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全裸の呼び声 -55- #ppslgr

 屈強な全裸の集団が、あたかも孔雀の尾羽飾りのごとく一斉に裸体をさらけ出し見せつけるのはとても愉快な心地のする見世物ではないだろう。だが、異常存在にさんざん遭遇した黒い男には、いささかの動揺ももたらすことはない。

 露出者達が一斉に空中ポージング行為に及ぶのと同時に、レイヴンもまたコートをひるがえしはためかせた。続いて、一発に数えるにはやや尾を引く銃声が鳴った。ぼとぼとと、殺虫剤にさらされた蚊柱めいて落下する露出者の群れ。濡れた路面に、がしゃがしゃと音を伴ってスライドレールが後退しきったヤクザ・チャカが立て続けに落下する。

 刹那の瞬間起こったことはこうだ。彼はコートの内側に目いっぱい詰め込んでいた押収チャカを片っ端から宙に放り投げて、目の前に来た順にぶっ放しては手放したのだ。銃器の発砲でなければ見事な、曲芸としてサーカスの前座くらいは務められるだろう。そして吐き出された鋼鉄の猟犬たちは、過たず不審露出者の局部、股間に食らいついたのである。たとえ強靭なる肉体をもってしても、筋肉も脂肪もなく、ましてや神経の集積地である股間のダメージは耐えようがない。

 アノートは哀れに落下する犠牲者を踏み台として蹴り渡ったのち、もろともに落下するところだった被害者の女性を抱き留めふわりと重量を感じさせぬ軽さで鮮やかに着地する。見事なワザマエである。

「……どーも」
「どういたしまして」

 救助が滞りなく行われたのを見届けると、レイヴンとラオは油断なく撃墜された露出者達を見回した。驚くべきことに、戦闘不能こそ免れなかったものの全員生存している。露出による身体強化恐るべし。

「な……なんと非道な……人の心はないのか……」
「他人のタマより自分のタマだ。決まっているだろう?」

 痙攣と共に怨嗟を吐き出す神輿代表の露出者に言い返してやると、レイヴンはその男の首根っこをつかんでつるし上げた。

「さて、どうせ大したことも知らないだろうが、答え合わせはさせてもらおう。お前たちはここ数日で露出会に参加、最優先の任務としてここドブヶ丘における特別な女性を探し出して拘束、拉致するように命じられた。だが、明確な特徴は伝えられず、それなりに数もいるここの住人を訪ね回るにも警戒されてしまってうまくいかない。そこで、あてずっぽうに神職の人間をかっさらったんだろう。合っているか?」
「なっ、ばっ、どうしてそこまで!?」
「いいリアクションありがとう。合っているようで何よりだ。悪あがきしないのなら命までは獲らない、おとなしく帰るんだな」

 自慢の協力戦法を打破され、活動の狙いまで見透かされた上に一人残らず局部を撃ち抜かれたとあってはもはや連中に反抗の意思などあるはずもなく、よろめく同胞を支えあってほうほうのていで逃げ去っていった。

「良かったのかの」
「ええ。彼らも即席で洗脳された被害者の側です。詳しい情報を与えられず、的外れの相手を捕縛していたのが何よりの証でしょう」
「ほう……しかし彼奴らの露出は決して一朝一夕の物ではなかった。つまり、ほんのわずかな期間でああも練られた露出戦士にしてしまうということじゃな」
「練られた露出戦士ってなんなんだまったく」

【全裸の呼び声 -55-:終わり|-56-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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