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2010年代の空気を20曲で振り返る

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2010年代の空気を20曲で振り返る:企画趣旨と目次

2010年代の空気を20曲で振り返る:企画趣旨と目次

昨年こんなツイートをしてから、急に仕事が忙しくなったりして完成が危ぶまれたのですが…

年内には間に合わなかったのですが、一応何とか完成したのでこちらにアップします。様々な変化のあった2010年代について、20曲の楽曲を起点に振り返りました。

以下に20曲と付随するテーマ、各記事のリンクを貼ってあります。本編に入る前に少しだけ注釈を。

こういう「頼まれてもいないのに書いている文章」をやっている

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2010年代の20曲 _ ①ASIAN KUNG-FU GENERATION 「ソラニン」 (2010)

2010年代の20曲 _ ①ASIAN KUNG-FU GENERATION 「ソラニン」 (2010)

※企画趣旨はこちら

「ぬるい幸せがだらっと続いたりする」わけない 2010年4月公開の映画『ソラニン』に合わせてリリースされた曲ということで、2010年代の幕開けとほぼ同時に発表された楽曲ということになる。結論から述べると、この曲を「2010年代の空気を表す曲」として扱うのはやや不適切だろう。グループ内での楽曲人気投票で1位となるなどバンドにとっても重要度の高いこの曲がまとっているのは、「きっと

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2010年代の20曲 _ ②ももいろクローバー 「行くぜっ!怪盗少女」 (2010)

2010年代の20曲 _ ②ももいろクローバー 「行くぜっ!怪盗少女」 (2010)

※企画趣旨はこちら

「もはやアイドルではない」の系譜 「2010年代はAKB48の時代だった」という切り口の話を今回の20本の記事の中で何度かすることになるはずだが、そんな「メインストリーム」に対しては当然「カウンター」も登場する。「会いに行けるアイドル」という当時は新鮮に響いたキャッチコピーを明らかにトレースした「今会えるアイドル」という旗印を掲げたももいろクローバーもその一群に含まれるグル

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2010年代の20曲 _ ③FUNKY MONKEY BABYS 「あとひとつ」 (2010)

2010年代の20曲 _ ③FUNKY MONKEY BABYS 「あとひとつ」 (2010)

※企画趣旨はこちら

絆キズナうるせえ「熱いメッセージでリスナーの心を奮い立たせる」的な機能に特化した楽曲でゼロ年代後半から支持を集めたファンモン。「人気絶頂の2013年、東京ドーム公演で解散」というストーリーが語られることもあるが、終盤の楽曲のチャートアクションを確認すると全盛期から大きくトーンダウンしていることがわかる。聴きやすいトラックに乗せて「愛」や「夢」をわかりやすい歌詞で歌うグループが

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2010年代の20曲 _ ④AKB48 「フライングゲット」 (2011)

2010年代の20曲 _ ④AKB48 「フライングゲット」 (2011)

※企画趣旨はこちら

AKBのセンター、時代のセンター2010年代はAKB48の時代だった----こう掲げたときに嫌な顔をする人たちが一定数存在するはずだが、こと「数字」に着目すればこの事実から逃れることはできない。オリコンのシングル売上チャートで初めて年間1位に立ったのが2010年の「Beginner」。以来、2019年に至るまで全ての年の1位がAKB48である。それを見た「正義感の強い人たち」

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2010年代の20曲 _ ⑤tofubeats 「水星」 (2012)

2010年代の20曲 _ ⑤tofubeats 「水星」 (2012)

※企画趣旨はこちら

街とインターネットインディペンデントなポジションで発表した作品が大きな支持を得たと思ったら、今度はワーナーと契約して作品を発表。自身のアクションを通じて「メジャー/インディー」といった境界線を融解させていったtofubeatsの活躍は、2010年代の音楽シーンの変化を語るうえで外せないトピックである。

「水星」はtofubeatsの代表曲としてすでに多くのアーティストにカバ

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2010年代の20曲 _ ⑥いきものがかり 「風が吹いている」 (2012)

2010年代の20曲 _ ⑥いきものがかり 「風が吹いている」 (2012)

※企画趣旨はこちら

音楽と政治の微妙な関係2011年3月11日の東日本大震災と福島原発の事故は、日本のあり方を大きく変えた。

…という話がこの先「歴史」としてたくさん出てくるはずだが、震災直後の個人的な実感としては、「ここまでの出来事があっても世の中変わらないんだな」という気持ちの方が強かった記憶がある。当然その時置かれていた環境によって感じ方は違うはずだが、あの日東京の真ん中から調布方面まで

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2010年代の20曲 _ ⑦SMAP 「Joy!!」 (2013)

