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映画『レザボア・ドッグス』感想

予告編
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PG-12指定


選択


 新宿ピカデリーにて新年一発目の劇場鑑賞。昨年はクエンティン・タランティーノ監督の生誕60周年ってこともあり『パルプ・フィクション』(感想文リンク)が劇場公開されていましたが、まさか今年もタランティーノ監督の過去作を劇場で拝めるとは思わなんだ。こういう名作映画を劇場で(しかもデジタルリマスター版で)上映してくれるなんて、平成生まれの僕にとっては幸せこの上ないことです。


 元々好きではいたものの、今までは作品全体に漂う雰囲気だとか登場人物らの魅力に惹かれ、「なんとなく好き」でしかなかった『レザボア・ドッグス』。そんな本作の感想を今一度、真面目に言葉にしてみようと思ったのですが、これがなかなかに難しい笑。

 冒頭に描かれる、下世話な会話の数々。そして『Little Green Bag』が流れ出し……ってね、今さら改めて言葉にする必要もないくらい、最高にイカした傑作オープニングも魅力の一つ。


 そんな冒頭シーンでの会話が、本作をより一層に面白くしてくれていたような気がします。店のウエイトレスに「チップを払う/払わない」だのでMr.ピンク(スティーブ・ブシェミ)を中心に一味が一悶着するシーン。

 稼ぎの少ないウエイトレスの窮状にそれとなく理解を示しつつも、結局のところをその仕事を選択してしまった当人らの “自己責任” であるかのように語るピンクのセリフ……。彼がいみじくも口にしたその言葉にこそ、本作の肝があったんじゃないか、そんな気がします。

 すべてが自己責任であり、起きた出来事、起こり得る運命のほとんどが、まるで因果応報的に繋がっていくから本作は面白い。そしてそこに至るまでのストーリーを幾数人の視点、いくつもの時間軸を織り交ぜながら描いていく。だからこそ、主人公たちの運命の歯車が狂い出した瞬間——強盗の計画を実行していたシーン——を一切描いていなかったんじゃないかな。

 本作で描かれるのは、犯行後の混乱やメンバー同士の諍い、或いは犯行に至るまでの各々の道程といった事前事後の様子のみ。


 そういえば、登場人物の口にした言葉が物語の印象に大きな影響を与えるというのは、以前に投稿した『パルプ・フィクション』の感想文の中でも述べたことでした。描かれるシーンに言葉の意味を当てはめながら鑑賞するだけで、印象は大きく変わってくるもの。それは本作でも同様のこと。


強盗に入った店の店員が警報を鳴らしたから、ブロンド(マイケル・マドセン)は銃を撃った。

一方で、ブロンドが銃を撃ったせいで警察が来た、と主張する者もいた。

またある時は、「もし〇〇を撃ったらオマエを撃つ」という駆け引きのセリフが放たれるも、にも関わらず発砲したことによって撃ち返されてしまうこともあった……。


 いわゆる「たられば」かもしれませんが、警報を “鳴らさなかったら”、ブロンドは発砲していなかったかもしれない。或いは「もし〇〇を撃ったら~」と言われた時に、“銃をおろしていれば”、撃ち返されずに済んだかもしれない……。

 挙げれば切りがありませんが、本作で描かれる出来事の多くはそんな〈自己責任〉や〈因果応報〉的な展開ばかり。すべては当人たちそれぞれの “選択” の積み重ねが生み出した必然であるかのように思わされるんです。


 そんな〈自己責任〉を口にしていたピンク本人がどうだったかといえば、

「仕事を引き受けなきゃよかった」
「あんな奴と組まなきゃよかった」
「直感を信じていればよかった」……etc.

めちゃくちゃ “ほぞ” を噛むような男でした。

(※ネタバレ御免)
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 でも結果として、ピンクだけは無事に生き残る。確かに彼は自分の選択を〈自己責任〉として後悔するような男。でもだからこそ、選択が慎重だった。

「なぜ自分が “ピンク” なのか」と不満を口にしたり、「チップを払う必要が無い」とごねたりするものの、今回の計画を立案し、力も持っているジョー(ローレンス・ティアニー)にだけは強く逆らおうとはせず、大人しく “ピンク” のコードネームを受け入れるし、チップも払っていた。ピンクの存在こそが、本作における〈選択〉や〈自己責任〉という要素の大きさを際立たせていたように思います。


 そんなこともあり、(まぁ僕に限らずでしょうが)僕の推しキャラはMr.ピンクの一択。初めて本作を観たのは中学生だか高校生の時でしたが、本作をきっかけにスティーブ・ブシェミ出演作を片っ端から調べたのをよく覚えています。


 しかしながら、数年ぶり(或いは十数年ぶり?)に本作を観て改めて感じたのは、相変わらず推しキャラはMr.ピンクなものの、推しの組み合わせはMr.ホワイト(ハーベイ・カイテル)とMr.オレンジ(ティム・ロス)だったということ。

 ラストシーンでの各々の選択——「打ち明けること」を選択したオレンジと、「撃たないこと」を選択したホワイト——が、めちゃくちゃ良い鑑賞後感に繋がっていく。或いは「撃つ」という選択を “できなかった” とも言い換えられますが、本作で描かれたやり取りの数々と、このラストシーンによって、それぞれの何かしらの〈選択〉さえ違っていれば、この二人は親友のようになれていたのかもしれない、と思わされてしまったんです。

延いてはそれが、その選択をしてしまったことによる〈自己責任〉というワードをも浮き彫りにさせてくる……。


 いやぁ、なんと素晴らしい見応えでしょう。2024年もとても良い “映画初め” になりました。

 いや、正月休みにアマプラやらネトフリやらで映画を見漁っていたので、正確に言えば “映画館始め” かな?笑


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