』本〜〜〜

Lifehacking.jpの堀さんが、セルフパブリッシングで本を出版されました。

販売ページは、以下。

告知ページは、以下。

いまのところ、いろいろなものが「それどころではない」扱いになっているので、この本もまだじっくりは拝見していないのですが、とりあえず一つの段落が短く設定されていて(たぶん140字以内)、テンポ良くサクサク読めるようには工夫されているな、と感じました。

脱稿後に、顕微鏡で覗くみたいにじっくり拝見したいところです。

〜〜〜アウトプットとインプット〜〜〜

私はかなり教えたがりなのですが、知りたがりでもあります。

で、これって相関するのかな、ということが気になりました。

蘊蓄好きな人って、知識を収集するのも好きですが、それを(興味のなさそうな人にまで)ペラペラ喋るの好きですよね。

そもそも知識がなければ教えることは不可能なわけので、完全に独立したパラメータではないでしょうが、「知りたがりだけども、人に何かを教えること(伝えること)にはいっさいの興味も関心もない」という人はいるんでしょうかね。気になります。

〜〜〜「誰でもできる」〜〜〜

コンテンツの謳い文句で「誰でもできる」という表現がよく使われます。

この「誰でもできる」は、シンプルに考えると、

・参加において資格などが要求されない
・誰でも最低限の結果が得られる

の二つの意味があるように思います。

前者は、ゲートキーパーがおらず、望めば誰でもその行為に関与できるという意味で、後者は、実行さえすれば最低限「できる」という結果を誰でも享受できるという意味です。

世の中に存在するほとんどのことは、前者の意味で「誰でもできる」ことではありますが、後者のような意味での「誰でもできる」ことはあまりありません。なにせ人は能力も置かれている環境もさまざまだからです。

たとえば、日本に住む人は誰でもラーメン屋をはじめることはできます。それを阻害する法律はありません。かといって、誰でもが「ラーメン屋」としてやっていけるかはまた別の話でしょう。

考えてみれば至極当たり前のことなのですが、「誰でもできる」という謳い文句は二つの話の境界線を曖昧にしてしまうような効能があります。見かけたら注意したほうがよいでしょう。それは、どちらの意味で言っているのか、と。

〜〜〜何をしている人?〜〜〜

先日誕生日だったのですが、「PrivateWatchTV」という動画番組の記念すべき第百回で祝っていただきました。ありがとうございます。

で、動画の中で 「あらためて倉下さんって何している人なのかを説明しようとすると難しいですね」とおっしゃっていたのですが、まさにその通りです。なにせ本人がそれをうまく説明できません。

「ビジネス書作家」というと微妙に違いますし、「小説家・作家」ともやっぱり違います。「ブロガー」であることは間違いありませんが、それで充分に説明したことにはならないでしょう。

だからこそ「物書き」という肩書きを使っています。というか、これ以外に言いようがない、という感じです。

まあ、肩書きなんて別に何だっていいことは間違いありません。別段、誰かに自分のことを説明するために生きているわけでもありません。大切なのは、自分が何を生み出すのかであり、そのことをしっかり考えて生きていきたいところです。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりでも考えてみてください。

Q. 「文章を書くこと」を、別の行為にたとえるとしたら、何を持ち出しますか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2018/06/04 第399号の目次
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○「作業をメモから始める」 #メモから始める仕事術
 仕事を進める上でメモをどう扱うのかについての限定企画です。

○「主夫のお仕事」 #エッセイ
 家庭の話に関するエッセイです。

○「執筆のメタファ」 #今週の一冊
 Rashitaの本棚から一冊紹介するコーナー。新刊あり古本あり。

○「知的生産の技術の分類」 #知的生産の技術
 物を書くことや考えることについてのエッセイです。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「作業をメモから始める」 #メモから始める仕事術

前回は、一日の最初に「その日に関するメモ」を作るメソッドを紹介しました。

そうしたメモを作り終えたら、あとは作業を始めるだけです。

今回は作業時のメモにトライしてみましょう。

〜〜〜

作業を行う場合でも、メモは有効です。作業を始める前だけでなく、作業中、作業後ともに有効です。特に、不慣れな作業ほど、有効性は上がります。

まずは、作業前のメモから。

一日をメモから始めたように、作業もまたメモから始めてみましょう。

今からどんな作業をするのか、どのように進めようと思っているのか、その時点で考えていることは何か。頭に思いつくことを、ありったけ外に出してしまいます。

そうしてメモを書き出していくと、一日メモと同じように、行動のシミュレーションが発動します。手順が脳内に想起されるのです。また、後々の作業で必要となる情報を書き出しておけば、脳の負荷も下がります。MPを節約するためには大切なことです。

