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全裸の呼び声 -43- #ppslgr

「レイヴン、無事なのかい。自爆したのに?」
「自爆は自殺じゃないから死ぬとは限らない」

「とんだ屁理屈だ」
「まあそうだな、とはいえ……」

 アノートの後に続いて隣のビル屋上に滑り落ちた黒いのは、普段の挙動の見る影もなく転倒した。夜闇に紛れていても彼の右腕が欠けているのは明白だった。本来なら、彼はこの程度のダメージを瞬時に修復出来るわけで、損耗が限界に来ているのも事実である。

「本当に手札は打ち止め、後は頼む」
「任されて」

 それだけ言い捨てて、レイヴンは仰向けに転がった。程なくして、ゆでダコめいて赤黒く染まった巨大気球タコが、夜空を埋め尽くさんばかりに屋上へと追いすがる。

「中々驚かせてくれたが、小生は全くの無事!それに引き換えそちらの片割れはもはや戦えまい!結局勝つのは小生というわけだなぁ!」
「それはどうかな、そっちもせっかくの触手を切り離して消耗してるんじゃないかい?」
「……確かに!だが小生のほうが依然として有利なのだーッ!」

 巨大気球ダコと化したオク・ダークがいっそう膨れると、工業パイプめいた漏斗口から暗黒の奔流が放出!ドッジロール回避した教授をかすめ隣接ビルを薙ぎ払う!

「……ッ!」
「コレこの通り!小生は空中!射撃!貴様は地べた!近接!どっちが勝つかなど明白よーッ!」
「君キャラ変わってない?」

 とはいえ、実際不利なのも確か。このまま好きにさせれば戦闘不能になってるレイヴンが被弾するし、何よりこちらの決定打は何一つとして届かない。それを解決する策はあるが、いきなりぶっ放しても避けられるか防がれる公算は高い。

(何か一つ気を引きたいところだけど、どうするかな)

 数こそ大幅に減らし一般タコ程度になりつつも、脅威には変わりない触手槍をいなし躱しながらに隙を伺う。今はアノート一人に矛先が向いているため、攻撃が分散する様子もない。

「どうしたどうした!そろって達者なのは口だけか、んんー?」

 オク・ダークが勝ちを確信しつつも、攻撃は緩めない。アノートが一か八か切り札を切る博打を切る覚悟を決めた頃合いに、かがやきは舞い降りた。オク・ダークの、眉間とも言うべき眼と眼のちょうど……ど真ん中にだ。

「見つけたぞ!露出会幹部!」
「ぬーっ!貴様はまさか!光の露出者!」
「さよう!今度こそ貴様たちの陰謀を白状してもらおう!」
「シューッハッハッハッハ!こしゃくなり!」

 狙ってか偶然か、闖入者にオク・ダークの気がそれた瞬間をアノートは見逃さなかった。彼が指を弾くと同時にひび割れた屋上の床がテクスチャバグめいて盛り上がり、無機質な砲に変わる。装填されているのは巨大な銛だ。そして間髪入れず、現れた殺戮捕鯨砲は込められた弾丸を撃ち出した。射線はオク・ダークの眉間ど真ん中だ。

「裸ーッ!」

 すわ巻き添えか……と思いきや、輝ける光の露出者は突如ブリッジ体勢!彼の真上を巨大銛が通り過ぎる!行き先は変わらず巨大タコの顔面!

「ギョワーッ!?」

【全裸の呼び声 -43-:終わり|-44-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

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