2010年代の20曲 _ ⑦SMAP 「Joy!!」 (2013)

※企画趣旨はこちら

みんなで踊れば怖くない結果的にSMAPにとって最後の「世の中ごとになったシングル」となってしまった、という印象がある。赤い公園の津野米咲をコンポーザーとして抜擢するといういかにも「SMAPらしい」布陣で制作されたこの曲のサビに津野が放り込んだのは<無駄なことを一緒にしようよ>というエンターテイメントの真髄とも言うべきフレーズ。この言葉は20年以上にわたって日本のエンタメを更新

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2010年代の20曲 _ ⑧BABYMETAL 「ギミチョコ!!」 (2014)

2010年代の20曲 _ ⑧BABYMETAL 「ギミチョコ!!」 (2014)

※企画趣旨はこちら

ディスプレイ越しにつながる「世界」このグループが日本のアーティストにおける「世界進出」の大成功例になると誰が想像しただろうか。「さくら学院のメンバーの部活動」という日本のアイドルシーンに出自を持つ存在は、あれよあれよという間に「世界を舞台に闘うメタルユニット」へと姿を変えていった。ステージ衣装に身を包んだ3人が2014年当時クールジャパン戦略担当大臣を務めていた稲田朋美を表敬

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2010年代の20曲 _ ⑨BUMP OF CHICKEN feat.HATSUNE MIKU 「ray」 (2014)

2010年代の20曲 _ ⑨BUMP OF CHICKEN feat.HATSUNE MIKU 「ray」 (2014)

※企画趣旨はこちら

必然だった「ロック」と「初音ミク」の邂逅「今までならバンドをやっていたはずの才能が今ではボカロで曲を作っている」という話がよくされていたのは2010年代の前半くらいだろうか(ちなみに最近「今までならバンドをやっていたはずの才能が今ではラップをやっている」という旨の文章を読んだ)。おそらくハチ、後の米津玄師やwowakaといった存在を受けてそういった言説が出てきていたはずだが、

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2010年代の20曲 _ ⑩三代目 J Soul from EXILE TRIBE 「R.Y.U.S.E.I.」 (2014)

2010年代の20曲 _ ⑩三代目 J Soul from EXILE TRIBE 「R.Y.U.S.E.I.」 (2014)

※企画趣旨はこちら

LDHというカルチャー日本の社会構造や流行について解説する際に、「日本人はヤンキー的な文化から逃れられない」というタイプの言説が語られることが非常に多い。「ヤンキー的」の定義については都度ブレがあるが、概ね「ちょっと不良っぽいものの方が好かれる」とか「繊細な良さを持っているものより大味な表現の方が好まれる」みたいなことを意味していると捉えれば解釈として大外れすることはないと思

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2010年代の20曲 _ ⑪秦基博 「ひまわりの約束」(2014)

2010年代の20曲 _ ⑪秦基博 「ひまわりの約束」(2014)

※企画趣旨はこちら

流行歌はちゃんと世代を越える2006年のメジャーデビュー後、「いい歌を歌う」「歌唱力の高い」男性シンガーとして支持を得てきた秦基博。彼が『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌として世に放った「ひまわりの約束」は、そういった「一般的な高評価」にとどまらない大きなうねりを社会に生み出した。

<そばにいたいよ>から始まる印象的な歌詞を持つサビのメロディは、決して平易ではな

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2010年代の20曲 _ ⑫ゲスの極み乙女。 「私以外私じゃないの」 (2015)

2010年代の20曲 _ ⑫ゲスの極み乙女。 「私以外私じゃないの」 (2015)

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川谷絵音というモンスター 「わたしいがいわたしじゃないの~ あたりまえだけどね だ~か~ら~ マイナンバーカード」

2010年代の日本社会における屈指の名場面として語り継がれている(嘘です)甘利明大臣による唐突な歌唱。導入が予定されていたマイナンバーカードについて紹介するために時の閣僚がオフィシャルな場で口ずさむほどに、この曲のインパクトは大きかった。てかこのアイデア入れ知

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2010年代の20曲 _ ⑬西野カナ「トリセツ」 (2015)

2010年代の20曲 _ ⑬西野カナ「トリセツ」 (2015)

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「ギャル演歌」の幸福なエンディング2019年1月に無期限活動休止を発表、2月に活動休止。そして3月に結婚を発表。その後、世間で西野カナに関する話題をほぼ聞かなくなった(と思っていたら2020年ドあたまに妊娠の報が届いた)。一時代を築いたアーティストとして、あまりにも鮮やかな引き際である。

自身のオリジナルアルバム全てに「LOVE」という言葉を冠していた歌姫は、自らのLOVE

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