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【PERFECT DAYS】自分の日々は、パーフェクト?

仕事は、渋谷区内にある公衆トイレの清掃
木造のアパートに一人暮らし
早朝に起きて、仕事に出かける
トイレのゴミを拾い、便器を磨き、トイレットペーパーを交換する
昼食はいつもコンビニで購入するサンドウィッチと牛乳
仕事を終えていくのは銭湯
たまに古本屋に立ち寄り、100円で売られている文庫本を買う
そんな毎日をおくっている中年男性・平山が主人公の映画
「PERFECT DAYS」(監督:ヴィム・ヴェンダース、主演:役所広司)
を見た。

映画のタイトル「PERFECT DAYS」の「perfect」という単語から、私がまず思い浮かべるのは「完全な」という意味だったが、内容からすると、どうもしっくりこない。
「perfect 」を調べてみると、「完全な、申し分のない、理想的な、そろっている、欠けていない、正確な、寸分たがわぬ、純粋の、まったくの、(…に)最適の」と出てきた。
私は「完全な」よりも、「申し分のない」「理想的な」「正確な」「純粋の」の意味かなと思ったが、「完全な」という意味からイメージするものは人それぞれだから、観た人によっては、平山の毎日こそ「完全な」といえるかもしれない。

一般的には嫌われがちなトイレの清掃の仕事を、真面目に、丁寧にこなしていく毎日と、その日々の中で出会う人々とのやりとり、一人で過ごす時間の「豊かさ」を描き出した作品だ。
観た人は、自分自身の人生や生き方、生活の仕方を振り返り、平山と重ねて、自分自身にとっての「豊かさ」を考えることになるだろう。
鑑賞した後に、じわじわくる。「私の毎日って、Perfect?」という問いを投げかけてくる映画だった。

この映画で、私が好きなシーンがあった。
平山と同僚のタカシ(柄本時生)の2人が清掃しているトイレに
知的障害があると思われる「でらちゃん」(吉田葵)がやってくるシーンだ。

タカシは、トイレ清掃の仕事に遅刻してきたり、仕事中にスマホを見たりする若者でだらしないが、どこか憎めない。
でらちゃんは、トイレを清掃中のタカシにまとわりつき、2人が言葉を交わす。そして、その様子を平山が眺めている。特に大きな事件がおこるわけではなく、日常のなにげない1コマだが、でらちゃんとタカシの会話(セリフ)がとても良い。
特にタカシを演じる柄本時生さんの表情が素敵だ。
私が勝手に賞をつくれるのなら、「2024新春映画助演男優賞」を差し上げたい。



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