見出し画像

映画『ハチとパルマの物語』感想

予告編
 ↓


 本日4月29日は、”家族と暮らす動物の幸せを考える日” という記念日。パナソニックとsippo編集部が、保護犬猫の譲渡会を初めて行った日でもあるこの日を記念日にしたそうな。

 ちなみに、4・29で、”よいにくきゅうの日” でもあるみたいです。


 そんな本日は、『ハチとパルマの物語』という映画の感想文を投稿します。よければどうぞー。


ペット


 飼い主と離れ離れになってしまい、その後二年もの間、空港で飼い主の帰りを待ち続けた忠犬・パルマの実話を基にした物語。タイトルに ”忠犬ハチ公” が引き合いに出されていて……実を言うと、タイトルに「ハチ」が用いられている理由が未だにピンと来ていないのですが笑、まぁそんなことはどうでも良くて。あくまで注意事項として、誰もが知っている忠犬ハチ公にも負けず劣らずの忠犬が存在していたんですよ、というだけであって、本作はかの有名な忠犬ハチ公についての物語ではありません



 飼い主と離れ離れになってしまったパルマ。その新たな親代わりとしてパルマの面倒を見ることになる少年コーリャ(レオニド・バーソフ)は、不幸にも早くに母親を亡くし、それまでまともに面識も無かった父親ラザレ(ビクトル・ドブロヌラボフ)と共に暮らすことになる。しかしラザレは仕事で多忙な為、コーリャはいつも孤独感に苛まれていたように感じます。そんな彼がパルマのことを必死に保護し、守ろうとしていたのは、単に子供ながらの興味本位以上に、どこか自分と似た境遇のパルマに、自身を投影していたからなんじゃないかな。自分と同じように親(パルマにとっては飼い主)を失い、独りぼっちになってしまったと感じるパルマを救うことは、図らずもそういった境遇・心境の自分自身を救いたいという願望の表れなのだと。

全体的に説明的になっていたり、或いはちょっと古めというか一世代昔のドタバタ感を想起させるシーン(これはもしかすると時代設定に合わせたのかな?)や、パンが多めのカメラワーク等々、個人的に気になってしまった部分もありはしましたが、子供でも分かり易かったり、コーリャの辛い心情に引っ張られて物語全体が暗くなり過ぎないように配慮した結果なのかもしれません。この辺は良し悪しというよりは好みの範疇かな、と。



 パルマは基本的に行動が決まっている。主人が乗っているかもしれない飛行機の音が聞こえたら発着場に向かう、それ以外はただひたすら待つ。空港で暴れ回っていたようなシーンはあったが、それはパルマのお決まりの行動——主人が乗っているかもしれない飛行機を追う、飛行機が来るのをじっと待つ——を阻害する人々に抗っていただけ。だからこそ、観客はパルマの気持ちに寄り添いやすい気がします。というのも、全編を通して、パルマの周囲の人間の「今パルマは何を考えているんだろう」という視点で描かれているシーンが多かったためか、表情が無い犬の心情について「どう思っているのかな?」と推察することを観客に誘発しているような印象でした。

しかし最期の最後だけは、明確な意思を感じさせる動きによって、コーリャとの絆の深さを見せつけてくれます。



 とまぁ、感動させる雰囲気に誤魔化されかねないけど、犬を飼うこと、延いてはペットを飼うことについて考えさせられる物語です。


 「パルマの幸せを考えろ」——。

コーリャが父親から諭されたこの言葉が全てかもしれません。犬(ないしは動物・ペット)のために何かをしてあげたい、という想いと、そこから生まれる行動は、その動物の可愛さに絆された人間側のエゴに他ならない。自分の気持ちを優先し、心の穴を埋めるわがままに「その動物のためを想って」という偽りの大義名分を掲げてしまってやいないか。そんなことを感じてしまったのは、なにも僕が大学生時代にペットについて研究するゼミに入っていたからという訳ではありません。先述の「パルマの幸せを考えろ」という台詞だけではなく、本作の物語の終盤で描かれる内容も相俟ってのこと。

本作には、コーリャとパルマの物語のその後も描かれており、地味ながらも、この部分こそが一番大切なことなんじゃないかと思うのです。人間と犬、延いては人間とペット。家畜から始まり、長い歴史の中で、いつしか家族の一員と呼べるまでに大きな存在となったこの関係は、法律や環境など形こそ大きな変化はあれど、根本の部分では未だ同じままの、ある種のネオテニー。人間にとって彼らはどういった存在なのか。それを考えること自体は決して否定しないけど、これだけ長い間続いていながらも未だに判然としないのだ。僕なんかにはわかりゃしない。でも、ペットの気持ちをわかってあげるのではなく、「わかりたい」或いは「ペットにとっての幸せは何か」という想いこそが一番大切なんじゃないかな。


 ペットを飼っていない僕が言うのもおこがましいけど笑、本作は、ペットと人間を繋ぐ絆や気持ちの根幹を描いていたように思います。特に何が良いって、こういう内容を描いていながらも説教臭くないこと。


#映画 #映画感想 #映画感想文 #映画レビュー #コンテンツ会議 #犬 #ペット #忠犬 #ハチとパルマの物語

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?