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一冊一会。

今回は「本」。

「本は欲しいと思ったときに手に入れた方が良い」という名言がある。いや、ないか。誰かが言っていたような気もするけど覚えていないし、誰もこんなこと言っていないかもしれない。もっと言えば、本に限らず何だってそうかもしれないし、本だって後からいくらでも手に入れられる時代なのかもしれない。ただ、ここ最近の自分のポリシーのようでもあり、脅迫観念のようでもあるこの言葉が、ことあるごとにリフレインする。

実体験として、これまで何度もあった。テレビやネットなどで紹介されていて気になっていた本を本屋で見かけたとしても、躊躇して、スルーしてしまうことが多かった。次々と買うには決して安くはないお値段だったりもするし、まだ読んでいない本が自宅に山積みになっていたりすることが、手に持った本を一度棚に戻してしまう大きな要因だった。そういう本は、その後やっぱり読みたくなって探すけれど、もう見つからなかったり、変な値段が付いていたり、同じように後回しにされた本たちとの優先順位争いに巻き込まれているうちに、うやむやになる。そして結局いつまでたっても手元にくることなく、リストの1列に記されたまま、何年も読めず仕舞いになってしまう。

こういう、「あ、読みたいな」と思った本が、読むと必ずしも最高のエンターテインメントであるとは限らないから、さらにややこしい。即買いしようが、満を持して買おうが、読んでみたら全然入ってこないとか、まったく面白みを感じないとかは往々にしてある。だから躊躇うのだけど、ただ、それは実は自分側の要因も大いにあって、妙に読みにくいとかページが進まないと感じていた本が、別の機会に読んでみると、一気に自分の中に入り込んできて、些細な一文に妙に感動したりもする。きっと“その時の自分”との相性の問題ないんだろう。これは本に限らず、音楽や映画でも言える。手にしたタイミングが、必ずしも自分側の受け取れるタイミングと合致するかしないかは、体験してみないと分からないことが多い。だから、読み始めた本を面白いと感じないときは、読むのをやめる。衝動買いした本でも、欲しくて欲しくてやっと探して見つけた本でも、どうも読めないと思ったら、閉じる。そして置いておく。いつか、読める日がきっと来ると信じて。だから、欲しい本を見つけたら、とにかく手元に持っておくことを、世の中のすべての人に強くお勧めしたい!

ただ、この辺を、うちの家族の皆さんはあまり分かってくれていなかったようで、欲しいものを聞かれると十中八九「本!」と答える僕に呆れ顔で、ずっと読まずにいる本がぎっしり詰め込まれた本棚を不思議そうな顔で見ていたりもしたけど、もはやそれはもう通り越して、今年の誕生日にはストレートに「本」をいただいた。これには長年の努力が実った結果だと、少しだけ達成感すら覚えた。

そんな僕が最近また性懲りもなく買った本がある。雑誌2冊。小説や専門書なんかはまだ後から探せるけど、月刊など定期的・継続的に次々に発行されている雑誌は、特に一期一会感が強い。そういう認識から、本屋に限らず、ネットショッピングや近所のコンビニだろうが、欲しいと思ったら買うようになってしまった。

そのうちの1冊は「SWITCH」の「うたのことば」という歌詞に関する特集号。自称「シンガーソングライターノーカー」として活動している身としては興味を持たずにいられなかった。正直、松本隆さんのことはよく知らなかったし「はっぴぃえんど」は「CITY」のアナログ盤を1枚を持ってるだけで、曲もメンバーのことも詳しくは知らなかったけど、その経歴や作品と、その世界観や創作スタンスが詳しく書かれていてとても面白かった。他にもよく聞く「aiko」や「くるり」の岸田さんのページもあり、読み応え十分だった。参考に…なんて大それたことは言えないけれど、歌詞を書いたりするその端くれとして悩んだり迷ったりしている部分を勝手に重ね合わせたりして、楽しく読んだ。思い起こせば、大学のバンドサークルで先輩のバンドが女性ボーカルでカバーしていた「風をあつめて」を聞いたのがこの曲との出会いだったけなぁとか、当時のアパートに引っ越した頃にaikoの「桜の木の下」やくるりの「さよならストレンジャー」をヘビーローテーションしてたっけなぁなど、やはり大学時代に出会った音楽が、自分の人生に大きく影響しているんだなと思うと、本当にしみじみする。そんなことを思い出しながら、詞と曲だったら、どっちの方が得意だろうか、昔は詞の方が得意と言っていたな、今はもうどっちも得意ではないかも、何をどう書くのか何をどう書きたいのか絶賛彷徨い中だよなーなどと、とりとめもなくぐるぐると思考を巡らせる時間がとても有意義で貴重にも思えた。

もう1冊は「モノ・マガジン」の「コーヒー」特集。先日、長年愛用していたコーヒーメーカーを買い替えたのをきっかけに、また熱が少し上がっていたのでついついと。買い替える前に読むべきだったかなと思いつつも、購入したコーヒーメーカーがちゃんと誌面で紹介されていて少しニヤリとしたりなんかもして。これから先、豆や道具や淹れ方にそこまでこだわっていくつもりもないんだけど、知識として深堀りされたコーヒー界隈の話はとても面白い。飲むカップが変わるだけでも味の感じ方はだいぶ変わるし、たまにちゃんとドリップに挑戦してみるのも楽しいし。なかでも「おしゃべり豆」というタイトルの記事が印象的で、妙に残る一文があったり。映画「かもめ食堂」を久しぶりにまた見たくもなった。個人的には今号の後半に載っていた「一時給付金10万はこれに使おう!」みたいな特集も面白かった。眼鏡やイヤホンやら椅子やらベビーカーやら…それ1つに10万!?…そういう大人にいつかなれるのだろうかと、ふと遠くの空を見てしまったりもした。

この2冊は、先述の話でいうところの「今、相性が良かった本」。こういう染み入るような本を、衝動買いできたことはとても嬉しかったけど、そればかり求めていると、散財してしまうこともしばしばなので、気持ちも財布も引き締めては行きたいところ…。実際、読みたい本はまだまだある。雨が降って仕事が出来ないちょっとした合間に、本屋やらコンビニやら図書館やら古本屋やら、楽しいけれど危険でもある場所をうろつき、運命の出会いを求める日々は、これからもまだまだ続いてゆく…。

そんな読みたい本がありすぎるからというわけではないけど、毎週更新していたこのブログは、諸事情によりひとまず今週までとして、来週からはお休みします。また機会があれば定期的に書いてみたいと思いますので、その時はまたよろしくお願いいたします。

それでは今回はこの辺で。またそのうちに。

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