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僕のマイグラディエーション。

今回は「卒業」について。

 

3月ということで、あちこちから卒業式の話を耳にする機会が増えた。小学校の卒業式でも大学生のような袴を着るだとか、知らない歌が定番になっているとか、自分たちの頃と比べてだいぶ変わっているということは、すでによく聞く話ではあったけど、コロナ禍ではディスタンスだのリモートだの、親は一人までとか、在校生は参加しないとか、状況に合わせていろいろ変わっていってるようだ。当事者からしたら、卒業式どころではなく、学生生活自体が大きな変化を強いられ、今さら動じることもないのかもしれないけど、自分たちの頃を思い出すと、普通だと思ったていたことのすべてが、恵まれていたんだなとつくづく思う。

だからと言って、これまでの卒業式に華やかな思い出があるかと言えば、そんなことは全然なかった。

小学校の卒業式では、式後の教室での最後の帰りの会で、僕は泣いてしまった。男子はもちろん女子もあまり泣いていないのに、どうせみんな同じ地元の中学校にそのまま進学するのに、感極まってしまったんだろう。もともと涙もろい質ではあったのだけど、涙目で母親と合流した時の写真が確か残っていて、思い出すたびに少し恥ずかしい。

中学校では、制服が学ランで、いわゆる「第2ボタン」的な慣習がまだまだ根強い時代だったこともあり、おじさんみたいなでかい眼鏡をかけた冴えない赤間少年でも、心のどこかではそういう展開を期待していた。だがしかし、やはりそんなことは起きるわけもなく、第2どころかボタンをすべて取られた同じバスケ部の同級生を横目に、第1ボタンまでしっかり留めたまま、まっすぐ母親と合流し帰宅した記憶…これもまた思い出すと少し切ない。

高校は高校で、私服だったし、というかそれ以前に男子校だったし…。胸をときめかせるような青い春は幻のまま、男同士で写真を撮り合って終わってしまった。

それでも、大学でようやく楽しかった思い出を作れた。式典の後の立食パーティーみたいなものがあって、例年、音楽系のサークルの先輩方がステージで何かしらやっているのを倣い、僕もアコギを持ち込んで、当時組んでいたバンドの後輩たちと一緒にスピッツの「チェリー」を歌った。もしかしたらあれが自分史上最大キャパの会場&観客のライブになるかもしれない(いやライブではなく半強制的に聞かせたようなものだけど)。

こうしてつらつら書いていたら、頭の中でエンドレスでめぐっていた卒業ソングがある。この流れだと、唯一楽しかった思い出の「チェリー」かと言えばそうではなく、もちろん尾崎豊の「卒業」のような、夜の校舎の窓ガラスを割りまくる激情の溢れるものでも、松任谷由実「卒業写真」のような、時折振り返ってキラキラ感を懐かしむきれいなものでもなく、それはSPEEDの「my graduation」だった。世代によっては知らない人もいるかもしれないけど、僕が高校生だった90年代後半にめちゃくちゃ流行っていた曲。当時はタイトルからしても、「正真正銘の卒業ソングだ!」と思って疑いもせずによく聞いていた。懐かしい!と思って改めて聞き返してみたのだけど、よく歌詞を見てみると、「学校の卒業」というよりは、「恋愛における卒業的なもの」を歌っているように思えて当時ほどしっくりこないし、それよりサビのラストの歌詞「私のmy graduation」が、今となってはどうにも気になってしょうがない。「私のmy」って…でもまぁ、こんな「モヤモヤ感」も含めて、僕の「卒業」感に一番近い気がした。何かしらの不完全燃焼感が漂っていたような…。いやぁでもほんとに懐かしい。SPEED好きだったしCDも持ってたしよく聞いてたしバスケ部の友達とライブにも行ったし…若気の至りがあれこれ浮かび上がる…。(探したらSPEEDのCDまだ持ってたし、チェリーのCDもまだ持ってた!このタイプ懐かしい…カップリングの「バニーガール」もいい曲なんだよな…)

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そんな僕は、ここしばらくは「卒業」していない。「入学」もしてないんだからしょうがないし、何かダメな習慣を止めたこともない。この歳になればだいたい皆そういうものかもしれない。前職を辞めて就農した時も、約9年半のサラリーマン生活にある程度の達成感はあったけど、ほとんどの業務を途中のまま、後輩に引き継ぎだけして去ったので、やはり「卒業」とは呼べない。もはや「脱走」に近かったのかも…。

そう考えると、満足のいく「卒業」って、実は結構、というかかなり難しいものかもしれないと気付かされる。卒業した気になっていただけで(一応、ちゃんと「卒業」してはいるのだけど)、本質は怪しいように思えてくる。そういう意味では、これからちゃんと卒業し直すこともできなくはないか…?部活はさすがに無理だけど、勉強し直すことはいつでもできる。大学の時に、卒業するためにどうにか書き上げたような卒論とかね。一応、作物学専攻だったので「水田の水管理に関する研究」にしたのだけど、今の仕事でまったく関係ない内容でもないから、そういう何かしらを納得いく形でいつかやり直して、そしてやり遂げて、「僕のmy graduation」のモヤモヤを少しでも晴らせたらなと思う。

それにしても確かに輝きは色褪せないねーと思いつつ、ひとまず今回はこの辺で。またそのうちに。


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