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あまり取り上げられないけど名曲を書いている作曲家

タイトルの通りのことを考えていきたいと思います。
一応ですが、一般の知名度は別として、ここではバルトークとショスタコーヴィチは扱いません。実際に音楽の教科書に載っている作曲家なので、シェーンベルクより有名と考えます。実際には知らない人の方が多そうではありますが、ここでは既知の作曲家として扱います。

一発屋

本当に一作しか有名な物がない作曲家です。思いつく限りだと…
パッヘルベル (Johann Pachelbel, 1653-1706)「カノンとジーグ」(ジーグはほぼ演奏されない)
タルティーニ (Giuseppe Tartini, 1692-1770)「悪魔のトリル」
ペルゴレージ (Giovanni Pergolesi, 1710-1736)「スターバト・マーテル(悲しみの聖母)」
バダジェフスカ (Tekla Bądarzewska-Baranowska, 1834/38-1861)「乙女の祈り」
モンティ (Vittorio Monti, 1868-1922)「チャールダッシュ」
マスネ (Jules Massenet,1842-1912)「タイスの瞑想」
サラサーテ (Pablo de Sarasate,1844-1908)「ツィゴイネルワイゼン」
バーバー (Samuel Barber, 1910-1981)「弦楽のためのアダージョ」
とかがそうですね。夭逝した作曲家がやはり多めになります。
ダカン (Louis-Claude Daquin, 1694-1772) の「かっこう」もそうかもしれませんが、ダカンはほとんどの曲が失われてしまっています。
ホルスト (Gustav Holst, 1874-1934) の「惑星」もこの枠に入れられがちですが、ホルストは「惑星」のなかで「火星」「金星」「木星」「海王星」という4曲も名曲を残しているので、「惑星しかない」のではなく、創作の重要な部分がこの一曲に注がれているという意味で別だと私は捉えています。
グノーは…「アヴェ・マリア」は有名ですが、あれはバッハの平均律クラヴィーア曲集1集のハ長調の序曲のアレンジなので、そもそも作曲と言えるのかどうか…。オペラ「ファウスト」は知られてこそいますが、演奏機会はさほどないように思います。

「クラシック一発屋」という笑ってしまうようなタイトルのCDもあるようです。

ちなみに、一発屋の中には偽名の一発屋もいます。
レモ・ジャゾット (Remo Giazotto, 1910-1998)「アルビノーニのアダージョ」
ウラディーミル・ヴァヴィロフ (Vladimir Vavilov, 1925-1973)「カッチーニのアヴェ・マリア」
これらは紛れもなく、極めて数少ない「第二次世界大戦以降に作られたクラシック音楽の名曲」ですし、実際に演奏のレパートリーに加えられている名作になっているわけです。ただし、「過去の作曲家の作品として」受け入れられたわけですが…。もし彼らが実名の作品として公開していたら、これらは今日のように世間に知れ渡ることはなかったと思います。新作より古典の方が好まれてしまう、こんな現象が現れてしまうのは、クラシック音楽が「過去への崇拝」になりきっているからであり、非常に由々しき問題ではあるのですが…。

一発屋以外の人たち

ただ、ここで取り上げたいのは、どの曲も一定の水準にあるものの、あまり有名でない作曲家です。

超超超絶技巧のシャルル・アルカン

実は作曲家としてもヴィルトゥオーソとしても有名なフレデリック・ショパンやフランツ・リストと同時代人ですが、彼らを上回る超・超・超絶技巧のピアノ曲を作曲し続けた変人超人です。引きこもりがちな生活をしていたようです。
アルカンは編曲も多いですが、完全なオリジナル曲としては「鉄道op.27」が有名です。

なお、作曲家兼ヴィルトゥオーソのピアニストであるアムラン氏が度々演奏しるようです(アムラン自身も優れた作曲家だと思いますが、在名中の方ですのでここでは取り上げません)。

