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憧れという感情は例外なく全て不毛だ ~ライヴパフォーマンスをもっと良くするために考えたこと~

11/26

青春ストリップ vol.9 〜魔法の副作用〜@高円寺THUNDERという、弾き語り等のイベントを観てきた。

弾き語り(や、私がやっているポエトリーリーディング)は、人間存在全体がコンテンツになる。いくら楽曲が良くて歌と楽器が上手くても「ハイ、うまいね」で終わることもあるし、逆に上記が全部ダメでも、それ以外の要素によってグッときてしまうこともある。

MC、表情、服、動き、場の支配の仕方など、全部を使って楽しませなければいけない/全部を使って楽しませれば良い。それを良く学べた日だった。


■笹口騒音ハーモニカ、私が22歳くらいのころからずーっとずーっと観てる人。太平洋不知火楽団、うみのて等、数あるバンドを率いてきた名曲メイカーであると同時に相当のライヴ巧者。もともと「弾き語りの時は、歌より話の方が多い」(本人談)ほどの話術巧みな人なのだが、昨日は改めてそれを実感。

はじめ、司会者に「いよいよ本日のメインゲスト、笹口先生です」みたいに持ち上げられた上に、しっとりした曲が数曲続いたから、すっかりかしこまっちゃった客に対し、いきなり「イエーイ!」と唐突に叫んでみて失笑とともに場を砕いたり(しかもその後「外は寒いですが、皆さんの熱気でここだけは真夏のようですね!!」というクサいMCをやって「夏のセミ」の曲に繋げる…という手腕)、声のでかい酔っ払いのせいでゆるんでしまった場を「次は僕の持ち歌の中で一番良いやつやります」と言って一瞬で引き締めるなど、場の作り方が本当にうまかった。

弾き語りは世界一つまらない音楽形態だ、みたいなことを大森靖子が言っていた、と、誰かから又聞きしたことがある(いかにも彼女が言いそうなことだ)。だからこそ、曲以外で如何に聞かせるか、が大事だ。どんなに良い曲でも羅列するだけじゃ退屈しちゃうからね。


■ビート武田 彼のバンドのCDのライナーノーツを、私が書いていたりする、朋友。彼のサウンドクラウドを全部聞いてるのは私くらいなものだろう、めちゃめちゃ良い曲が落ちてるのにバンドでできない/やらないものばかりで勿体ない。

エモい曲をやるくせに自分で台無しのオチをつけたり、唐突に「バイト先のコールセンターでフレッツ光を売ってるんですけど、全然売れなくてクビになりました、今から実演するんで皆さん目をつぶって聞いて、どこが悪かったか教えてください」と言い出したり、まーあ飽きさせない 客が少ないとこういうことが出来て楽しいよね 

ほんと弾き語りって、それ単独じゃ聞く気にならないほどに退屈なメディアだから、人間存在全体を愛されるか、めちゃめちゃコンテンツ力のあるMCをするかして気を惹くしかないと思うんだけど、昨日の彼は両方うまいことやってたのではないか。私は愛されるのが苦手なので、大体後者の作戦をとる


■そして工藤ちゃん。この日一番私に爪跡を残したのは彼女だった。

正直、歌も下手だし曲も悪いし、歌詞は(そもそもメロへの「つき」が悪過ぎて)かなり聞き取れない。たまに聞き取れる歌詞も「悪魔」とか「キティ」とか、大森靖子頻出語彙をあまりに素直に借り過ぎている(彼女は大森靖子の大ファンであることをかなり強めに公言している)。同じく大森靖子ヘビーリスナーの私は、どの歌のどこから何を持ってきたか大体わかっちゃう。

歌う時は全然こっちを観ないで、子どもがむずかるような姿勢と声で「才能無い」とか「いい歌できない」とかずっと歌ってる。

正直わたしは、前評判として「突然水着になる」とか「チェキで月●万稼いでる」とかいうセンセーショナルな内容ばかり聞いていたので、もっと手練れた人なのかと思っていた、が、なんか、そうじゃなくて、本当に、大森靖子になりたくてなれなくて、頑張ってるけど全然到達できなくて(そりゃそうだ彼女はめったに現れない化け物級なのだから)、でも、初期の彼女を見習って毎日鬼ブッキングしてライヴしている、

つまり「現在進行形で何者かになりたくてなれなくてもがいている人」なのでは? と思った時に、ずぎゅーんときてしまった。




MCでもずっと「笹口さんや武田さんの弾き語りすごく良かったのに、私は『ダブルブッキングだったから』っていう理由だけで後の出番になってしまって申し訳ない」とか「もう遅い時間なんで途中で帰られても『あ、終電なんだな』と思ってあんまり傷つかないんで大丈夫です」とか、終始ネガティブだった。

本当に自己査定低いんだな、そこまで低くしなくても、いやでも大森靖子になりたくて毎日ライヴしても辿り着けないとしたらそりゃそうもなるか……これはチェキの1枚でも撮って応援したくなるおっさんの気持ちめちゃわかる、てか私が男だったら何かのはずみでうっかり惚れてしまうかもしれない、そして惚れたことにすごく自己嫌悪するんだと思う。なんかとにかく、それくらいヒリヒリくる人。

11/24の対バンの時は「神秘の生命体」と書いた。その言葉に訂正は無い。神秘の生命体。

無理めなものに憧れることは、いや、憧れという感情は例外なくすべて不毛である、と、私は年を食って学んだ。でもこういうのは他人に教えられるものじゃない、自分で学ぶときに学ぶしかない。

本当にお節介で申し訳ないが、「大丈夫だよ」「頑張って」「そのままでもいいんじゃない」とついつい言いたくなっちゃう、ということも、もちろん、その人の/その人のステージの魅力である(ただしもちろん、音楽の魅力ではない)。

才能の無さや歌の下手さを見せて庇護欲をそそるのはアイドルによくある手法だが、彼女はもっと、切実でシャレにならない生き様が透けてた。

終演後、すっげえ話しかけたかったけど、チェキ撮ってるお客さんが二人いて、無銭で話しかけるのも気が引けて黙って帰ってしまった。


弾き語りは人間存在の勝負だ。もちろんポエトリーリーディングも。私はどういうステージを、やっていくんだろうな


そんな渋澤怜の生き様が透けて見える次のライヴはこちらです

2016/12/19(月)新宿JAM 「音呑」 

棚木もみじ/キヤ(GRASAN ANIMAL)/尾崎信隆(アナトオル・フランス)/ハマノリョウ(ダムランド)/渋澤怜/ティンコティンコ and more!

TICKET¥1800 + [D別]


ライヴハウスで朗読ライヴです。ドアウェイです。でも正直ドアウェイの方が燃えます。弾き語りやバンドと戦ってきます。

小棚木もみじという少女の弾き語りは激オシなのでぜひ一緒に観てください。たぶん祭りっぽくなるDAYなので渋澤と話したりしたい人はこの日おすすめ。

場所に合わせて、大森靖子に捧げるネタと、サブカルチャーをぶっ殺すネタをやると思います。

みんなでサブカルチャーをぶっ殺そう!



あ、そういや昨日のイベントには催眠術師のとだともやさんも出演してまして。わたし、「わさびが生クリームになる」催眠術をかけてもらってわさびチューブを半分食べてしまいました…… あー楽しかった!

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