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知の進化を俯瞰するギリシャ・ローマ史

アメリカのコロンビア大学で学ばれた中村聡一さんという方が書かれた「教養としてのギリシャ・ローマ」(東洋経済新報社)を読んだ。

ヨーロッパ文明がギリシャのクレタ島で起こったのが紀元前2000年頃。

そこからローマに至るまでの歴史を、ホメロスやヘロドトス、トゥキディデスといった叙述家、歴史家達の著書や、プラトン、アリストレスといった哲人達の主要な古典を元に紐解いていく。

各古典を読む際の歴史的背景や要点がクリアに整理されていて、なぜこの時代にこういう思想が生まれてきたのか、ということを俯瞰して理解することができる。

ソクラテス→プラトン→アリストレスという流れは、民主制国家の生まれたアテナイの盛衰にも重なり、民主制国家がうまく機能しなくなったタイミングで生まれた思想体系だ。

理想的な状態を目指し、少数のエリートが国を支配するべし、というプラトンの考えに対して、アリストレスは、あくまで国民の視点に立って、多くの理性的な国民を育てるべきだし、そのために政治のあり方が重要になるという立場を取っていた。

アリストレスは、その著書「ニコマコス倫理学」の中で、人間の魂を特徴づけるものとして、特に人々の倫理(エートス)の重要性を説いていた。

一定の倫理観に基づく、国民一人一人の日々の良い習慣こそが重要であるという考え方だ。

この古典がアメリカのエリート教育の必須図書として読まれているということに納得する一方、結局のところこうした思想がエリートにしか浸透していないということが、民主主義国家アメリカの脆さなのかもしれない。

だからこそ本書は、決してエリートでなくても読んでおいて損はないと思う一冊だと思うし、むしろ一般の人にこそ広く読まれるべき本だと思う。



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