マーラーが「双子」と呼んだハンス・ロット

あの大作曲家マーラーが「同じ木に生えた双子」とまで呼んだ作曲家です。麻辣と同じくワグネリアン「ワーグナーの熱狂的ファン)だったようで、ロットの音楽にもワーグナーの影響を感じます。ロットの音楽は非常に透明感の高く眩しい曲が多いです。旋律という意味では直接的にマーラーの第1番、第2番、第5番(それも、あのアダージェット)に引用箇所が複数あり、全体の雰囲気とマーラーの後期の交響曲に至るまで関連があり、極めて強い影響を与えていると思われます。
交響曲第1番ホ長調の他、交響組曲ホ長調、弦楽四重奏曲などあります。全て名曲です。


無調音楽を編み出した新ウィーン楽派

アルバン・ベルクとウェーベルンはシェーンベルクの弟子として有名…ですが、十二音技法で作曲されているためとっつきにくさが強く、クラヲタ以外にはほとんど知られていないように思います。
(シェーンベルク自身は「清められた夜」などで有名ですが、ここでは紹介しません…)と一瞬思いましたが、普通に考えれば一般の方はシェーンベルクなんて知らないと思うので、ここに彼の曲のうち、若い頃のまだ親しみやすいものを挙げておきます。「清められた夜」と「ペレアスとメリザンヌ」です。シェーンベルク自身は、ナチスから逃げた先のアメリカでこれらの若い頃の曲ばかり取り上げられるのは不服だったようですが、後年の作品は正直よくわかりません…。


晩年の作品では「ワルシャワの生き残り」が傑作だと思います。ホロコーストの残酷さを描いた作品です。

アルバン・ベルクは初期の作品を除けば、ヴァイオリン協奏曲が有名です。初期の曲からも二つ紹介しておきます。
最晩年のヴァイオリン協奏曲は、マーラーの妻アルマの再婚相手との間にできた娘が亡くなった際に追悼のために書かれたそうですが、作曲直後にベルク自身が急病で亡くなってしまっています。

一方、ウェーベルンは非常に無機質で氷のような曲を書くことで知られていましたが、ここでは若い頃に書かれた「パッサカリア」と、後年書かれた「ピアノのための変奏曲」を紹介します。

ローマ大賞関連のフランス作曲家

ローマ大賞というと、ベルリオーズも受賞したフランスの作曲家における登竜門ですが、実際にはサン=サーンスもフォーレも受賞できず、あのモーリス・ラヴェルでさえ一等を取れなかったことで知られていますが、リリ・ブーランジェは20歳の時にカンタータ「ファウストとエレーヌ」で受賞しています。

リリ・ブーランジェの作品で個人的に気に入っているのは、1911年作曲(つまりわずか18歳の時の作品)の”reflets(反映)”です。

フランスつながりで行くと、プーランクも有名…のはずですが、実際はあまり知られていません。ここでは「フルートソナタ」と「黒い聖母への祈祷」を取り上げておきます。プーランクもローマ大賞は受賞できていません。

ロシアの作曲家

チャイコフスキーもラフマニノフも非常に有名ですが、ラフマニノフの同級生だったスクリャービンのことはあまり知られていません。スクリャービンはラフマニノフと同じ音楽大学で音楽を学び、ラフマニノフ同様にピアニストでもありました。ここでは、有名でかつピアノロールで自作自演も残っているエチュードOp.8-12 を紹介します。

ハリウッドの系列の作曲家

新ウィーン楽派などが調整音楽を破壊したせいで調整音楽のクラシック作曲家は仕事を失ってしまい、ハリウッドなどの音楽を手掛けることになりました。一番有名な例はコルンゴルトで、マーラーをして天才と言わしめたエピソードが有名です。しかし、第一次世界大戦後にオペラ「死の都」でヒットしたのを最後に、その後はクラシック界では邪険に扱われていきました。アメリカに逃れて黎明期のハリウッド音楽を手掛けたことがマイナスに働いたと言われますが、「死の都」の一曲である「ピエロの歌」の室内楽編曲版がNHKのラジオ番組「オペラ・ファンタジスタ」のエンディングとしてクラヲタには有名です。

