治療としての小説について
実は私は小説というものをほとんど読まないです、それはなんというのか…、この世は事実・現実だけで何百億の物語があって、それに加えてこの世ならぬ別世界の物語までをも受け入れる心の余白みたいなものが私にはないからなのです。一方、私は私小説とか、あるいはある程度事実に基づいた物語というものは大変面白いと思ってはいて、最近聞いた話で、かの三島由紀夫は「ゲーテは『ウェルテル』(注:『若きウェルテルの悩み』のこと)を書いたことで、ウェルテルが死んだ代わりにゲーテ自身は生き返った。『ウェルテ