逆に言えば、日常的に繰り返しているような作業の場合は、こうした書き出しは必要ありません。手順が脳内に焼き込まれているので、そのまま行動に移ってもよいでしょう。ポイントは、なんとなく取りかかりにくいなと感じるタスクについて、メモを作ってしまうことです。これで、着手の敷居がぐんと下がります。

〜〜〜

続いて、作業中のメモ。

作業中のメモは、作業の内容に関するメモと、作業の内容に関係しないメモの二種類があります。

作業内容に関係するメモについては、実行したことで何が起きたのか、どんな結果が生じたのかをメモします。一つのログです。

作業内容に関係しないメモは、連想して思いついたこと、突然閃いたことを書きます。人間の脳は、まっすぐ一本には走ってくれないので、関係ないことをいろいろ思いつきますが、それもしっかりキャッチしておきましょう。

できれば、内容に関係しないメモについては、そうしたものを保存する別の場所に書き留めたいところではありますが、そのような余裕がない場合は、気にせず同じ場所にメモしておきましょう。分類は大切ですが、それ以上に書き留めることが大切です。書き留めてしまえば、あとはどうにでもなります。

とは言え、この問題は「作業メモ」に関して難しい問題を含んでいます。一日メモと、作業メモはどこで管理するのか。もし量が少なければ、すべてを一日用のメモに書いてしまえばよいでしょう。そうでない場合は、作業ごとにファイルやノートを作り書き留めていくことになります。

ただし、何かしらの作業中にいったん手を止め、別の作業のファイルを取り出して、そこに書き込むという作業はあまり現実的ではありません。可能ではあるでしょうが、認知スイッチの切り替えにコストがかかりますし、それはつまり面倒でやらなくなる可能性が大、ということです。

そう考えれば、とりあえず手近なところに書き留めておき、その後に処理・分類するのが実際的な運用ではあるでしょう。あるいは、すべてのメモを書き留める単一の媒体を持っておき、そこに何でもかんでもひたすら書き込む方法もあります。

とは言え、そうして雑多に書き込んだものは、後からの利用が難しくなるので、タグ(ラベル)で選り分けることが必要となります。手間を省くための方法を行うために、新しい手間が発生する。本末転倒ではありますが、どうしようもありません。

このようなタグ(ラベル)を使う場合は、一般的にデジタルツールでの運用が想定されますが、アナログツールであっても、記号やマークを使えば、ある程度の選り分けは可能です。また、付箋を一緒に使うことで、「とりあえず一カ所に書き込んでおき、それを後で移動させる」ことも簡易にはできます。

上記のように、メモの扱いは簡単ではありません。「朝に書く一日メモ」に関しては書き場所に悩みませんが、そこに作業メモが入ってくると、混乱が生じ始めますこの点に関しては、もう少し研究が必要でしょう。

とりあえずは、書き込むことを第一目標とし、その後の処理についてはなるべく低コストで行う方法を模索していきましょう。

〜〜〜

では、最後の作業後のメモです。

作業が終わったあとに、作業全体の結果がどうであったのか、次にすべきことは何なのかを書き留めます。いわば、次回の自分への引き継ぎメモです。そうした記述を一つ残してあるだけで、次回の自分の認知経済性は変わってきます。当然のように、こうした作業後のメモを残しているならば、作業の開始はメモの書き込みからではなく、メモの読み返しからとなります。とは言え、どちらにせよメモから始まることは間違いありません。

こうしたメモは、連続ドラマなどの冒頭にある「前回までのあらすじ」に相当すると言ってよいでしょう。そうした記述があれば、多少時間が空いていても、自分がやったこと・やろうとしていたことを思い出せますし、それが作業への取り組み方を変えてくれます。

〜〜〜

繰り返しますが、毎日当たり前のように繰り返している作業に対しては、ここまでやる必要はありません。せいぜい作業中に思いついた関係ないことを書き留めるだけで充分です。

しかし、もし間隔が空くような行為、連続性が重要な行為、若干苦手意識を感じているような行為に関しては、まずはメモから始めてみるのがよいでしょう。

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倉下忠憲

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倉下忠憲

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