器楽曲ではヴァイオリン協奏曲が有名…でしょうか。少なくとも日本のサイトでコルンゴルトの名前を調べるとこの曲がよく出てきます。

なお、現在のハリウッド音楽で一番有名なのはジョン・ウィリアムズで、彼もまたヴァイオリン協奏曲を作曲しているようです。

イギリスの作曲家たち

クラシックの作曲かというと、ドイツ・オーストリア圏やフランスばかりの印象ですがイギリスにもいます。エルガーやホルストは有名ですがそれ以外に、ディーリアス、フィンジ、ブリテンなどいます。個人的にはこのジェラルド・フィンジの楽曲がどれも非常に美しく、名曲揃いと思っています。ここで取り上げるフィンジの「ピアノのためのエクローグ」はもともとピアノ協奏曲の緩徐楽章用に作っていたもののようです。

こちらの曲は、ヴァイオリン協奏曲を念頭に書いたものが、やはり緩徐楽章のみ残されたもののようです。

スペインの作曲家

スペインにも作曲家はたくさんいます。ピアノではアルベニスとグラナドスが有名で、どちらも作曲家自身のピアノ演奏が残っています。
アルベニスはピアノ曲集「イベリア」が有名ですが長いので、ここでは「ラ・ベガ(草原)」を取り上げます。

また、グラナドスは乗船していた船が沈没し、一度は助かるもの溺れる妻を助けに行きそのまま夫婦とも死亡してしまうという悲劇の死を遂げた作曲家ですが、名曲が多いです。ここではスペイン舞曲から「オリエンタル」を取り上げます。

また、スペインはギターの作曲家も多く、ここではバリオスの「森に夢みる」を取り上げておきます。


交響曲作曲家たち

交響曲作曲家といえば、古くはハイドンやベートーヴェン、近代ならマーラーが思い浮かびます。戦後まで含めればショスタコーヴィチもいますがそこで取り上げるにはあまりにも有名すぎるので、無名なペッタションを取り上げます。ペッタションはなんとスラム街生まれの作曲家です。(ブラームスも実はスラム街生まれですが、父親はヴァイオリンができる人物でした。)ペッタションの場合は楽器に触れたのも奇跡的な出会いからなので、才能が開花したのは本当に運が良かったのだと思われます。中年以降、ペッタションはリウマチに悩まされ、楽器はおろか、ペンを握ることすらできない状況で作曲し続けて、苦しみに満ちた16の交響曲を書いています。


ペッタションよりもさらにマイナーな作曲家になりますが、ラウタヴァーラも交響曲を多数書いています。鳥の声に魅了されて、北極圏で録音したという鳥の声の音声を用いて鳥の声のための協奏曲も書いています。交響曲もやはり非常に澄み切った印象のものが多いです。

ここで唐突に宣伝ですが、私は趣味で交響曲を4曲書いていて、うち3曲(第2番嬰ハ短調(2013-19年、4楽章、45分)、第3番(2019-2020年、5楽章、55分)、第4番(2021-2023年、単一楽章、20分))の3つを公開しています。時間わを持て余している本当に暇な人がいたらぜひお聞きください。

日本の作曲家

日本にもクラシック作曲家はいます。瀧廉太郎はみなさんご存知と思いますが、実は「メヌエット」と「憾(うらみ)」という2つの優れたピアノ曲を残しています。


また、山田耕筰も唱歌で有名ですが、小規模な楽曲しか残せなかった瀧廉太郎を除くと。日本で最初の本格的なクラシック作曲家になります。
日本の作曲家もたくさんいますが、武満徹がやはり有名かと思います。あまり後年の楽曲は私には理解が正直及ばないのですが…「弦楽のためのレクイエム」などが有名かと思います。


あとは、原爆小景という林光氏が作曲したカンタータ(合唱曲)があります。

全曲とも素晴らしいのですが、演奏という意味では、第23回全国合唱コンクールでの福島県立会津高等学校の合唱が鳥肌が立つほどよいです。

あまり取り止めもなく書いてしまいましたが…。

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